紙の本
自立できない若者を大量生産する日本的メカニズムを説き明かすサル学者
2004/10/10 02:20
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良書普及人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の著者である京都大学霊長類研究所教授の正高信男氏の
話を伺う機会があった。携帯電話の普及が、携帯電話を作っ
た人の予想を超えた使い方をもたらしており、日本ではその
ことが家族の崩壊に繋がりかねないと警鐘を鳴らしておられ
た。
正高教授に依れば、固定電話の時代は一家に一台で家族単
位の情報集約が出来、子供の生活実態もそれなりに把握可能
であったものが、親とか家といった「窓口」を通さずに、子
供が自由に行動し始め。子供だけの世界を持つようになった。
最早、空間的に近いということは、「一緒にいる」保障でも
何でもなくなった、ということだ。
そこで、本の題名に繋がるのだが、携帯の普及そのものは、
必ずしも子供の「サル化」をもたらすものではなく、北欧な
どを見ると携帯の普及率の高さは、だらしなさと関係ないこ
とが分かると指摘しておられる。
「サル化」とは、容易に想像がつくように、NEETや引きこも
りといった自らの世界に閉じこもる若者やそれと対極に公私
の区分の出来ない、靴の踵を踏みつぶし、スカートをはいた
まま地べたに座り込む女子高生などの若者の生活実態のこと
を指している。
公私の区分とは、きりっとした服装や靴をきちんと履くこと
で世間に出る覚悟が出来ることから始まる、という分析。そ
れが出来ないと、公の人間として行動することを拒否してい
るということになると断言する。欧米と日本が違うところが
そこにあるとの論。
何故日本の場合はそうなのか。その分析が正高教授の学者と
しての真骨頂。教授の調査では、日本人の3歳から5歳のこ
どもは攻撃性が少なく、怯え度合いが少なく、社交性が高い
のに対して、米国は、攻撃性が高く怯え度合いも高く社交性
も低いとのことだ。
要は、日本人は学齢期までは「良い子」で育てることが子供
の親離れを助長できず、ひいては母親の子離れも助長できず、
自立できない日本人を大量に作り出している原因だと指摘し
ている。
よい子は親の期待どおりに行動しようとする。親は子供に辛
い思いをさせないように育てる。「お前にはあらゆる可能性
がある」と万能感を与え続けて育てる。そのまま思春期に移
行し、そこで人生初めての挫折感を味わうことに。
それを乗り越えられない若者は引きこもる。男の子は責任が
あるとされているので、責任を感じて引きこもる。女の子は、
挫折により、とにかく毎日が楽しければいいやと開き直るの
で、公の場でも私を通し、だから電車の中で大声で喋ったり、
化粧をしたり、スリッパ代わりにかかとを踏んだ靴で外出し、
と分析観察する。
パラサイトシングルはその結果に過ぎない。夢が叶わなかっ
た場合の答えを持っていない。自立感がないし、子供を持つ
ことなど考えない。自分が依存しているので人に依存される
ことなど考えられない。ましてや年金の掛け金を収める気に
は到底ならない。そういう引きこもりが100万人以上日本にい
る。
日本では自立を促す教育をしていない。教育は、ストレスの後
送りをやっているので、ストレスに強い子供が育たない。人間
は辛い思いをして脱皮して一人前になるのに、そのプロセスが
無い。ストレスに強い子供を育て、自立心を育める教育を行わ
ないといけない。この現象は、ニホンザルの集団と似ている。
群だけで生活しているサルは、母親から離れずに育つ。社会が
狭い。日本はサル化している、ということになるのだそうだ。
投稿元:
レビューを見る
一度、この本を読むと巷で目につく若者の行動は、全てサル化してしまったせいか……。と思えるようになります。
投稿元:
レビューを見る
これを読んで、載せようかホントに迷いました。
賛否両論、分かれると思います。
今回、自分としてはいくつかの不満をもちました。
そこで、自戒の念を込めて、記しておこうと思います。
そもそもタイトルと中身とが一致しているのでしょうか。
文章のタイトルは、その全体にふさわしいものが望まれるように思います。
次に、論証の仕方が気になります。
数十ページ前には、これこれの原因は「〜かもしれない」「〜といえるかもしれない」だったものが、原因は「〜である」と変わっていたりする。
そんな文章はほんとに読みづらいし、意図的じゃないかと不快になります。
さらには、他の部分の確かさ・明らかさにも、かなりの疑問をもたせてしまいます。
さらに、社会の原因を1つに確定しすぎる感があります。
「専業主婦→社会的知識の不足(→衰え)→子どもたちを甘やかし→甘えた子どもの発生」
というような見解を採るのですが、「ほんとかよ?」と言わずにはいられません。
「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりしか見えてこない。
そんなに簡単に原因が見つかるなら、社会を良くするのは簡単でしょうな、と皮肉めいたことをいいたくなってしまいます。
社会科学は、著者の専攻じゃないしね。仕方ないよ。
…というのが精一杯のフォローでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
現代の若者についての評論。私も現在のケータイ文化には不安を感じる。しかし、著者みたいに愚痴を言っているだけでは何も解決しないのじゃないか、と思った。現代社会に危機感があるなら、行動してほしい。
投稿元:
レビューを見る
とっても面白く、示唆にとむ一冊。行動学者の筆者が、ルーズソックス、ひきこもり、パラサイトシングル、携帯依存症などを社会構造の変化による当然の帰結であることを、主にサル社会との比較によってわかりやすく解明します。なるほどなあ、と、うならされました。つまり、どの現象にも、「家の外」へ出ることを拒絶する、または、どこまでも「家の中」を敷衍する意識が根底にはあるというのです。人間は、甘えの許される閉じた「家」で守られて成長し、やがて家から出て社会の中で自己実現していくものとされたが、今日、その時は遅くなってきているというのです。しかしながら、この本は単なる「だから今の社会は狂っている。昔の社会はすばらしかったんだ」という懐古本にとどまりません。
投稿元:
レビューを見る
7点
地べたに座る若い子たちは、「内」(家の中)を「外」(電車の中とか普通の道)に持ち込んでるらしい。その原因は豊かになった日本社会のせい。両親が過保護になっちゃって子供が「外」に出れなくなったらしい。これは、正高先生からすると、「人間のサル化」みたいなものらしい。しかし、この本はずいぶん売れた。やっぱ、ケータイっていう身近なものから「人間」をサルを通して見るという試みが面白いからなのでしょう。
投稿元:
レビューを見る
ケータイを中心に生活を組み立てる人間を、サルとの類似点を探ることでえぐり出す。
結構テンプレートな説もあって、飽きるところはあるが基本的には面白い。
投稿元:
レビューを見る
本書ではサルの研究者である著者が猿と現代社会のコミュニケーションについて比較し論じています。
行動の背景や問題点の指摘した理由には説得力があり納得できます。サルの研究者の視点から人間の行動を観察し研究というのが他のコミュニケーション論とは違う点で面白いところです。
IT技術の進歩によりさまざまなコミュニケーション形態が生まれていますが、本質であるコミュニケーション能力は
低下というより退化しています。退化した形態を研究してみるとサルのコミュニケーションに通じる行動もあるということには驚きました。昔に比べコミュニケーション手段は増えているのにコミュニケーション能力は低くなったというのは皮肉な結果です。最近は教育方法についての議論が盛んに行われていますが、IT・英語など実務的学力向上も大切だと思いますがコミュニケーション能力を鍛えるということも考えてほしいです。実社会にでて最初に必要なのはコミュニケーション能力です。コミュニケーション豊かな人は世渡り上手な人が多いです。コミュニケーションについてあまり考えたことありませんでしたけど実は社会生活に密接に関わった重要な能力ということがわかりました。
投稿元:
レビューを見る
山岸さんの「安心社会から信頼社会へ」(中公新書)と合わせて読むと、問題意識の共通点が感じられるように思うが、前提としている公的領域・私的領域というのはそれ程自明ではないように感じる。
投稿元:
レビューを見る
人間はサルに一歩一歩近づいていってる。ケータイは便利だが使うことによって頭が退化するのを忘れてはならない。
投稿元:
レビューを見る
かなり話題になった新書ですのでご記憶の方お読みになった方おられると思います。将来家庭を持ったら、どんなご時世であれ、「子供中心主義」にさせない教育を施そうかと思った
投稿元:
レビューを見る
現代における希薄な人間関係、公を忘れ「私」に走る若者のコミュニケーションについて書かれた本。
確かに自分も「サル」化傾向にあるのではないかと心配になる。
投稿元:
レビューを見る
若者とサルの行動パターンの比較は面白いけど、一事が万事みたいな分析は飛躍と言うほか無いと思う。ただ、それを差し引いても、サル学者としての知見は大変興味深い。むしろ、「へぇ〜、サルってこんなに賢いんだねぇ。」という感想。
投稿元:
レビューを見る
本当に本当に今更ながらの正高本。タイトルはもちろん知っていたし、知ったかぶりして話したこともあったけど、やーーっと読みました。。あぁー、もっと何年か前に文芸書ばっかじゃなくって、こういう本読むべきでした。すごく良い意味で刺激を受けました。専業主婦の子どもへの悪影響なんて、考えたことないなー。という下りが印象的でした。もっと、ちゃんと正高本を読むことにしよう。
投稿元:
レビューを見る
ウォーリー所有。6月1日所有。前々から気になってたが、ようやく100円で勢いよくGET。年齢差のある人々を
理解するには良いかな、と。