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紙の本
2001/04/15朝刊
2001/04/19 18:17
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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は『サザンスコール』や『百年の預言』などのロマネスクな新聞小説と並んで、『水脈』など、幻想と現実が渾然(こんぜん)一体となった中編連作を得意としている。後の系譜に連なるこの作品は、四つの中編からなる父親探しの物語だ。
著者の分身ともいえる「わたし」の父は、戦争中、特攻隊の中隊長で、部下を死なせたが、自身は生き延び、研究者生活に戻った。しかし、その負い目もあって、家族には戦争のことを語らず、ある日、わたしの目の前から消えた。父が出撃していたら生まれなかったわたしは、父の真実を知ろうと、四つの不思議な旅に出る。
東北のO航空隊に配属されていた父が半年間、二階を借りて住んでいた野川家の息子を訪ねる最初の「眠れる月」。海の生物の研究をしていた父が、戦争で死んだ部下たちの霊を宿すカブトガニの群れに連れ去られるという幻想が交じる「海からの客」。特攻隊で死んだ部下の遺族が住む南海の島、沖島を訪ねる「鳥たちの島」。「わたし」が幼いころに両親と過ごした盆地に戻って、父が勤めていた大学の木造校舎で、父の幻影と対話する最終編「燃える塔」。
それぞれが一つの中編として読める。しかし、四編の過去と現在、東北の基地と南の島、生者と死者が、交錯し、対話し、官能的に共鳴しあって濃密な世界を構築している。父親探しのこの作品は、著者にとっては自己の生のありかを確認する自分探しの物語といえる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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