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紙の本
上川隆也と伊東四朗
2018/06/23 11:27
10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は4編の短編から成る。テレビドラマでも名が知れた『陰の季節』は最初の短編である。さらにこの4編とも横山秀夫のD県警シリーズである。この4編のうち2編は私は偶然にもテレビドラマ化された番組を見たことがあった。
1.陰の季節、2.地の声、3.黒い線、4.鞄の4編である。1はお馴染み二渡警務課調査官が、2は監察課監察官の新堂警視が、3は女性警部と鑑識課の平野巡査、4は秘書課の柘植警部がそれぞれ主人公である。テレビドラマでは4も二渡が主人公を勤めていた。
いずれも警察内部の、それも警察外で発生する事件とは直接の関係がない、いわゆる内部での事件を扱ったものである。短編とは思えない着想が随所にちりばめられていて、読者が飽きている暇がない。
警察で警視といえば、都道府県警の署長を勤める階級である。管理職としてはもっとも脂の乗った働き手である。『陰の季節』は県警の部長が退官して外郭団体に天下ったその後を追ったものである。未解決事件を抱えて苦悩するOBがポストを明け渡さなければならないのだが、事件を解決するためには留まる必要があった。
それを説得する二渡警視。なぜ留まるのか理由も分からないので打つ手がない。退官後にまだ事件を追っているOBなどいるのだろうか、などという現実的な場面を思い浮かべる間もなくストーリーは大団円となる。未解決の事件を追うことが警察小説の本筋なのだが、そこへのアプローチが実に凝っている。テレビドラマでの上川隆也と伊藤四朗の顔が目に浮かぶ。
警察官は退職後は企業人のように子会社に移籍するという手がない。それではどうするのかといえば、関連の公益法人などへ天下るのである。民間企業へ天下る人もいるであろう。一般市民の関心はそんなことにまで及びはしない。
『鞄』は、秘書課の議会対策担当課長代理の警部が主人公である。D県警にだって県議会という当局にとってはやっかいな市民の代表がいる。この議員の一人が来る議会で爆弾質問をするという。議員本人に聞いても親しい人に聞いてもその中身が分からない。中身が分からないのでは答弁ができない。
苦境に追い込まれる課長代理。その議員が持つ鞄の中に質問に関する書類が入っているらしい。その悪戦苦闘する様子が現実的である。否、一般のサラリーマンとほとんど変わらないのである。刑事モノの警察小説では捜査がストーリーの軸になっているので、一般サラリーマンの仕事とは異なる。しかし、管理部門の仕事はすなわち事務なので、共通項が多い。
実際にあった事件をモデルにするのが企業小説というジャンルだが、このシリーズは舞台を替えた企業小説の面白さと、間接的に登場する事件の接点がエンターテイメントに深みを与えているのかもしれない。
紙の本
組織を描く
2017/10/25 02:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
名刑事や迷宮入り事件を描くのではなく、警察組織そのものを映し出しているところが斬新でした。システムの中で苦しんでいるそれぞれの人間の心が伝わってきました。
紙の本
D県警シリーズ
2015/11/18 18:33
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投稿者:のきなみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一作目。骨太な警察小説。派手なヒーローや名探偵が登場する事はなくただひたすら地道に事件を解決していく等身大の刑事達。それぞれの人間模様が絡み合ってリアリティがある。
紙の本
D県警シリーズ 第一弾
2015/08/06 09:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
D県警シリーズ 第一弾。
警察ものではあるが、いわゆる捕り物ではない。警務部に勤務する人々の物語。
出世争い、裏切り、罠、忠義、正義。様々な人間模様が繰り広げられます。
個人的感想
やはり横山氏は警察ものが面白い。
第3話は、氏の「顔」の別視点バージョンなので、一話損した気分。
それでもお勧めです。
電子書籍
さかのぼって読んでいます
2015/02/04 11:02
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投稿者:philia - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ最新作の『64』を上司が貸してくれたので、その後に本書を読みたくなって、電子版を購入しました。
64では黒子だった二渡が活躍するという他の人のレビューを読んだのですが、本書でも、一つ以外は二渡は黒子でした。ちょっと肩透かしだっかかな。
しかし、シリーズということで、『Face』などで登場する人物の話が読めたので良かったです。
紙の本
濃縮横山ジュース
2004/07/10 22:28
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投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
「陰の季節」横山秀夫。(1)陰の季節(2)地の声(3)黒い線(4)鞄、以上4篇が収録された短編集です。表題の「陰の季節」は平成10年第5回松本清張賞の受賞作品です。県警本部警部部警務課が中心となった警察内部小説です。まずは内部事情の詳しさに驚かされてしまいますが、本が書ける程の題材が有る事に一層の驚きを覚えます。事件はミステリアスであり展開はサスペンス、登場人物の今までにない役職のうえに、役職に伴う人物像など真新しさがいっぱいです。収録された作品の全てが十二分に楽しめるミステリーです。大げさな表現や詩的表現など、集中を妨げる事のない語り口が構成力と共に素晴らしい。久しぶりのお薦めの逸品でしょう。