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紙の本
音道刑事、最悪の事件
2002/05/29 07:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くろねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『凍える牙』の、音道貴子刑事シリーズの第3弾。
今回は、占い師殺人事件でとんでもない男と組まされた結果、犯人グループに
監禁されるはめに!
なんてこと!
まず、この、コンビを組んだ男、星野に腹が立ちます。
立場上は貴子の上司であるわけですが、なんたる勘違いなガキなんでしょう。
こいつが、身勝手な行動に走らなければ、貴子があんな窮地に陥ることは
なかったのです。
でも、そんな男と組まされているストレスを、貴子の恋人が、もう、なんていうか、
実にあっさりと受け止めて癒してくれる。
そういう人が貴子にできて、本当によかった。
このシリーズで描かれている警察は、もう、典型的な男社会。
そんな男社会が貴子に与えるストレスを癒してくれるのが男性というのが、
なんだか、いいなぁと(^^)
貴子の監禁に関わる1人の女性。
その生い立ちから培われた人生観がなんとも悲しい。
長いこと、そうやって虐げられて生きてくると、心がゆがんでしまうのでしょうか。
根っこのところで、彼女に罪はないのに、なんとも悲しくてやりきれない。
そんな彼女を食い物にする男は、憎んでもあきたりない。
そんな状況に立ち向かう気概さえ奪われて生きてきたなんて、切ないですね。
でも、その一方、貴子を心配し、必死で捜査にあたる仲間がいる。
特に、『凍える牙』で、あれほど対立したかに見える滝沢。
星野に一発かますその迫力。
滝沢の上司の、一筋縄でいかない悪党にも恐れられる係長の存在も心強い。
そして、日頃貴子と一緒に働いている仲間たち。特に八十田のガッツ。
そう、貴子は、周囲に、そんなにも受け入れられているのですね。
星野の身勝手な言い分、申し開きよりも、日頃の貴子の行動から、そんな人間で
はないと信じてくれる、そんな仲間のいる幸せ。
監禁という極限状態で感じる恐怖。
何をされるか、どんな扱いをされるか、全て相手の胸先三寸だなんて。
突破口となりそうなのは、犯人グループの唯一の女性加恵子。
必死に説得を試みるものの、彼女の心は、男に縛られていて。
やがて、貴子の心理に生じた変化が、男たちよりも、恐ろしかった気がします。
それでも、最後に勝つのは、貴子の持つ生命力。
そのパワーには、脱帽です。
紙の本
女性刑事と仲間達の闘い
2000/11/20 00:35
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの音無貴子が帰ってきた。しかし、馬鹿刑事と組まされたことで一人で捜査をすることになり、犯人たちに監禁されてしまう。そこからどうやって脱出するのか。
分厚い物語を後半一気に読まされる。面白い。しかしながら、救出の物語そのものはそれほど変わったものではなく、地道な捜査の結果と言える。面白いのはそれぞれの人間描写であり、心理描写。
音無の気持ち。男たちに対抗してつっぱって生きている音無だが、今回は恋人が登場し、恋人に頼る。きつい性格だがどこか憎めないものがある。
そして何より前作で音無と組んだ滝沢。前作では嫌いあいながら、それなりのチームで捜査に貢献した。やはり、滝沢は音無に惹かれる何かを感じていたのだ。
必死に音無を救おうとする滝沢達の仲間も泣かせる。刑事の一人一人が活き活きとしたキャラクタとして描かれる。いつもはペアを組む八十田。『あいつはここでは十分に受け入れられているということだ』と感じさせるほど八十田は音無のことを思う。仲間を窮地に陥れた刑事を自分で尋問する柴田係長。相手から『一晩ではげるかと思った』と思わせるほどの厳しい取り調べをする。ホームレスに扮装してピタリとはまり、いい仕事をする東丸…。
犯人たちもそれなりに存在感がある。すぐに切れる堤。リーダの井川。すごみがあるがどこか抜けている鶴見。皆それぞれに夢を持っている。そして、複雑な過去を持つ中田加恵子。彼女にだけは絶望しかないのか。しかし最後には救いがあるのだ。
紙の本
音道貴子が再び登場
2000/11/15 15:40
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投稿者:dakara - この投稿者のレビュー一覧を見る
『凍える牙』を読んで音道貴子(警視庁機動捜査隊の女性刑事。独身。けど離婚歴あり)のファンになった方も多いはず。この本は、『凍える牙』、『花散る頃の殺人』に続く音道シリーズ第3弾です。
今回の作品も『凍える牙』と同様に読みこだえがあります。本書でも、警察という男性社会にいる女性という視点が色濃く出ています。
今回の事件は、占い師殺人から音道の監禁にまで発展していきますが(ストーリー自体はここに書かないほうがいいですね)、乃南作品らしい心理描写が生きています。
まだ、音道シリーズを読んでない方は、文庫化された『凍える牙』をお読みになってからのほうがいいと思います。そのほうが滝沢刑事(音道シリーズにはお馴染み)との関係がよくわかって、良いです。
紙の本
乃南アサ、一体どうしちまったのだろう
2000/12/20 18:15
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投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
傑作『凍える牙』を書いた乃南アサが、再び「新潮ミステリー倶楽部」のために書き下ろした長篇というので、何を差しおいてもと心弾ませて読んだが、こりゃイモだった。いや、イモ過ぎる。乃南アサ、一体どうしちまったのだろう。第一、1500枚はあるのか、とにかく意味もなく長過ぎる。この枚数、一体何なのだろう。それに『凍える牙』の音道貴子が主人公はいいとしても、前作とは別人のように冴えない。これまた大不満だった。さらに、一緒に組む男のデカ、前作同様、女性蔑視というのも芸がない。それも、『凍える牙』の中年男のように悲哀を書く配慮もなく、造型が浅薄過ぎる。冒頭の、銀行で2億円を降ろす男二人と、銀行員との緊迫したシーンは濃密な描写でスリルもあるが、それはわずかに冒頭のみ、後は手抜きの連続で、これほど読者を舐めきった小説、珍しいのではないか。腰帯に曰く。「手負いの刑事・音道貴子の絶望的奮戦6日間」、裏帯のコピーはさらにお粗末というか、本書の内容を象徴したもので、「きっかけはあの馬鹿男[一緒に組んでいる無能のデカ]だった。警察組織はまる二日間、貴重な時間を空費した。捜査に結び目が生じたことにも、あの馬鹿男が一枚かんでいた。貴子の精神状態はすでに限界を越えつつあった。このデッドロックをたった一人でどうやって打開しろと言うのか」とある。つまり読者は、時間を費やして馬鹿な警察、その中で働くドジな刑事貴子の右往左往ぶりを読まされるだけなのだ。それにしても今回の貴子、なぜこのような無能でカッコ悪い女に設定したのか。大沢在昌『新宿鮫 風化水脈』も、あまりの駄作ゆえに怒り、「当分は読んでやらねえ」と思っていたが、先日、文藝春秋から彼の新刊『心では重すぎる』(1300枚)のプルーフ・コピー[本になる前のゲラを製本したもの]が贈られるや、「今回は面白いかな」と気になり、いそいそと読んでいる。という訳で、乃南アサも、新刊が出れば凝りずに読むのだろうが、次回は気合いの入った傑作を書いて欲しい。