紙の本
科学者の書いた本だとは思えない
2003/12/12 12:49
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正高氏の執筆スタンスからして問題がある。正高氏は、渋谷で見かけるような「地面に平気で座り、携帯電話で話しているような」(仙台ではあまり見かけない光景だなあ)女子高生を「珍種のサル」と決め付け、それ以降、現代の若者はサルである、という前提で議論を進めている。「今時の若者」とサルとの雑駁すぎる比較論が展開できるのもそのためであろう。確かに、巷で見かけるような、あるいはメディアで喧伝されるような「今時のダメな若者」に対する不満を持っている大人達のカタルシスにはなるだろうが、科学者としては失格である。
特に、第1章で論じられている、「ルーズソックスの真の効用」については、ユースカルチュアのまじめな研究者が読んだら爆笑するだろう。よりによって、「ルーズソックスの真の効用」に気づいたのが、ホテルのスリッパですか。草履や下駄はどうなるんだろうね。
それよりも問題があるのは、本書における統計データである。まず、サンプル数が少なすぎる。また、都市部と郊外や、都市部と農村部という比較がまったくない。さらに、時系列での比較もない。仮に正高氏が「現代の若者はサルである。それは親がそうなるように育てたからである」と主張するのなら、祖父母の代までさかのぼって考えるべきであろう。国民の生活に関する統計など、少し探せばいくらでもあるはずだと思うが。このような統計調査は、本来なら社会経済学系の研究所の協力を得てなされるべきだと思うが、同書には、正高氏が独自に取ったという統計しか出てこない。社会統計学の原則を大いに逸脱した本というほかない。
なかんずく、第4章「「関係できない症候群」の蔓延」で紹介されていた「投資ゲーム」は、もはや嗤うべしである。女子高生50人を25人ずつのグループに分けて、その中でペアを組ませ、ゲームをやらせる…って、25人でペアが組めるか(笑)! 一万歩譲って、何らかの方法でペアが組めたとしても、1グループが全体に及ぼす影響は8%である。統計学的に無視できる数値ではない。
フリーターやパラサイトシングルについても論じているけれど、彼らの経済的背景を探るような態度はまったくなく、ただ母子密着型の子育ての帰結として論じている。政府も若者の自立支援策にようやく重い腰を上げたし、玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社)とか宮本みち子『若者が《社会的弱者》に転落する』(洋泉社新書)みたいな良書も多く出ているのに。フリーターの約7割は正社員希望だという統計も出ているのに(内閣府)。
いや、それよりも驚くべきなのは、正高氏が「サル化」を、むしろ歓迎しているということである(あとがき)。正高氏は「無責任な観察者」でいたいのであろう。ヒトの社会に関して書かれた本であるにもかかわらず、そのような態度をとるということは、断じて許されるべきではない。このような本が売れるということ自体、私にとってはいかなるミステリよりもミステリ的だ。
投稿元:
レビューを見る
一度、この本を読むと巷で目につく若者の行動は、全てサル化してしまったせいか……。と思えるようになります。
投稿元:
レビューを見る
これを読んで、載せようかホントに迷いました。
賛否両論、分かれると思います。
今回、自分としてはいくつかの不満をもちました。
そこで、自戒の念を込めて、記しておこうと思います。
そもそもタイトルと中身とが一致しているのでしょうか。
文章のタイトルは、その全体にふさわしいものが望まれるように思います。
次に、論証の仕方が気になります。
数十ページ前には、これこれの原因は「〜かもしれない」「〜といえるかもしれない」だったものが、原因は「〜である」と変わっていたりする。
そんな文章はほんとに読みづらいし、意図的じゃないかと不快になります。
さらには、他の部分の確かさ・明らかさにも、かなりの疑問をもたせてしまいます。
さらに、社会の原因を1つに確定しすぎる感があります。
「専業主婦→社会的知識の不足(→衰え)→子どもたちを甘やかし→甘えた子どもの発生」
というような見解を採るのですが、「ほんとかよ?」と言わずにはいられません。
「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりしか見えてこない。
そんなに簡単に原因が見つかるなら、社会を良くするのは簡単でしょうな、と皮肉めいたことをいいたくなってしまいます。
社会科学は、著者の専攻じゃないしね。仕方ないよ。
…というのが精一杯のフォローでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
現代の若者についての評論。私も現在のケータイ文化には不安を感じる。しかし、著者みたいに愚痴を言っているだけでは何も解決しないのじゃないか、と思った。現代社会に危機感があるなら、行動してほしい。
投稿元:
レビューを見る
とっても面白く、示唆にとむ一冊。行動学者の筆者が、ルーズソックス、ひきこもり、パラサイトシングル、携帯依存症などを社会構造の変化による当然の帰結であることを、主にサル社会との比較によってわかりやすく解明します。なるほどなあ、と、うならされました。つまり、どの現象にも、「家の外」へ出ることを拒絶する、または、どこまでも「家の中」を敷衍する意識が根底にはあるというのです。人間は、甘えの許される閉じた「家」で守られて成長し、やがて家から出て社会の中で自己実現していくものとされたが、今日、その時は遅くなってきているというのです。しかしながら、この本は単なる「だから今の社会は狂っている。昔の社会はすばらしかったんだ」という懐古本にとどまりません。
投稿元:
レビューを見る
7点
地べたに座る若い子たちは、「内」(家の中)を「外」(電車の中とか普通の道)に持ち込んでるらしい。その原因は豊かになった日本社会のせい。両親が過保護になっちゃって子供が「外」に出れなくなったらしい。これは、正高先生からすると、「人間のサル化」みたいなものらしい。しかし、この本はずいぶん売れた。やっぱ、ケータイっていう身近なものから「人間」をサルを通して見るという試みが面白いからなのでしょう。
投稿元:
レビューを見る
ケータイを中心に生活を組み立てる人間を、サルとの類似点を探ることでえぐり出す。
結構テンプレートな説もあって、飽きるところはあるが基本的には面白い。
投稿元:
レビューを見る
本書ではサルの研究者である著者が猿と現代社会のコミュニケーションについて比較し論じています。
行動の背景や問題点の指摘した理由には説得力があり納得できます。サルの研究者の視点から人間の行動を観察し研究というのが他のコミュニケーション論とは違う点で面白いところです。
IT技術の進歩によりさまざまなコミュニケーション形態が生まれていますが、本質であるコミュニケーション能力は
低下というより退化しています。退化した形態を研究してみるとサルのコミュニケーションに通じる行動もあるということには驚きました。昔に比べコミュニケーション手段は増えているのにコミュニケーション能力は低くなったというのは皮肉な結果です。最近は教育方法についての議論が盛んに行われていますが、IT・英語など実務的学力向上も大切だと思いますがコミュニケーション能力を鍛えるということも考えてほしいです。実社会にでて最初に必要なのはコミュニケーション能力です。コミュニケーション豊かな人は世渡り上手な人が多いです。コミュニケーションについてあまり考えたことありませんでしたけど実は社会生活に密接に関わった重要な能力ということがわかりました。
投稿元:
レビューを見る
山岸さんの「安心社会から信頼社会へ」(中公新書)と合わせて読むと、問題意識の共通点が感じられるように思うが、前提としている公的領域・私的領域というのはそれ程自明ではないように感じる。
投稿元:
レビューを見る
人間はサルに一歩一歩近づいていってる。ケータイは便利だが使うことによって頭が退化するのを忘れてはならない。
投稿元:
レビューを見る
かなり話題になった新書ですのでご記憶の方お読みになった方おられると思います。将来家庭を持ったら、どんなご時世であれ、「子供中心主義」にさせない教育を施そうかと思った
投稿元:
レビューを見る
現代における希薄な人間関係、公を忘れ「私」に走る若者のコミュニケーションについて書かれた本。
確かに自分も「サル」化傾向にあるのではないかと心配になる。
投稿元:
レビューを見る
若者とサルの行動パターンの比較は面白いけど、一事が万事みたいな分析は飛躍と言うほか無いと思う。ただ、それを差し引いても、サル学者としての知見は大変興味深い。むしろ、「へぇ〜、サルってこんなに賢いんだねぇ。」という感想。
投稿元:
レビューを見る
本当に本当に今更ながらの正高本。タイトルはもちろん知っていたし、知ったかぶりして話したこともあったけど、やーーっと読みました。。あぁー、もっと何年か前に文芸書ばっかじゃなくって、こういう本読むべきでした。すごく良い意味で刺激を受けました。専業主婦の子どもへの悪影響なんて、考えたことないなー。という下りが印象的でした。もっと、ちゃんと正高本を読むことにしよう。
投稿元:
レビューを見る
ウォーリー所有。6月1日所有。前々から気になってたが、ようやく100円で勢いよくGET。年齢差のある人々を
理解するには良いかな、と。