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夢は荒れ地を みんなのレビュー

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みんなのレビュー8件

みんなの評価3.8

評価内訳

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8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本

勝利を収めた北ベトナムが東南アジアで繰り広げた残虐の数々、それをマスコミが伝えない限り、日本はいつまでたっても自分たちが第二次大戦でしたことを反省しないでしょう

2005/11/02 19:40

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

たとえば田口ランディの本で、カンボジアのキリング・フィールドで彼女が死者たちの霊と交感して涙を流す場面を読みます。TVで、地雷のせいで足を失った人々の姿を見ます。私はそれを見ながら、なぜ日本のマスコミは、そのカンボジアの今ではなく、クメール・ルージュが殺戮を繰り返していた時期に、この土地に関して報道をしなかったのだろう、ベトナムのときだけは狂ったように記事を流しつづけたのに、と思うのです。
そして、この本を読むと、その根が同じところにあることの気づきます。それはベトナム。あまりに北ベトナムと当時の共産主義に共鳴し過ぎたマスコミは、カンボジアの殺戮の底に、実は勝利者としての北ベトナムがいることに気づいたのにもかかわらず、だんまりを決め込んだのです。その恣意的な報道は、アフガンでもイラクでも、ボスニアでも変わっていません。そういった事実を船戸は改めて教えてくれるのです。
楢本辰次、39歳。性格は真面目、自衛官で階級は二等陸尉、平たく言えば陸軍中尉です。辰次がわざわざ規定ぎりぎりの休みをとってまでしてカンボジアで捜し求めているのは、越路修介、39歳、性格は奇矯、元自衛官で、八年前PKOでカンボジアに来て、撤収時に現地除隊、最終階級は三等陸尉で、普通に言えば陸軍少尉。そのまま行方不明となっています。一ヶ月前に、彼らしい男をノロドム大街で見かけたと聞いた辰次は、修介に、一枚の書類に判子を押してほしくて、その地にやってきたのです。
修介には失踪当時、家庭がありました。妻の名は春美、子ども直樹。そして彼女はいま辰次の子供を宿しているのです。法律的には失踪して7年たつので再婚には支障はありませんが、生真面目な辰次はけじめがほしい、それが今回の旅となったのです。有給休暇の使用法は居所を明確にするだけでいいという服務規則を盾に、個人的な休暇を取って30日以内に修介を探し出し、離婚届に判をもらう。あてのない旅が始まりました。
夥しい数の人物が絡みます。辰次のガイドをするのはヌオン・ロタ、高校の英語教師、辰次のことを気にかける陸上自衛隊警務隊本部の警務隊長・早坂正敏、プノンペンで恐れられる男、ベトナムからきた政治委員、今は売春窟を統括するグエン・ドン・ザンというベトナム人、シェムリアップでバー毘沙門を経営する田丸牧子、ラナという日本人、カンボジア王国陸軍大尉チア・サンミン、子どもを売ることを恥じない老女タム・マイ、無気力な日本大使館の伊達安春、そしてメソジスト教会の牧師で今は棄教し、日本政府の力を借りず独力で地雷を撤去し、この地に学校を作り子供たちに教育をと願う丹波明和。
物語の背景にあるのはクメール・ルージュとカンボジア政府。虐殺博物館、キリング・フィールドを観光化し、あえて地雷の発見を遅らせ、同情を集めることを国策とする政府。そして援助金を懐に入れる軍人や政治家の腐敗。平気で無実の人を逮捕する警察官、彼らと手を組む僧侶。政府援助で潤う日本企業、その出先として事なかれ主義を貫き通す日本大使館。キングコブラの肉をご馳走として食べる人々、子供を売ることで飲み代を稼ぎ、酔いつぶれる男たち。はびこるエイズと、若くして死んでいく売春婦たち。
大量殺戮があったことは認めた上で、私たちはそろそろ、今、東南アジアでベトナムが何をしているのかを、情緒的にではなく、冷徹に見る時期がきていると思います。しかし、第二次大戦すらまともに評価できない、日本人にそれができるか、たかだか一政党の50周年に、国民の憲法を変えようとする与党政治家に何が可能か。自分たちの過ちを認めようとしないマスコミへの不信も含めて、疑問、としか言いようがありません。

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紙の本

夢の跡

2006/12/16 23:23

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:唐賢士 - この投稿者のレビュー一覧を見る

かつて世界を震撼させたクメール・ルージュによる虐殺の痛手と、その後発生した隣国・ベトナムの介入による内戦と、その傀儡政権による支配から未だ脱することができず苦しみ続けているカンボジアを舞台にした作品。

「辺境」の自由に憑りつかれて自衛隊から離脱した日本人を中心に、未だ闘士しての矜持を喪っていないかつてのクメール・ルージュ残党が集結し、辺境における獰猛な資本主義の侵食によってなし崩し的に進行する共同体の破壊(その象徴として「人身売買」の実態が詳しく描かれている)と、隣国ベトナムの傀儡政権によるカンボジアの植民地支配とを、あらゆる非合法な手段を用いてでも粉砕しようとする筋書きは、これまでの船戸文学の中にも数多く見られたストーリーの「型」だが、本作は、「辺境と叛乱と革命」というこれまでの船戸文学の「型」を継承しつつも、作品の質が新たなクオリティを獲得したことを感じさせる。
本作における魅力的な要素は、端的に言って、「辺境」と「等身大のリアルな日本人像」(主人公格の日本人はいずれも団塊前後の世代)と「叛乱と革命のロマン」との見事な結びつきにあるように思う。 それは、「辺境の王」と化した元自衛官に引きずりまわされ、彼の「闘争」に運命的に巻き込まれていくその他二人の日本人(元自衛官を捜索しに来た自衛隊の同僚と、カンボジアで教育ボランティアに携わっているNPO指導者)の思考と行動が変化していく、その軌跡にあった。
二人はいずれも、意識的にせよ無意識的にせよ、「日本」や「日本人」の狭いワクに縛られ、真の意味で辺境に飛び込むことを躊躇しているのだが、その彼らが、辺境闘争への水先案内人とでも言うべき元自衛官に先導され、最終的に辺境の戦士へと変容していくリアルな過程こそが、個人的には本作の醍醐味だったように感じた。
また、本作において見逃してはならない要素として、ベトナム戦争で大いに盛り上がったかつての左翼思想が、「ベトナム解放後」に立て続けに起きた新興社会主義国間における露骨な干渉戦争(本作においては、ベトナムのカンボジアに対する傀儡的支配が主題となっている)と民族間の内戦・虐殺に対する論調の混乱においてその偽善と欺瞞を露呈していく過程の最も重要な「踏み絵」のひとつに、クメール・ルージュのカンボジア虐殺に対して当時どのような態度を選択したかという問題が存在するが、本作は、かつて第三世界の闘争と解放に「夢」を馳せていた人間の側からの、今日的状況を織り込んだ真摯で深刻な「総括」としての側面をも持っている。
クメール・ルージュの虐殺数が過大に言い立てられるほど、その虐殺者を駆逐したベトナムとその傀儡政権によるカンボジア支配が正当化される仕組みになっていること、そしてその植民地支配の枠組みがなし崩し的な市場化とセットになってますます強化されていること、その今日的状況から考えればかつてのクメール・ルージュはカンボジアの民族独立を守護し強化するための尖兵として、国内を粛清する社会主義政策を過激化させていかなければならなかったこと、しかしだからと言って、その結果としての「虐殺」という過去が正当化されはしないということ、そしてそれらすべての歴史と現実を織り込んだ「今日的状況」の象徴として描き出される、依然として続くベトナムによる傀儡政権支配下でのカンボジアの少年少女の人身売買・・・。
以上のような、カンボジアをめぐる複雑な過去と混沌たる今日的状況を、国家と民族にまつわる様々な思考の枠組みをあたかも照明弾のように打上げながらクッキリと描き出してみせた本作は、世界の構図を直撃する船戸文学の「史眼」がますます進化していることを確認させてくれたように思う。

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紙の本

カンボジアを人身売買から救おうという戦いは

2003/06/22 22:03

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:格  - この投稿者のレビュー一覧を見る

 有給休暇を1か月取ってカンボジアにやってきた自衛隊の二尉,楢本辰次.目的は辰次が結婚しようとしている春美の夫である越路修介を探し出し,離婚届けにサインさせること.修介は,8年前,PKOでカンボジアにきたが,現地除隊したまま,消息不明になっている.辰次は,少しずつ,修介の軌跡をたどり,近づいていくのだが,その過程で腐ったカンボジアの現実に触れていくことになる.そして,殺人事件にであい,警察に容疑者として逮捕されてしまう…

 現代カンボジアの人身売買の実態,軍や警察,そして役人の汚職にまみれた姿がたっぷりと詳細に描かれる.ほとんど現実なのかもしれない.そこで識字率向上の為に努力する日本人,きっとこういう人々もいるのであろう.そして,修介は,人身売買された少女達を救い,収容する施設を運営していくことを夢見て,動き回っている.さらに,クメール・ルージュを除隊して,今はカンボジア陸軍に所属しながら,村を運営している人々.彼らが結びつき,夢を現実化しようとしているのだが…

 カンボジアの観光資源は,アンコールの遺跡群とクメール・ルージュによる大虐殺の記憶だから,というのは本当だろう.この本は,カンボジアの現在を,日本人に伝える為の書なのかもしれない.元クメール・ルージュの人々の方が,規律正しく,汚職もなく,きちんと生きているというのも本当なのか.クメール・ルージュが300万人を虐殺したのはむろん,誇張にすぎないが,では,何人を虐殺したのか,それは,なんのためだったのかについては,触れられていない.クメール・ルージュをちょっと持ち上げすぎな点は気になる.

 最後は,船戸お決まりの爆発.その必要はあまり感じられないのだが.

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紙の本

カンボジアの荒れ野に疾駆する男の見果てぬ夢

2003/07/07 09:50

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「(1)カンボジアにおいては、長年にわたった内戦が残した銃器や手榴弾等の武器が反政府組織の手に渡ったり、一般社会へ大量に流出しており、凶悪犯罪が多発する一因となっています。都市部以外の数多くの広範な地域では、治安当局の力が及ばず、武装強盗団や誘拐団が出没しています。また、カンボジア国民の間では一般的に反ベトナム、反タイ感情が強く、これらの感情に起因する暴動も発生しています。
(2)日本人を含む外国人を狙った犯罪も増加傾向にあり、2002年8月3日には、日本人女性の滞在者が、入居していたアパートに侵入した何者かに凶器で頭部を殴られ、頭蓋骨骨折の瀕死の重傷を負う事件が発生した他、同年8月23日には、在留日本人男性が自動車を運転中にオートバイと接触事故を起こした直後、相手に追跡され、後方から拳銃で銃撃される事件が発生しています。また、2003年1月29日から同30日にかけて発生した反タイ暴動では、プノンペンのタイ大使館の他、タイ系ホテルや企業など計13箇所が放火、略奪の被害に遭い、ホテルに宿泊していた日本人数名が現金を含め殆ど全ての所持品を奪われる被害に遭っています。」
これは現在外務省の公式ホームページにある渡航者向け「危険情報」の一部です。外務省情報ですらこれほどひどく恐ろしい国情を伝えているところを見ると沢井鯨著『P.I.P』のカンボジア・プノンペンの風俗情報、警察・司法組織にある公然の「賄賂制度」も本当のように思える。『夢は荒れ地を』では地雷撤去のための膨大な各国援助が政府上層部や政商の食い物にされている事情、人身売買・売春が国民経済、生活に組み込まれている悲惨、クメール民族の自治が中国人やベトナム人の経済、政治面の支配によって名ばかりに終わっている苦悩を克明に描き出す。
日本には情熱を傾けるものがなくなったのか。家庭や職業、権利や義務、その一切合財から解き放たれた。そうすることによってしか獲得できなかったものがある。浮揚感。風と戯れ風に乗っかって生きているという実感。おれは毎日ぞくぞくしているよ。
とカンボジアの荒れ地に消息をたち、クメール・ルージュの残党を組織し、売春構造から子どもたちを解放しようと途方もない夢を追う日本人の元自衛官・越路修介。
消息をたったこの元自衛官の妻と結婚しようとする友人、現役自衛官・楢本辰次は本人に直接会って了解をうるという男の筋道を通すためにこの地に飛び込んできて、彼に問い掛ける。責任は感じないのか。お前の浮揚感のために流される血に対してと。
カンボジア人の識字率向上のために汗を流す元クリスチャンの青年・丹波明和も楢本も、いずれもが底辺の地獄を目の当たりにし、ある意味で手前味噌、自己破滅願望で、見果てぬ「夢」を追い、そのためには不法も暴力もやむなしとする修介の生き方に徐々に共鳴していく。
もしおれがやろうとしていることにたいして成算がないとだれかが思えばおれを殺す。だれかがおれを人民党に売る。それが自然の摂理だ。おれの責任のとり方はその摂理が自然に決めてくれる。おれのちっぽけな頭でうじうじ考える必要はねえ。
ここまでキザに時代錯誤と思える男の生き方を吼えるのはいまや船戸与一ぐらいしかいないだろう。その男臭さをたんのうできる。待ってました! 船戸! である。
ところで、カンボジアといえばあまりに身近な国だけに、いっぽう実情がよく理解できないところだけに、さらに過去日本が侵略した地域でもあり、手放しでこのバイオレンスを痛快だ、男の美学に酔ったとは言えない、そんな気持ちになる最新の船戸節でした。

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2005/08/12 02:43

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2008/06/22 15:52

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2011/10/14 19:50

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2020/05/04 22:40

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