紙の本
人は窮地に陥ったときに歌う
2008/05/26 22:36
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投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
長崎ぶらぶら節 なかにし礼 新潮文庫
読み始めて、もう20年ぐらい前にドライブした長崎県の海岸線を思い出した。有明海の向こうに見える熊本県天草島(あまくさ)の島影が目に浮かぶ。「サンダカン八番娼館」山崎朋子著を思い出した。
実話だろうか。作者の記述は「職人技」です。「形式」を形態として、「こだわる」「意味を求める」「心を注ぐ」そんなことが書いてあります。
作詞家である作者の歌に対する深い気持ちが、歌探しという行動の記述につながっています。歌って何だろう。161ページにある窮地に陥ったとき、人は歌を歌うという定義がいい。
金をばらまいて実家の店をつぶした学者さんと50歳前のカリスマ芸者がふたりで歌探しをする。どちらかといえば近づきたくない人たちだ。隠れキリシタンだった島での取材は詩を読むようだ。
録音機材が無かった時代の東京での録音風景は楽しい。夢のような話だ。生活苦の記述が多いが、そうではない面もあったと思う。現代人よりも自然や食べ物、人間関係に恵まれて、夢のある心豊かな暮らしをおくっていた人たちも多かったと思う。
258ページにある記述のために、それまでの257ページがあった。芝居の脚本のようだ。炭鉱の記述は胸につまる。
読み終えてみれば、わたしのひいおじいさん、ひいおばあさんの世界だ。老いるということについて考えた。人は何のために生きていくのか。志(こころざし)を貫くためと考えた。
紙の本
映画では
2019/03/08 07:24
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投稿者:おどおどさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉永小百合さんが演じられていたので、会話が自分の中で吉永小百合さんの声で再生されて面白い。
なぜか「この世界の片隅に」に出てきた遊郭の?女性を思い出した。
紙の本
長崎らしさを表した物語。
2003/12/14 22:06
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投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔、先輩営業マンの口から「無い時長崎」という言葉を良く聞いた。
営業成績が振るわず、なんとか実績の帳尻を合わせなければならないとき、長崎に行けば数字が拾えるというものだった。そんな言葉どおり、長崎という街は何の不信感も抱かずに気前良く外からの人々を受け入れてくれるところである。
ふと、この物語の主人公である愛八姐さんと周囲の人々の姿を読んでいるうちに、「無い時長崎」という言葉を思い浮かべてしまった。
序章で物語の展開に興味を引き、芸者として売られた幼少の愛八が峠を越えて長崎に行く件は外海に開かれた長崎の茫洋とした風景を十分に想像させるものだった。
その長崎で偶然に古賀十二郎と知り合い、愛八が一方的な恋心をぶつけていく様はいじらしいほどであり、なんとか手助けしてあげたいと思うほどの描写は流石に作詞家ならではの殺し文句と思った。
古い長崎の歌探しの結果、念願叶って「長崎ぶらぶら節」に出あった夜、同じ部屋で愛八と古賀十二郎は床を並べるものの互いの恋心を語り合うというだけの場面は、この作品の最高の見せ場であると思った。「寒か」と口にした愛八に古賀十二郎が添い寝をしてやるという設定は「忍ぶ恋」そのものを表している。
横浜や神戸の中華街は客慣れしていて横柄であるが、長崎の中華街は親切で優しく、情が深い。同じ港町でも長崎は優雅で大陸的である。すり鉢の底にへばりついたような長崎の街にこんな素敵な無償の愛の話があったとは嬉しかった。
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新選組で言うなら山崎さんみたいな人がいい。古賀先生は。
愛八は佐野の奥さんみたいな人がいいなぁ。方言で書かれてるのがちょっと苦手。
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浦野所有。
これって実話を基にした作品だったんですね。知りませんでした。
私としては、キリスト教徒の村での一幕がクライマックスに思えました。ところどころ、難題があっさり解決してストーリーが進んでしまうご都合主義なところが引っかかりましたが。
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長崎にある芸妓さんの一生の話だが、その心意気と真っ直ぐさがたまらない。最後の数ページは自然とこみ上げる熱いものをこらえるのが大変だった。
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「なかにし礼」って聞いたことあるな~。って思ってたら、
『北酒場』の作詞した人だったのね~。
その人が、直木賞よ。
すごいね~。
やっぱり作詞家出身ってこともあって、
この本の読み始めから、引き込まれていったわ。
ほんと唄を詠んでるような感じっていうの。
すごくキレイな文体でね、引き込まれていたのよ。
芸者・愛八と学者の古賀十二朗がすたれた長崎の唄を
探してあるくお話。
なんかね~、
男と女の恋、人生とはどういうものなのか
本当の優しさとは。。。。
いろんな意味で教えさせてもらった本でした。
愛八って言う人は、本当の日本人。
今では忘れてた本当の日本人粋を思い出させてくれる人。
こういう芯の強い女になりたかと。。。
それに、長崎。。。って言う舞台。
懐かしいな~。
佐世保にいたころを思い出すわ。
方言もすんなり頭に入ってくるし、
地形的にも少しは覚えてるし、、、
もう一度、長崎の地に足を踏み入れてみたくなったわ。
いろんな意味で考えさせられる本でした。
ただね、
舞台では佐久間良子、映画では吉永小百合、
TVでは市原悦子でしょ~。
どれもピンとこないのよね。
私の「愛八像」って言うのは、もっと違うのよ。
こういう良い本はメディア化しちゃダメよね。
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読後感が清清しく、ずっと余韻に浸っていたい。
大正から昭和初期の長崎を舞台に、一人の芸妓の生き様を描いた本作。
長崎学の研究者である古賀とともに、古い歌を集めて回る、年増の芸妓である愛八。彼女が3年間、古賀とともにどっぷりと古い歌の世界に浸っているとき、自分の生い立ちを知る。
哀しみの風に吹かれているときに、不意に降りてきた、自分だけの音の世界。そして儚くも美しい恋。自分と同じく天涯孤独の舞妓への無償の愛。
ドラマティックな展開はないけれど、大人の物語がここにある。
自分自身、覚悟を持って、選んだ世界にいるのだろうかと自問自答をしつつ、最後のページを閉じるのであった。
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長崎旅行中に購入。好文堂書店にて。帰りの新幹線で読了。初読だが、地名が分かるので、行かずに読むより楽しめた気がする。
方言、花街、そして歌。歌は此岸と彼岸をつなぐもの。人に生きる力を与えるもの。
十二郎の言う、「ひらめきは努力の蓄積あってこそ」「学問は自分の足で額に汗してするもの」「学問だって遊び」というあたりが的を射ていると思う。
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122回 1999年(平成11)下直木賞受賞作。明治の長崎を舞台とする芸者愛八の生涯を描いた時代小説。たくましく、素朴に、純愛を通す主人公の生き様に感動した。おすすめ。『時には娼婦のように』の作詞家が書いた小説なので、エロものかとくくって読んで見たがとんでもなかった。
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第122回(平成11年度下半期) 直木賞受賞作。あの小難しい評論の選考委員満票の作品。
長崎丸山の芸者「愛八」。長崎学の確立を目指す「古賀十二郎」と二人で長崎の古い歌を求めて訪ね歩き、忘れられた名曲「長崎ぶらぶら節」と出会う。そして、父親のいない貧しい少女「お雪」を救うために無償の愛を描いた「愛八」の生き様。
選考委員・田辺聖子「序章と終章が美しい額縁を成して、満ち足りた読後感」という評にすべてが表されている。
映像は想像でもっと大きくできるが、歌はわからないので、一度聞いてみたいもの。
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第122回直木賞受賞作。
実在の人物であり、明治時代の長崎丸山芸者愛八の生涯を描いた本。
長崎の言葉遣いなどは分からないが、情緒あふれる描写や非常にやさしい言葉が使われている事で、愛八のやさしさというか母性が引き出されている印象。
以前読んだ阿久悠にしてもそうだが、ボキャブラリーの豊富さやチョイスの仕方にはただただ感心、感激する。
2013.12.14読了
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【本の内容】
長崎・丸山遊里の芸者愛八が初めて本当の恋をしたのは、長崎学の確立を目指す研究者・古賀十二郎だった。
「な、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探して歩かんね」。
古賀の破産を契機に長崎の古い歌を求めて苦難の道を歩み始める二人と、忘れられた名曲「長崎ぶらぶら節」との出会い。
そして、父親のいない貧しい少女・お雪をはじめ人々に捧げた愛八の無償の愛を描いた、第122回直木賞受賞作。
[ 目次 ]
[ POP ]
『兄弟』では肉親ならではの愛と憎しみを描ききった著者が、今回は膨大な資料をもとに<長崎学>成立の裏話を町学者をささえた芸子の視点で、それもやさしいまなざしで記している。
評者は趣味で京都の民謡をうたう合唱団をやっているが、団の長老に言わせると、民謡の集め方は本書とまったく同じだったそうな。
村々のお年寄りをたずねて、記憶を頼りにふるい民謡を歌ってもらい、歌詞とメロディーを記録する。
残念ながら、京都ではまだ「ぶらぶら節」に相当するヒット作は発掘されていないが、偉大な先人がいたことを教えてくれた本書には敬意を表したい。
お茶屋遊びのなかから学問が生まれるというのも、なんだか京都学派と通じているなあ。
詩人から作家への移行は意外にむずかしいとも言われるが、なかにし礼は楽々と飛び越えてしまったようだ。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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2014/9/14
長崎の昔の話なので読みづらいだろうと思って読み始めたが、古さを感じさせない文章には感動した。
話自体はものすごいドラマチックなわけではないが、愛八の心の美しさや美しい文章に引き込まれるように読んで行った。
ここまで綺麗な文が書ける著者に出会えてよかった。
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なかにし礼さんの直木賞受賞作
誰もが知ってる作詞家さんですが、文筆を始めて二作目で直木賞を取ったそうです
才能の塊なんですかね
冒頭から文章の美しさが際立ってると感じた
なかにし礼さんの作品という先入観のせいかもしれないけど、詩人の文章だからそう感じるのかとも思う
しかし、それ以上のものは感じ取れなかった
残念
小説として他にどこを楽しめば良かったのか
読んでいてもワクワクやドキドキが全く無く深く考えさせられることも無いこの小説、なぜ直木賞を受賞したんだろう??