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オテサーネク みんなのレビュー
- エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー (絵と文), 矢川 澄子 (訳)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:水声社
- 発行年月:2001.12
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絵本
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紙の本
チェコのシュールな映像の奇才シュヴァンクマイエル。その美術担当でもあるパートナーが作った美しい民話絵本。お話は、『どろにんぎょう』に似ています。
2002/01/26 13:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、チェコの映像作家シュヴァンクマイエルのアニメは都内のミニシアターで何本か上映され、クリエイターやアート好きのカルトなファンたちを熱狂させた。シュールレアリスムやマニエリスムに支配された彼の映像世界は、思い描いた夢を触る、即ち「夢の手ざわり」という不可能を、映像を通じて人に体感させることを意図し、魔術的・霊感的な魅力に満ちている。彼の作品は長篇・短篇ともにビデオが何本か発売されている。
既に長篇映画「オテサーネク」については、杉浦康平門下の妥協を許さない装丁家軍団による本作りで有名な気鋭の出版社・工作舎から、ガイドを兼ねたストーリーブックが出ている。この絵本は、その一本で美術監督・衣装デザインを担当した、彼の妻でもあるエヴァが手がけた絵本である。作者紹介によれば、彼女は詩人や作家としても活躍しているということで、実に多彩なクリエイターのようである。
構成を見ると、この絵本が非常に力の入った出版物であることが伺われる。まず、作家による巻頭言が添えられる。短文だか、ここにはすごいことが書いてある。「コトバは物語というかたちをとると、じつはおそろしい権力と活力を宿すがゆえに危険…(中略)…しかも、ただ危険なのではない。強靭な生命力ももっているのです」。
一日じゅう、母親を苦しめてきた小悪魔をあやし、なだめる…といったような表現もあり、たぶん母親という仕事も担ったであろう作者のユーモアを感じる。
巻末には、読みごたえ十分の夫君による民話「オテサーネク」の鋭いモチーフ分析がなされているし、池内紀さんの解説までついている。しかも訳者が矢川澄子さんときた。風合いの素晴らしい洋紙がふんだんに使われた贅沢な本でもある。
お話を少し紹介。子どもをほしがっている夫婦が森のほとりに暮らしている。ある日、だんなが切り株を掘り起こす。出てくるとそれは赤ん坊のように手足がついた形をしている。家でベッドに寝かせていると、「かあさん、なにかたべたいよ」と泣き出すのだ。お粥を、ミルクを、焼き立てパンを与えると、テーブルも椅子も母さんも父さんも食べてしまう。巨大化した動く切り株オテサーネクは、村にのして歩いて行き、農夫や馬車や干草を、ブタやブタ飼いを、ことごとく呑み込んでしまう。
井上洋介さんにより絵本化された、とびっきり面白い北欧民話『どろにんぎょう』(現在は確か休版)と同じ展開で、結末も同じくさらりとしている。
農夫たちの被服、ボヘミアの深い森、素朴な田園風景と室内の絵には、確かに東欧の血、チェコの人形美術の伝統などを感じる。それと同時に、造形や色使いの特異さは、細部まで眺めているとシュールレアリストやマニエリストたちのモダンな冒険心に通ずる試みに満ちていて、はっとさせられる美しさだ。東欧好きの私としては、その奥深さを改めて強く感じさせられる絶品であった。原画が見てみたい。
紙の本
民話の背景にあるものは?
2022/05/09 10:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェコの民話らしい。最初、切り株が赤ちゃんになりかわるところは、なんとなく桃太郎やかぐや姫を連想していたのだが、途中から赤ちゃんは村中の人を食い尽くす怪物に成長する。そして、最後はキャベツ畑のお婆さんの鍬によって、喰われた村人たちが救出される。なんだかグリム童話の赤ずきんにも似たところがある。
喰われる、喰われた怪物の腹から救出、または脱出する。という構図は西洋版輪廻転生なのかしら?宗教的なことをあまり知らないけれど、仏教の国の人にはなんとなくそう思えて仕方ない。
紙の本
広がる幻想的な世界
2016/04/28 06:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はヤン・シュヴァンクマイエル監督の映画の美術を担当していた。本書では絵本作家としてその才能を発揮している。東欧の不条理感が伝わってくる1冊だ。
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