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戦争プロパガンダ10の法則 みんなのレビュー
- アンヌ・モレリ (著), 永田 千奈 (訳)
- 税込価格:1,650円(15pt)
- 出版社:草思社
- 発売日:2002/03/01
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高い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/09/12 11:30
為政者はこうやってみんなが嫌いな戦争を遂行するのだ
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベルギーはブリュッセル自由大学の歴史批評学教授,アンヌ・モレリが,第一次世界大戦後の1928年にイギリスの政治家,アーサー・ポンソンビーが著わした「戦時の嘘」を元に,戦時下におけるプロパガンダのメカニズムについてまとめたものである。原著の出版は昨年,米国でいわゆる「同時多発テロ」が発生する前のことだが,その内容はまるであの事件のあとの経緯を見て書いたと言ってもおかしくないくらいだ。
モレリによれば戦争プロパガンダは必ず,「われわれは戦争をしたくはない」という言葉で始まる。われわれは争いを好まない,誰よりも平和を愛している,「しかし敵側が一方的に戦争を望んでいる」のだと続く。なぜかというと「敵の指導者は悪魔のような人間だ」からであり,彼を滅ぼすのは神の意志に従うことである。いつも「われわれは領土や覇権のためではなく,偉大な使命のために戦う」のだ。
いったん戦争が始まれば時として非戦闘員の死者も出る。が,そういうことで厭戦気分が広がるのは阻止しなければならない。「われわれも誤って犠牲を出すことがある」と言い訳をし,「だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」と敵の邪さを強調する。こっちは正々堂々戦っているのに,「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」のだ。
にも関わらず,「われわれの受けた被害は小さく,敵に与えた被害は甚大」であるのは,正義がわれわれの側にあるからだ。その証拠に「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」ではないか,そうとも,「われわれの大義は神聖なもの」なのだから,国民はすべからくこの戦争に協力すべきであり,「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」と,こういうわけである。
このところさんざん宣伝されているので,サダム・フセインは開発中の核兵器ができるやいなやそれをアメリカに向けて発射するつもりでなのだ,と思っているヒトもいるようだ。そんなヒトにぜひお薦めしたい。
低い評価の役に立ったレビュー
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/06/11 22:15
僕だけが正しくて立派で正直なんだ——このセリフ、なぜか国家がいうともっともらしく聞える不思議
投稿者:守屋淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブームの移り変わりの激しい日本では、今更ながら口に出すのが恥ずかしい質問というのがあります。
「そういえばビン・ラディンの捜索ってどうなったの?」「アメリカ同時多発テロは、本当にビン・ラディンの仕業だったの? それってきちんと証明されたんだっけ?」
なんていうのは、「おお、今更!」という今更度が結構高いかもしれません。
現在では、アメリカ政府は事前にテロを知っていたはずなのに、なぜ防がなかったのかなんていうスルドイ突込みがなされていますが、しかし一時期は、人類の敵といえばビン・ラディン、対テロの戦いを援助しなければ世界の敵という言い方さえされていました。
この、テロ直後に始まったアメリカの大宣伝攻勢——つまり、マスコミを使ったプロパガンダ戦略は、実は同じパターンで歴史上に度々あらわれてきたものです。
そして、そのパターンを緻密に分析してみせた本書は、我々一般人に貴重な教訓を与えてくれまず。なぜなら、我々は結局、世界情勢を知るために限られたマスコミ——TV、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット——しか持たないので、そこで垂れ流される偏った報道に安易に乗せられてしまえば、支持率90%超えたブッシュ大統領がアフガニスタンに軍事行動を起こしたように、この日本も戦争にイケイケになることがないとは言いきれない事柄だからです(ここいらへんの日本人の乗せられやすさを描いたものでは、『日本の戦争』田原総一郎 小学館 がお薦めです)。本書の指摘するプロパガンダの手法は、
《敵側が一方的に戦争を望んだ》
《敵の指導者は悪魔のような人間だ》
《われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる》
など十項目にまとめられていますが、これらのスローガンを浸透させ、戦争を正当化するために、国家はありとあらゆる手段を駆使するわけです。
本書で挙げている事例でいえば、湾岸戦争のときの《保育器を盗もうとしたイラク兵が、なかにいた未熟児を放り出した》というエピソード。これはイラク=悪を象徴する話としてマスコミに流され、ブッシュ(父)大統領も演説で何回も引用して、戦争を支持する世論の形成に大きな役割を果たしました。ところが、《のちに、この話は、クウェート人有力者の出資を受け、広告会社がつくったでたらめだということが判明した》そうです。
結局、戦争に、「きれいな戦争」「人道的な戦争」などありえず、当事者になったが最後、嘘や残虐行為、卑劣な手段を使いまくって勝とうとするのが、悲しいかなその真の姿なのでしょう。しかし、自分たちの行為は隠して、敵の方だけが残虐かつ悪だと喧伝する——本書は煽られやすい日本人こそ読むべき、未来の戦争という病への免疫療法たる一冊です。 (守屋淳/著述・翻訳業)
紙の本
為政者はこうやってみんなが嫌いな戦争を遂行するのだ
2002/09/12 11:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベルギーはブリュッセル自由大学の歴史批評学教授,アンヌ・モレリが,第一次世界大戦後の1928年にイギリスの政治家,アーサー・ポンソンビーが著わした「戦時の嘘」を元に,戦時下におけるプロパガンダのメカニズムについてまとめたものである。原著の出版は昨年,米国でいわゆる「同時多発テロ」が発生する前のことだが,その内容はまるであの事件のあとの経緯を見て書いたと言ってもおかしくないくらいだ。
モレリによれば戦争プロパガンダは必ず,「われわれは戦争をしたくはない」という言葉で始まる。われわれは争いを好まない,誰よりも平和を愛している,「しかし敵側が一方的に戦争を望んでいる」のだと続く。なぜかというと「敵の指導者は悪魔のような人間だ」からであり,彼を滅ぼすのは神の意志に従うことである。いつも「われわれは領土や覇権のためではなく,偉大な使命のために戦う」のだ。
いったん戦争が始まれば時として非戦闘員の死者も出る。が,そういうことで厭戦気分が広がるのは阻止しなければならない。「われわれも誤って犠牲を出すことがある」と言い訳をし,「だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」と敵の邪さを強調する。こっちは正々堂々戦っているのに,「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」のだ。
にも関わらず,「われわれの受けた被害は小さく,敵に与えた被害は甚大」であるのは,正義がわれわれの側にあるからだ。その証拠に「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」ではないか,そうとも,「われわれの大義は神聖なもの」なのだから,国民はすべからくこの戦争に協力すべきであり,「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」と,こういうわけである。
このところさんざん宣伝されているので,サダム・フセインは開発中の核兵器ができるやいなやそれをアメリカに向けて発射するつもりでなのだ,と思っているヒトもいるようだ。そんなヒトにぜひお薦めしたい。
紙の本
疑うことがわれわれの役目だ。
2003/01/21 01:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日曜の朝、ぼんやりTVを見ていた。相変わらず、北朝鮮メディアを半ば侮辱したような報道。歌を詠むようなアナウンサーによる紹介で金正日氏を褒め称える子供たち…、こういう映像を何度見たことか、ああなんだか胸がむかむかする、チャンネルを変えよう、と思ったとき、この本が紹介された。一瞬画面に映った目次を見て、息が止まった。目次はこうだった。
第1章「われわれは戦争をしたくはない」
第2章「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
第3章「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
(以下、第10章まで続くが、ここでは省略)
今まさに、アメリカ・イラク・北朝鮮のそれぞれの指導者たちが、同じ事を言っているではないか? 日本も、北朝鮮の指導者を侮蔑しその人民の滑稽さを憐れんでいる。これらの言葉は普遍の戦争プロパガンダだったのか。
すぐに本書を購入した。上述のようなプロパガンダが10章に渡って続く。結論めいたことを言うと、本書はこの目次だけで90%の価値があり、あとの10%はこの目次の言葉を歴史的な事例から丹念に検証しているだけである。
彼の地の人は言う、「アッラーに捧げる魂こそ尊い、我が命など惜しくない」。
また彼の地の人は言う、「至上の自由主義、民主主義を守り貫くことこそ我が国の使命」。
さて、何が違う? それぞれの「神聖な価値観」を守るための戦い。
本書の結びはこうある。「疑うことがわれわれの役目だ」。肥大化したメディアが垂れ流す滑稽な情報を疑うことから、本当の理解が始まるはずだ。
紙の本
プロパガンダの世界
2002/06/05 22:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、戦争プロパガンダを10の法則と法則を裏付ける
事例とともに分かりやすく論じている本です。
この本を読むまで、プロパガンダは、第二次大戦の時代の
ことであると考えていたのですが、最近の湾岸戦争やニュ
ーヨークのテロ騒ぎの時もこの手法に基づいて世論を操作
していることがあったと知って自分も注意して世の中の発
言を見ていなければと思いました。
民主主義の世の中でも一気に思想を1つにまとめられてしま
い反論を許さない状況は簡単に作られてしまうことを知り、
その中で自分なりの正義を見分けられる目を持ちたいと感じ
ました。
世の中を新たな目でみることができる本です。
紙の本
僕だけが正しくて立派で正直なんだ——このセリフ、なぜか国家がいうともっともらしく聞える不思議
2002/06/11 22:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:守屋淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブームの移り変わりの激しい日本では、今更ながら口に出すのが恥ずかしい質問というのがあります。
「そういえばビン・ラディンの捜索ってどうなったの?」「アメリカ同時多発テロは、本当にビン・ラディンの仕業だったの? それってきちんと証明されたんだっけ?」
なんていうのは、「おお、今更!」という今更度が結構高いかもしれません。
現在では、アメリカ政府は事前にテロを知っていたはずなのに、なぜ防がなかったのかなんていうスルドイ突込みがなされていますが、しかし一時期は、人類の敵といえばビン・ラディン、対テロの戦いを援助しなければ世界の敵という言い方さえされていました。
この、テロ直後に始まったアメリカの大宣伝攻勢——つまり、マスコミを使ったプロパガンダ戦略は、実は同じパターンで歴史上に度々あらわれてきたものです。
そして、そのパターンを緻密に分析してみせた本書は、我々一般人に貴重な教訓を与えてくれまず。なぜなら、我々は結局、世界情勢を知るために限られたマスコミ——TV、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット——しか持たないので、そこで垂れ流される偏った報道に安易に乗せられてしまえば、支持率90%超えたブッシュ大統領がアフガニスタンに軍事行動を起こしたように、この日本も戦争にイケイケになることがないとは言いきれない事柄だからです(ここいらへんの日本人の乗せられやすさを描いたものでは、『日本の戦争』田原総一郎 小学館 がお薦めです)。本書の指摘するプロパガンダの手法は、
《敵側が一方的に戦争を望んだ》
《敵の指導者は悪魔のような人間だ》
《われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる》
など十項目にまとめられていますが、これらのスローガンを浸透させ、戦争を正当化するために、国家はありとあらゆる手段を駆使するわけです。
本書で挙げている事例でいえば、湾岸戦争のときの《保育器を盗もうとしたイラク兵が、なかにいた未熟児を放り出した》というエピソード。これはイラク=悪を象徴する話としてマスコミに流され、ブッシュ(父)大統領も演説で何回も引用して、戦争を支持する世論の形成に大きな役割を果たしました。ところが、《のちに、この話は、クウェート人有力者の出資を受け、広告会社がつくったでたらめだということが判明した》そうです。
結局、戦争に、「きれいな戦争」「人道的な戦争」などありえず、当事者になったが最後、嘘や残虐行為、卑劣な手段を使いまくって勝とうとするのが、悲しいかなその真の姿なのでしょう。しかし、自分たちの行為は隠して、敵の方だけが残虐かつ悪だと喧伝する——本書は煽られやすい日本人こそ読むべき、未来の戦争という病への免疫療法たる一冊です。 (守屋淳/著述・翻訳業)