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紙の本
ロボット研究の最前線
2001/11/27 05:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホンダが突然に発表したP2を契機に、ここ何年か、急に二足歩行のロボットをよく見るようになった。その後SONYからもSDR-3Xが発表されたりして、こちらも突然で驚いたものである。長いことその困難さを聞かされ続けてきた二足歩行をやすやすとやってのけるこれらのロボットの開発には、いったいどんな背景があったのだろうかと不思議に思っていた。これは、そういう疑問に答えてくれる本であった。
この本は、『パラサイト・イヴ』の著作で知られる、生命科学系の博士号を持つ著者が、「ロボット工学こそが21世紀を担う総合科学だ」という認識のもと、ロボットの開発者や研究者たちへの取材をまとめた本である。取り上げられている題材は、ヒューマノイド型ロボット、癒し系のペット型ロボット、ロボカップなど。また福祉分野への応用の話や、人工知能の話題にも言及している。この本を読むことで、ロボット研究の現状について知ることができるだろう。
本書は、2000年の前半にあちこちに発表した原稿をもとに、最新の知見を盛り込んで全面的に改稿したものだとのこと。しかし、改稿されていても取材時期からの時間の経過はどうしようもない。この分野の進歩は日進月歩である。興味がある人は早く読みましょう。
紙の本
わが家にロボットが来る日。
2003/06/09 10:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あなたは、ロボットというと、どんなロボットをイメージするだろう。世代により異なるかもしれないが、大半の人は「鉄腕アトム」と答えるだろう。一種のすりこみかもしれないが、やはりロボット・イコール・ヒューマノイドロボット(人間協調・共存型ロボット)となってしまう。
擬人化されたロボットは、ミッキー・マウスなどのキャラクターと同様に親近感を覚えてしまうといったことが記述されているが、確かにそうだ。ぼくも、作者と同じくホンダの二足歩行ロボット「アシモ」のTVCMを見て、いたく感動したクチである。今のところ、ヒューマノイドロボットは、コミュニケーション&エンタテインメントが目的であるが、将来的には「福祉と介護現場での利用」や、「原子力プラントなどの保守点検作業や災害調査、建築作業」なども期待されているそうだ。「ブレードランナー」のレプリカントの世界が現実になったりして。
21世紀には、ロボットは工場から家庭へ進出する。そのうち、日本お得意のいたれりつくせりの家電感覚のロボットが、「小間使い」や「自分の身体の代わり」として、さまざまなライフシーンで活躍する時が来るだろう。
そして、ロボティクス(ロボット工学)の発展により、たとえば「ヒューマノイドの行動や人工知能」などロボットを通して、これまで見えてこなかった人間が見えてくるという点も、見逃せないことだ。
「ロボット工学のもとに生命科学や情報工学、認知科学などが集結すれば、(人間の創造性などの)巨大なテーマを巨大なまま、総合的なシステムとして扱うことができるようになれるかもしれないのだ」。作者はサイエンスとエンジニアリングの領域を横断するのが、ロボティクスなのだと述べている。
ロボット王国・日本の現状を研究開発者にインタビューを試み、あまねく紹介、ロボティスクスの可能性にまで言及している。ヒューマノイドばかりに特化しているわけではない。
「機械に『心』は宿るか」「ロボットとの恋は可能か」などの章も楽しく読める優れたルポルタージュである。「日本のロボティクスは豊穣である」と、作者はあとがきで記しているが、一読すれば、その豊かさが理解できる。ぼくのような文系の人間にも、また、理系の人間にも、面白い広くかつ深い労作である。
最後に、本書をエスキスにして、作者なりのヒューマノイドロボットをテーマにした小説が、ぜひ近いうちに、読んでみたい。それこそ『機動警察パトレイバー』に勝るとも、劣らぬようなものを。勝手なお願いなのだが。
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