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健康帝国ナチス みんなのレビュー

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みんなのレビュー12件

みんなの評価3.9

評価内訳

  • 星 5 (3件)
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  • 星 2 (0件)
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高い評価の役に立ったレビュー

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/09/04 23:11

悪いことはナチ、いいことは連合軍といった単純な図式、それが歴史的事実をすらゆがめていると知ると、現在のイラク悪し、諸悪の根源はアルカイダというアメリカの主張がきな臭く思えてくる

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

原題は、THE NAZI WAR ON CANCER。内容的には、どっちもどっちだが、原題のほうがストレートではある。

全体は七章構成。第一章「ヒューパーの隠された過去」。以下、「ガン研究、組織化される」、「遺伝と民族に関する学説」、「職業病としてのガン」、「ナチス・ドイツの食生活」、「タバコ撲滅運動」。「残虐と凡庸と」。これに序文と訳者あとがきがつく。装丁は芦澤泰偉。ま、ナチスを扱うとこうなるだろうなあというデザインではある。

で、内容は訳者である宮崎尊のあとがきが分かりやすいので、手抜き気味に引用しよう。

「ナチスの医学といえば、まずホロコーストへの技術的協力、強制収容所における残酷な人体実験、身体・精神疾患をもつ者何十万人に対する「安楽死」措置、遺伝的に「不適」な者に対する断種手術といったことが想起される。本書はこうした悪の陰に隠れた「ナチズムの裏面」たる「良質な科学」に光を当てたものである。(中略)
 とはいえ最大のテーマはガンおよび、ナチス・ドイツの科学者が初めて明確に肺がんの原因と特定したタバコである。」

無論、この本は日本人(自民党や新しい教科書をつくる会など)が得意とする「第二次大戦で、東南アジアは欧米の植民地支配から脱することが出来た。それは日本が開戦当初から目的としたことである」といった、結果から原因・動機までを改変してしまおうといった厚顔な意図をもったものではない。

しかし、だからといって一時代前(いや、あるいは現在もだけれど)の革新?団体が言うような、悪いものは悪いと、その意図から結果を含めたすべてを悪と決め付けるような、似非人権派を気取るものでもない。あの戦争から半世紀以上経った今だからこそ、そのどちらにも組しない、このような冷静なレポートが書かれたのだろう。それにしても彼我の戦争も含めた文化に対する姿勢の差の大きさには驚くしかない。

いや、結論が先走ってしまった。まず、私たちの頭にあるナチスの医療のイメージを書いてみよう。それは人体実験、安楽死、断種、生物兵器の開発であり、死体を原料とした石鹸や剥ぎ取られた貴金属の歯や、毛髪、皮膚の利用といったものである。だから、ヒトラーが動機こそ自分のために尽くす健康な兵士や労働者を確保するためであるとは言え、国民の健康に気をつかい、ガン撲滅のために喫煙や飲酒を禁じ、その根拠を真剣に求め、世界の最先端を走っていたと聞くと、おお、と思ってしまうのだ。

それどころではない、ナチスが展開する健康論というのが、まさに現代医学の主張そのものなのである。暴飲暴食は勿論、肉食中心の食事や喫煙や飲酒、添加物や合成着色料の使用を抑えようとする。そしてアスベストやアルミニウムと発ガンの関係にいち早く注目し、集団検診を勧めるのである。読んでいてタイムスリップをしたというか、私たちの変化のなさに呆れるほどである。

しかも、驚くのはそれらに引導を渡すべき科学(化学)は、その意見を日々代え、決定打を見出しえないままに、産業界や政府、中でも財政当局に判断を曇らされ、煙草やアルコールが野放しになっているという実態である。新しい物質が見つかれば、何が何でもそれが効用があるとして治療に取り入れる様は、以前、読んだアメリカの放射能スキャンダルそのものである。それはドイツも日本も変わらない。

繰り返すが、プロクターはその国民の健康というのが、最終的には総統ヒトラーの軍事力のためのものであると断言する。例えば、日本で語られる少子化の危機が、その実は将来の労働者や兵士の確保であることを、政府も経済界も、そしてそれらの構成員である老人たちが決して語ろうとしないこととは対照的である。それが続く限り、日本には未来がない、と思うのは私だけだろうか。

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低い評価の役に立ったレビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/09/01 18:21

内容紹介

投稿者:草思社 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ホロコーストや強制断種を行なう一方で、反タバコ運動を推進し、ガン研究でも成果をあげていたファシズム国家の実態にせまる労作

◆ナチス・ドイツの知られざるガン研究

 今年五月の「健康増進法」の施行にともない、日本でもタバコを吸うことのできない場所がずいぶんと増えた。本書は、このような「反タバコ」に代表される健康志向を追求した国家としてナチス・ドイツを取り上げる、異色のナチズム研究書である。

 ナチスは一九三九年に「義務としての健康」という国家スローガンを正式に採用した。これは 「自分の身体をどうしようと自分の勝手」だという「マルキシスト的概念」との対比のうえで主張された。ヒトラーがタバコ嫌いの菜食主義者だったことはよく知られているが、事はヒトラーの個人的な嗜好にとどまらなかったのだ。ナチスの健康推進派は国をあげて大々的な反タバコ・キャンペーンを行なったし、ダッハウ強制収容所の囚人たちは有機栽培で育てた花からハチミツを作らされていた。ナチスは、肉や糖分、脂肪の過剰摂取を攻撃して、シリアルや野菜・果物といった「より自然な食事」への回帰を訴えた。パン屋に身体によい全粒パンを焼くことを義務づけてさえいる。

 また当時のドイツのガン研究は国家的バックアップを背景に世界の最先端を行くもので、その成果として、タバコはもとよりアスベストや農薬、食品着色料までもが規制されていた。とくにナチスの科学者がはじめてタバコを肺ガンの原因として特定していたという事実(戦後の医学史では無視されてきた)は注目に値する。人体実験への協力などで悪名高いナチス時代の医学の知られざる一面である。

◆ファシズムの理念にもとづく「健康な国家」

 以上のような事実を紹介しているからといって、本書は決してナチスの再評価を意図するものではないし、その犯罪行為を弁護するものでもない。また一方で、反タバコ運動に対して「健康ファシズム」のレッテルを貼るような単純な反・嫌煙運動側に与するわけでもない。ファシズム国家が嫌煙国家だったからといって、嫌煙国家はファシズム国家だということはできないのだ。問題は、著者の言葉を借りれば「ファシストの理念が描いた研究の方向とライフスタイルが、今日ともすれば理想的と考えられるものといかに類似しているか」ということなのである。

 ナチスの指導者たちは「人体を蝕むガン、社会を蝕むユダヤ人」というレトリックを好んで用いた。だから、ナチスが精力的に取り組んだガン撲滅の根本にある世界観と、ホロコーストを生んだ世界観とは同一のものだということになる。まったく逆方向のベクトルをもつ二つの行為が、個人および国家の「健康」をめざして推進されていたのだ。現代人にとって今や至高の価値となりつつある「健康」について、さまざまなことを考えさせられる労作といえる。

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紙の本

悪いことはナチ、いいことは連合軍といった単純な図式、それが歴史的事実をすらゆがめていると知ると、現在のイラク悪し、諸悪の根源はアルカイダというアメリカの主張がきな臭く思えてくる

2004/09/04 23:11

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

原題は、THE NAZI WAR ON CANCER。内容的には、どっちもどっちだが、原題のほうがストレートではある。

全体は七章構成。第一章「ヒューパーの隠された過去」。以下、「ガン研究、組織化される」、「遺伝と民族に関する学説」、「職業病としてのガン」、「ナチス・ドイツの食生活」、「タバコ撲滅運動」。「残虐と凡庸と」。これに序文と訳者あとがきがつく。装丁は芦澤泰偉。ま、ナチスを扱うとこうなるだろうなあというデザインではある。

で、内容は訳者である宮崎尊のあとがきが分かりやすいので、手抜き気味に引用しよう。

「ナチスの医学といえば、まずホロコーストへの技術的協力、強制収容所における残酷な人体実験、身体・精神疾患をもつ者何十万人に対する「安楽死」措置、遺伝的に「不適」な者に対する断種手術といったことが想起される。本書はこうした悪の陰に隠れた「ナチズムの裏面」たる「良質な科学」に光を当てたものである。(中略)
 とはいえ最大のテーマはガンおよび、ナチス・ドイツの科学者が初めて明確に肺がんの原因と特定したタバコである。」

無論、この本は日本人(自民党や新しい教科書をつくる会など)が得意とする「第二次大戦で、東南アジアは欧米の植民地支配から脱することが出来た。それは日本が開戦当初から目的としたことである」といった、結果から原因・動機までを改変してしまおうといった厚顔な意図をもったものではない。

しかし、だからといって一時代前(いや、あるいは現在もだけれど)の革新?団体が言うような、悪いものは悪いと、その意図から結果を含めたすべてを悪と決め付けるような、似非人権派を気取るものでもない。あの戦争から半世紀以上経った今だからこそ、そのどちらにも組しない、このような冷静なレポートが書かれたのだろう。それにしても彼我の戦争も含めた文化に対する姿勢の差の大きさには驚くしかない。

いや、結論が先走ってしまった。まず、私たちの頭にあるナチスの医療のイメージを書いてみよう。それは人体実験、安楽死、断種、生物兵器の開発であり、死体を原料とした石鹸や剥ぎ取られた貴金属の歯や、毛髪、皮膚の利用といったものである。だから、ヒトラーが動機こそ自分のために尽くす健康な兵士や労働者を確保するためであるとは言え、国民の健康に気をつかい、ガン撲滅のために喫煙や飲酒を禁じ、その根拠を真剣に求め、世界の最先端を走っていたと聞くと、おお、と思ってしまうのだ。

それどころではない、ナチスが展開する健康論というのが、まさに現代医学の主張そのものなのである。暴飲暴食は勿論、肉食中心の食事や喫煙や飲酒、添加物や合成着色料の使用を抑えようとする。そしてアスベストやアルミニウムと発ガンの関係にいち早く注目し、集団検診を勧めるのである。読んでいてタイムスリップをしたというか、私たちの変化のなさに呆れるほどである。

しかも、驚くのはそれらに引導を渡すべき科学(化学)は、その意見を日々代え、決定打を見出しえないままに、産業界や政府、中でも財政当局に判断を曇らされ、煙草やアルコールが野放しになっているという実態である。新しい物質が見つかれば、何が何でもそれが効用があるとして治療に取り入れる様は、以前、読んだアメリカの放射能スキャンダルそのものである。それはドイツも日本も変わらない。

繰り返すが、プロクターはその国民の健康というのが、最終的には総統ヒトラーの軍事力のためのものであると断言する。例えば、日本で語られる少子化の危機が、その実は将来の労働者や兵士の確保であることを、政府も経済界も、そしてそれらの構成員である老人たちが決して語ろうとしないこととは対照的である。それが続く限り、日本には未来がない、と思うのは私だけだろうか。

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紙の本

「価値観の坂」の上を転がるボールのような科学

2003/11/29 10:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る

 最近の日本では「ウチの国だって戦争中大陸で悪いことばっかりやったわけぢゃない,朝鮮や中国のヒトに喜ばれるようなコトもちゃんとやった」てな主張をする政治家がウケているらしい。オレは別に「自虐的」なつもりはないが,これって「オレは確かに強盗に入ったけど玄関の靴は揃えたしトイレのハネだってキチンと紙でぬぐったぜ」と言ってるだけのような気がするんだけど……,まぁそれはさておき(笑)。
 この本はあの悪名高いナチス支配下のドイツ,我々には「大量虐殺」のイメージが強いドイツにおいて,「健康は義務である」というスローガンのもと,ガンや職業病に対する研究が進み,今見ると先進的な禁煙運動や(ヒトラーは菜食主義者で酒もタバコもやらなかったそうな)食生活改善運動が展開されたという事実を通して,科学もまた社会との関係によってその「価値観の坂」(イアン・ポールの造語)の上を登ったり下ったりするものであることを説く科学ルポルタージュである。
 例えば一般にタバコの肺ガンの因果関係を証明されたのは1950年代とされているが,ナチス・ドイツの医師フランツ・ミューラーが1939年に発表した論文にはしっかりした「対照研究」を添えてその結論が導かれているとか,今では常識であるアスベスト(石綿)とガンの関係についてもこれを公に認め,1943年にはこれを労災に認定したとか(日本なんかオレがガキの頃にはまだアスベスト使い放題だったぞ),へぇと思わされる事実も多い。連合国側は認めたがらないだろうが,ナチスや日本の731部隊の「非人道的な研究」の成果が実は現在の医療に活かされている部分もある。あれは悪くなかったいや悪かったと,そう簡単に割り切れるならニンゲンはもう戦争なんかしていないはずなんだよな。

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紙の本

内容紹介

2003/09/01 18:21

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:草思社 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ホロコーストや強制断種を行なう一方で、反タバコ運動を推進し、ガン研究でも成果をあげていたファシズム国家の実態にせまる労作

◆ナチス・ドイツの知られざるガン研究

 今年五月の「健康増進法」の施行にともない、日本でもタバコを吸うことのできない場所がずいぶんと増えた。本書は、このような「反タバコ」に代表される健康志向を追求した国家としてナチス・ドイツを取り上げる、異色のナチズム研究書である。

 ナチスは一九三九年に「義務としての健康」という国家スローガンを正式に採用した。これは 「自分の身体をどうしようと自分の勝手」だという「マルキシスト的概念」との対比のうえで主張された。ヒトラーがタバコ嫌いの菜食主義者だったことはよく知られているが、事はヒトラーの個人的な嗜好にとどまらなかったのだ。ナチスの健康推進派は国をあげて大々的な反タバコ・キャンペーンを行なったし、ダッハウ強制収容所の囚人たちは有機栽培で育てた花からハチミツを作らされていた。ナチスは、肉や糖分、脂肪の過剰摂取を攻撃して、シリアルや野菜・果物といった「より自然な食事」への回帰を訴えた。パン屋に身体によい全粒パンを焼くことを義務づけてさえいる。

 また当時のドイツのガン研究は国家的バックアップを背景に世界の最先端を行くもので、その成果として、タバコはもとよりアスベストや農薬、食品着色料までもが規制されていた。とくにナチスの科学者がはじめてタバコを肺ガンの原因として特定していたという事実(戦後の医学史では無視されてきた)は注目に値する。人体実験への協力などで悪名高いナチス時代の医学の知られざる一面である。

◆ファシズムの理念にもとづく「健康な国家」

 以上のような事実を紹介しているからといって、本書は決してナチスの再評価を意図するものではないし、その犯罪行為を弁護するものでもない。また一方で、反タバコ運動に対して「健康ファシズム」のレッテルを貼るような単純な反・嫌煙運動側に与するわけでもない。ファシズム国家が嫌煙国家だったからといって、嫌煙国家はファシズム国家だということはできないのだ。問題は、著者の言葉を借りれば「ファシストの理念が描いた研究の方向とライフスタイルが、今日ともすれば理想的と考えられるものといかに類似しているか」ということなのである。

 ナチスの指導者たちは「人体を蝕むガン、社会を蝕むユダヤ人」というレトリックを好んで用いた。だから、ナチスが精力的に取り組んだガン撲滅の根本にある世界観と、ホロコーストを生んだ世界観とは同一のものだということになる。まったく逆方向のベクトルをもつ二つの行為が、個人および国家の「健康」をめざして推進されていたのだ。現代人にとって今や至高の価値となりつつある「健康」について、さまざまなことを考えさせられる労作といえる。

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2005/11/08 20:46

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2007/03/28 12:01

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2010/07/09 16:08

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2013/05/03 10:40

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2012/07/20 02:56

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2013/04/17 15:45

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2014/07/19 23:59

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