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紙の本
一途さって。
2002/09/09 00:59
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投稿者:yuuko - この投稿者のレビュー一覧を見る
江国さんも自分で評している通り、常識ではあまり起こらないお話のような気がします。
桃井先生という心を満たす夫がいながら、情熱的な恋をする。
女の人って心の安定や、経済的な安定を望む反面、身も心も焦がすような刹那的な恋愛にもあこがれる面があって、もう見事にこの作品では表現しています。
自分の心のままに恋をして、子供を生んで、彼を待って、引越しを繰り返して、子供にさえ彼を投影して見てしまう。
自分の心のままに行動し、彼だけが生きがいになってしまっている。
ちょっと重い感じがして苦しかったのだけど、読み終わったときに心がほっとするのは、きっと最後にこの主人公が、本当は現実をきちんと解っている上での狂気だったからなのでしょう。
恋をして一番いい頃のままにとどまっていたいという気持ちが充分にわかるからこそ、この本に感情移入するのでしょう。
自由に好きな人のことを信じ、心の全てを好きな事だけにとらわれ、馴染む事によって生じるわずらわしさから逃れながら生きていく事は、人によっては寂しいと感じるのでしょうが、私にはうらやましい限りの行為です。
江国さんは自由な人だと思います。
自由だからこそ、人が変わってると評する事をさらりと書いてのけるのだと思います。平等な心を持っておられるんだと思います。
狂気でも何でも、こういう人の愛し方ができる事に共感する事ができます。
ちょっと自分勝手だけどね。
紙の本
恋人を信じると言うこと
2002/07/21 11:46
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投稿者:水素 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの恋を後悔したことはない。彼には奥さんがいて私も結婚していたけれど、私は彼の子供を産んだ。「必ず戻る」と姿を消した彼を追い、私は全てを捨てて旅に出た。
…江国香織さんはあとがきで「これは狂気の物語。今まで書いた小説の中で最も危険」といっておられました。そのとおり。恋人とは言え他人をここまで信じてしまうなんて怖すぎます。江国さんは文体が柔らかいのでその辺の怖さがオブラートに包まれているのですが、現実に…こういう女性がいたら…と思うとかなり怖いんじゃないかと思います。でも、それが人を愛すると言うことなのでしょうか。
表紙ですが、この写真はホンマタカシ氏です。個人的には、儚い感じのする単行本の安西水丸さんのほうが良かったんですが…ここは人の好みによるところでしょうか。
紙の本
愛を信じたいすべての人に
2002/07/17 02:34
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投稿者:永遠のかけら - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です」と、江國香織は言う。そう、これは狂気の物語だ。信じることを疑わず、静かに、けれど狂おしいほどにたったひとりを想う葉子。その想いはあまりにもまっすぐで、眩しく、そしてときに怖さすらも覚える。それは恐らく、誰もがそんな風に誰かを愛したいと思いながらも、不安や常識によって自分のつくり出した「現実」の名のもとに愛し続けることを諦めてしまうからかもしれない。
愛や恋という言葉は巷に溢れ、数え切れない出会いと別れが繰り返されている。その中に、葉子ほどの愛は一体どれほどあるのだろうか…。きっと出会うことすら叶わない人の方が多いに違いない。もちろん、葉子は「男運がいい」。そして幸運にも、葉子には草子がいた。たったひとつでも確かなものが存在するのは、少なからず葉子の想いの強さを増すきっかけになったはずだ。信じることの難しさを、ごく自然のこととして受け止められたのも、草子を通して「あの人」を見続けることができたからかもしれない。しかし、草子がたとえいなかったとしても、葉子は神様のボートに乗ることを選んでいたと信じたい。そして、たとえ一瞬でも、そんな葉子を信じることができる人ならば、まだ神様のボートに乗る可能性はゼロではないのではないだろうか。
紙の本
絶対的な恋
2002/07/09 22:15
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投稿者:すいか - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉子は娘の草子と引っ越しをくり返しながら、旅のような生活を送っている。葉子は結婚していたが、「あの人」と出会い、恋をして、草子が生まれた。草子は父の事を葉子の話でしか知らない。葉子が引っ越しを続けるのは、別れた時「あの人」が「どこに行ってもきっと葉子ちゃんを捜し出すよ」と言ったから。1つの場所に落ち着いてなじんでしまうと、「あの人」とはもう会えない様な気がしたから。夢のような世界を生きている母と、だんだんと現実を生きたいと思いはじめる娘。葉子はどうして「あの人」の言葉をそんなにも信じられたのだろうか。草子の存在があったからこそ、「あの人」の存在を身近に感じられたのだろう。葉子のような「あの人」に対する絶対的な思いは、きっと誰にでも抱けるものではないだろう。そんな恋にめぐりあってしまった葉子は、幸せとも思えるし、悲しいとも思えた。