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紙の本
耳の底に硬く澄んだ水晶の音が聞こえる
2003/06/30 14:06
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この話の何がどう素晴らしいのか、的確な言葉で短く表現するのは難しい。けれど読んでみれば間違いなく何かきらきらした美しいものが、あなたの胸に降り積もって宿るであろう。昭和62年度中央公論新人賞および第98回芥川賞受賞の、決して埋もれさせ忘れ去ってはならない珠玉の名作。
染色工場でアルバイトをしながら暮らす「ぼく」は、自分の外側に立つ世界と自分の内部に広がる世界との調和をうまく取ることができないでいる。自分の長い生涯を投入すべき何かを探し続けているのだが、それはなかなか見つからない。見つからないながらも特に焦るでもなく、淡々とアルバイトする日々を送っている。今で言うフリーターである。
彼はある日職場で佐々井という男に出会い、話すようになる。佐々井は「ぼく」と同じフリーター生活をしているものの、「ぼく」が探しているような何かをもう既に見つけているような人物、ちゃんと世界の全体を見ているように思える人物である。
佐々井と「ぼく」は、とある事情のために三ヶ月限定で同居するようになる。佐々井が話す言葉に「ぼく」は魅了される。三ヶ月が過ぎ、佐々井がまたふらりといなくなった後も、佐々井の語った言葉と彼の気配は「ぼく」の周囲に確かに漂い、「ぼく」の中で何かが変わるのだった——。
作中に散りばめられた叙情的で美しい文章を、いとおしむようにできるだけゆっくりと読んでほしい。夏の夜、星空の下で宇宙に想いをはせつつ紐解くのが相応しいだろう。同時収録の「ヤー・チャイカ」も合わせてどうぞ。
紙の本
この本との出会いは私の人生の財産
2018/03/16 19:02
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まり - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま苦しんでいる人に読んでほしい本。
「世界が君のためにあると思ってはならない。世界は君を入れる容器ではない。...」
高校時代、苦しい受験勉強や部活動の顧問によるいじめが原因で自分らしさを見失っていた。一本のまっすぐなレールに乗って進んで行く周りの人たちとも反りが合わないでいた。「スティル・ライフ」はそんな生きづらさを受け止められる私にしてくれた。80年代に書かれたこの本は、バブル経済に沸く社会の中でそっと静かに世界を見ていた。
本を読んで人生が豊かになるとはどういうことか、これを読めばよくわかる。
紙の本
スティル・ライフ
2013/08/03 00:36
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:gb10 - この投稿者のレビュー一覧を見る
絵画では静物画のことを Stil Life という。
著者は別な意味を込めたのかもしれない。
本を開くと冒頭に詩がある。そして星の話。
次第に物語に引き込まれていってしまう。
美味しい水を飲んだときのような清涼感あり。
この本もよく友達に勧めたかなあ。
1997年、芥川賞受賞。
当時、ニューノヴェルと評価された作品です。
もう一篇「ヤー・チャイカ」が収録されている。
紙の本
池澤夏樹氏による芥川賞受賞作で、しなやかな感性と端正な成熟が生み出す青春小説です!
2020/07/19 13:57
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、小説家であり、詩人でもあり、翻訳や書評も手がける池澤夏樹氏の作品です。同氏は、文明や日本についての考察を基調にした小説や随筆を発表されており、翻訳は、ギリシア現代詩からアメリカ現代小説など幅広く手がけられています。各地へ旅をしたことが大学時代に専攻した物理学と併せて、同氏の作品の大きな特徴となっていると言われています。同書は、芥川賞受賞作でもあり、アルバイト先で知り合った年上の男・佐々木との短時間の奇妙な共同生活を描いた物語となっています。佐々井が現われたことで、ぼくの世界を見る視線は徐々に変わっていくという、しなやかな感性と端正な成熟が生みだす青春小説です。表題作の他に、ロシアの材木商との交流を描いた「ヤー・チャイカ」も収録されています。なかなか面白く、池澤氏の小説世界が垣間見られます!
紙の本
文章が魅力
2021/06/08 09:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いくやま - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼく」と佐々井、二人の会話での内容と掛け合い、地の文の硬くてひんやりした書き方がどこか理系らしさを感じとても素敵。
紙の本
小説自体はとても好き
2019/12/17 09:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:楓の葉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
静謐さと透明感に満ちた小説。内容とは関係ないが、そんな物語を包む表紙は水色など涼やかで穏やかな色がいいのではないかと思う。
紙の本
スティルライフという英語には「静物」「静物画」という意味があるらしい
2019/08/31 22:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
スティルライフという英語には「静物」「静物画」という意味があるらしい、この小説に登場する天体や微粒子や山岳がすきな男・佐々井の静かな佇まいはまさにスティル・ライフだと私は思った。その佐々井のバイト仲間だった主人公は、彼に株取引の仕事を手伝わせられることになる、どうして静かな男・佐々井がそんな生々しい現実感のある仕事に手を染めるのか、そこには深いわけが・・・というのがこの小説の筋なのだが、すじのことよりも私には佐々井という男の不気味ともいえる存在感に圧倒されてしまった。でも、私の近くに彼のような男が現れても、私は彼には気かづこうとしないだろうし、彼の方も俗物の典型のような私の存在は無視するだろう
紙の本
この透明感が大好きなのです.
2002/07/31 14:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ムラタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公がアルバイト先で不思議な男・佐々井と出会い仲良くなるが,やがて佐々井はアルバイトをやめてしまう.しばらくして佐々井から電話があり,あることを手伝って欲しいと頼まれ事情を聞くが,その裏には大きな金と犯罪の影が……と書くとたいへんスリリングに聞こえますが,文章はいたってクールというか淡泊に流れます.そんな犯罪のことなどたいしたことじゃなくて,それよりも地球の地形のできかたとか,星の並びとか,染色の化学反応のことを考えて二人が話をしていることの方が大切だから,とでも言っているような.これを読んでからというもの,飲み屋とかでグラスの中にチェレンコフ光(宇宙線が水分子にぶつかって放出される光)が見えないかと思ってじっと見つめてしまうくせがつきました.