紙の本
人間の社会的存在を巡る試論
2022/01/10 09:08
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見、タイトルから難しそうに思えるが、読んでみるとそうではない。確かに哲学的な内容ではあるが、かなり読みやすく書かれており、「なぜ○○なのか?」というような疑問に著者なりの答えを提示している。一言で言えば、「人間は人間の関係性の中で生き、他者との関係性を求める生き物である」ことを異なる問いから導きだしている。一定の理解は得られるが、若干の物足りなさと論理の甘さが伺えた。
紙の本
中学生に分かるだろうか?
2012/05/30 09:52
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
小浜のタイムリーな話題を扱った書ということで、期待して購入したが、期待はずれであった。
問いは、次の10問である。
第一問 人は何のために生きるのか
第二問 自殺は許されない行為か
第三問 「私」とは何か、「自分」とは何か
第四問 人を愛するとはどういうことか
第五問 不倫は許されない行為か
第六問 売春(買春)は悪か
第七問 他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか
第八問 なぜ人を殺してはいけないのか
第九問 死刑は廃止すべきか
第十問 戦争責任をどう負うべきか
肝心の「なぜ人を殺してはいけないのか」が、もっともあやふやな答えである。この問いに対する他の安易な答えが、不十分なのはよく分かる。しかし、彼の答えで納得する中学生が多いとは思えない。また、その必要性は認めるが、問いの立て方を変えるので、この問いに直接答えてはいない。敢えて言えば、彼の答えは、「人を殺していけないわけではない」である。答えられているのは、殺人をいかに抑制するかである。
さらに、著者の問題提起が「酒鬼薔薇事件」を契機とする少年犯罪に端を発するものであるならば、せめて中学生に分かるような言葉による答えでなくてはならないと思う。抑止が目的であるなら尚更である。
他の問題の中のいくつかは、なかなかに良い答えが提示されているので、一度目を通す価値はあるでしょう。
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新しい倫理的主題を問う
2000/12/11 11:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:『法学セミナー』 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本に来てニニ年というスペイン語教師が、日本人学生の無表情・無反応が未だに怖いと評者に話してくれた。しかし他方で数こそ増えてはいないが、少年の凶悪犯罪が起きている。本書の著者はこうした現象を、日本が貧困と抑圧が少ない自由で豊かな近代都市社会を実現したために、旧来の倫理規範の枠組みが必然性を失い、生の具体的な目的意識を実感しにくくなった結果だとして、この「退屈と空虚と焦燥の時代」にあらゆる倫理的主題を根源から間い直す必要があるという。
本書が扱う一〇のテーマはどれも魅力的だ。このほか、生の目的、自殺、「私」と「自分」探し、愛、不倫、売春(買春)、死刑、戦争責任の問題が平易な言葉遣いで語られる。
ただ、未成年の自己決定という社会的能力を高める方法や、むやみに人を殺さなくても済む共同体の模索にも具体的に立ち入って欲しかったが、無気力・無感動・無目的と言われる今日的若者のみならず、日常彼らと接する大人達にとっても、焦眉の緊急課題に対する好個の一冊だ。(C)日本評論社
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ほとんどの者が悪いと思う行為。だけど「なぜ」と問われれば、よくわからない。そんな問い自体をタイトルとした本ですが、目次を開いてみると、この他にも、どきっとさせられる問いが並んでいます。「第1章 人は何のために生きるのか」「第2章 自殺は許されない行為か」「第3章 『私』とは何か、『自分』とは何か」「第4章 人を愛するとはどういうことか」「第5章 不倫は許されない行為か」「第6章 売春(買春)は悪か」「第7章 人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか」「第8章 なぜ人を殺してはいけないのか」「第9章 死刑は廃止すべきか」「第10章 戦争責任を負うべきか」。これらの問いにどのように答えるものか興味深かったので、手を伸ばした一冊です。しかし、もしこれらの問いに悩む方が何らかの解答を得たいと思うのであれば、期待はずれに終わるかと思います。問いの性質上、やむを得ないのかもしれませんが、一つ一つの問いに著者がはっきりと答えることはありません。問いに対して、著者が導く結論の方向性は呈示されるのですが、そこに理詰めではない部分(表現は悪いのですが「ぼかした部分」)が残っているので、自分の中にモヤモヤとしたものとして残りました。その他にも、章のタイトルに掲げられた形では答えることはできないとして、問題を立て直したりもされますが、これもモヤモヤする一因でしょう。結局のところ、著者が導く結論付けが、読者である自分の望むものであったときはそんなものかなと思い、反対のものだった場合にはその理由付けの甘さに納得がいかない。素人からすると、「やはり倫理的な問題を扱うのは難しい」と認識させられます。随分否定的になってしまいましたが、すべて難解といってよいこれらの問いに真剣に取り組み示唆したという点については、★を3〜4でも良いかと思いましたが、問いの答えを望むという立場から辛口にしてみました。
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少し物足りない気がするのは僕だけではないようです。
大学時代の倫理の教科書に使用されていたのですが、実は教科書的使い方をすれば秀逸な出来。
勿論世界にはいろいろな立場がありますので考えようによっては人を殺してもいいことになるという恐ろしい結果にも・・・
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気になるタイトルだよね。高校のときに、倫理学に興味を持って現代文のセンセイにお借りしたのが出会いです。当時は難しくてあんまりよく理解できなかったけど、今はわかるようになった気がします。この本はあんまりはっきりとした結論がないのです。方向性は伝わってくるけど、あいまい。やっぱり倫理学って難しいな。感情じゃなく説明しようとすると大変だよなぁ。
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10の質問を考察する形で進んでいく。
ちゃんと答えているものもあれば答えていないものもあり、疑問が残る。特に売春の話では決め付けが多いと感じた。
○なぜ人を殺してはいけないのか
○死刑は廃止すべきか
○戦争責任をどう負うべきか
の3つの質問の答えに関しては、すべて賛同するわけではないが、著者の考え方に納得できた。
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友達に借りて読んだ本。筆者が賢いこと、そして、私は倫理学の本はあまり好きではないことがよく分かった。
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「なぜその問いに至ったか」と質問返しばかり。
この本は「根底から問いなおす新しい倫理学」を目的としたらしいので、選ぶ本を間違えたあたしが悪かったんだな。
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タイトルにある問い以外に、色々な問いに応えた本です。「自殺は許されない行為か」「人を愛するとはどういうことか」。なので、端的に「なぜ人を殺してはいけないのか」について知りたい人は、じれったさを感じるでしょう。また、それぞれの問いに対する応えも、結構投げやりだったり問い自体が変わったりしているので、不満を覚える方もいらっしゃるかと。でも、戦争責任についての著者の考えには「なるほど」と思いました。それと同時に、責任を負うということがどのようなことなのかがわかりました。
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頂いた直後は、筆者の考えを押し付けられる教訓的な本かと開くのを躊躇したが、そんなのことはなく、俗にいう「ためになる本」です。
筆者なりの結論みたいなものは書かれているが、
そこまでの論のたてかたは興味深い。
「なぜそもそもそんな問いがうまれるのか」
という人間の根本的考え方をつつくので、面白い。
10章あるのだが、残念ながら後ろのほうに行くたびに内容が中途半端になる。
売春は悪か?
不倫は許されない行為か?
という章を読んだ今の私は、人身売買や男女差別に対して新しい見解が持てた。
読みやすいです。
薄いからって読み飛ばすのはよくないかと思います。
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大学受験生にお勧めの一冊です。
文章構成が分かりやすく、評論を読む練習になります。
受験科目に現代文がある方は是非読んでおくといいです。
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なかなか面白い本。思想家の名前を用いて解説することなく上手くコンセプトだけを抽出して平易に述べられている。ある問いをより意味のある問いへと巧みに研磨していくプロセスは模倣したい。
死刑存廃の章に関しては概ね同意見で驚いた。特に冤罪の扱い方については疑問が残るし、もっと掘り下げてみる必要はあるが。あと面白かったのは「売春は悪か」の章。陳腐な批判だろうが、心情的に”言いたいことは分かる(分からなくはない)”ものの上手く理論化できていない。
頷くところもあり、やや無理があると反駁したいところもあり、よい叩き台として用いたい。
「人に迷惑かけてないんだからいいじゃん」という理論で援助交際を行う女生徒たちに対して、筆者は「迷惑」の範囲を画定しながら、「他人の迷惑にならないことでも人間関係を毀損することがある」と答えている。何故人間関係を毀損してはいけないのか?という最も根本的な問いには、答えていない。話が複雑になるのであえて触れなかったのかもしれないがそこが引っかかる。そもそも、人間関係の維持が自分の生存(あるいは何か別の究極的な目的)にとって肝要であるという感覚が希薄であるところに彼女たちの行為が成り立つのではないのか?そもそも、ここで問題になる「人間関係」とは何なのか?筆者は結局「俺と同じ感覚を持て」と言っているだけだ。
少なくとも彼女たちは「人の迷惑になる」ことは避けるべきと思っている(と読み取れる)のだから、「援助交際は実は人に迷惑をかける」として彼女たちの倫理観の中に問題を繰り込む方が意味のある答え方だと思う。方向性としてはね。
ところで、「”普通”の感覚」とは違う感覚を持つ人々(この場合なら援助交際する女生徒たち)を「おかしい」といって端に排斥するのは好みではない。「悪」ではなく、「共感はできない」に留めておきたい。思想の正しさは、それがリアリティを持つかどうかにかかっている。彼女たちにとっては、「人に迷惑かけてないんだからいいじゃん」の方が「親/教師の言うことを聞き、他人からの批判を恐れるべき」よりリアリティを持つというだけなのだから。「自分(たち、だけ)は尋常で健全である」「自分が”普通”である、自分がスタンダードである」という無垢な思いこみが大嫌いだから。
そういえば援助交際って最近あまり問題にされなくなったね。テレビとかで見ないというくらいの意味だけど。
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死刑の意義についての部分は考えさせられた。
刑法の機能としての予防的機能の部分からすると死刑ってあんま意味ないと個人的には思う。(要するに「死刑が抑止力たりうるか」という問題)
ただ、応報的機能の部分としては「死をもってしか償うことの出来ない罪がある」という考えはあってもいいのかなとは思う。とすると死刑という「概念」の存在については肯定できないこともない。
ただ、その「概念」を現実化させる権利は、国家にも司法にもないと思うんだよなぁ。
てなことを考えると、刑法典の中から死刑を削除しないで、執行を停止するっていうのは、なかなか妥当な落ち着かせ所のような気もしなくはないんだが。
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[主な内容]
人を殺してはいけない、という当たり前のことを
もう一度検討してみようという本です。
[おすすめの理由]
当たり前のことを「当たり前」だからという理由で
受入れるのではなく『もう一度』考えるきっかけに
なる本だから。