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こんな男には絶対なってはならない、こんな女性出会ってみたいなwなど読後の余韻が残る10作品。藤沢周平 著「はしり雨」、1985.2発行。江戸下町の陽もささないような裏長屋が舞台。今は薄れてきた昔日の情緒・人情が。「贈り物」「うしろ姿」「遅いしあわせ」「泣かない女」が特に良かったです。「泣かない女」は読んでる私が泣けてきました!「朝焼け」は最低男と最高女の組合せ、「捨てた女」はくず男の話です。
原田康子さん(1928~2009)がエッセイ「父の石楠花」で絶賛の藤沢周平さん(1927~1997)の「驟り雨(はしりあめ)」(1985.2)、再読します。10話が収録されています。短編集なのに中身は濃くて読み応えがあります。膝を叩いたのが「贈り物」「うしろ姿」「驟り雨」「遅いしあわせ」「泣かない女」。まずまずは「人殺し」「運のつき」。どうしようもない男を描いたのは「ちきしょう!」「朝焼け」「捨てた女」。藤沢周平さん、長編では「海鳴り」「蝉しぐれ」、短編集では「橋ものがたり」「驟り雨」が気に入ってます。
女の幸不幸は、男によって左右されたと言ってもよいであろう時代。藤沢周平「驟り雨」、1985.2発行、再読。「贈り物」「うしろ姿」「ちきしょう!」「驟り雨」「人殺し」「朝焼け」「遅いしあわせ」「運の尽き」「捨てた女」「泣かない女」の10話。盗賊だった作十を親身に介抱するおうめ。作十はそんなおうめに最後のひと仕事を「贈り物」。ダメな男の新吉に優しすぎるよ「朝焼けのお品」。弟の30両の借金の肩代わりにされそうなおもんに、重吉の思わぬ愛の手が「遅いしあわせ」。捨てられても毅然としたお才に通蔵は「泣かない女」。
読むたびに新しい感動が、そして心に迫るところが微妙に変化してくる藤沢作品。「驟り雨(はしりあめ)」、1985.2発行、再読。10話が収録。「遅いしあわせ」は何度読んでも気持ちがいい。女たらしの参次郎が米屋の一人娘に手を出し、その挙句、米屋で2年間修業し一人前になる物語は痛快。のろまで浮気な亭主に捨てられたふきのその後が気にかかって仕方がない「捨てた女」。
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熱に浮かされたようにもっと良い女性を求め、もっと金が欲しいとあがく、もっといい暮らしをと背伸びをする。
夢と欲望を追い求め。
背伸びをした分足元が頼りない。
自分の背の丈にあった暮らしに戻った時、すぐ手元にあるささやかだが堅実な幸せが見つかる事もある、と思う。
夢から目を覚ました、あるいは目を覚さざるをえなくなって自分のあるべき姿に戻ったら男や女の話。
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1985(昭和60)年発行、2003(平成15)年改版、新潮社の新潮文庫。10編。解説にある通り、主人公はすべて裏長屋の住人、半ワルな男と不幸な女の組み合わせが多い。そのこともあってか、それ以外の組み合わせに印象深いものが多い。表題作『驟り雨』落語か何かになりそうな話。盗みに入るつもりの家の前での雨宿り中にであう人間たち。そして、ラストシーンの母娘を助けようとする場面で終わるところも余韻がかなり残って素敵です。
収録作:『贈り物』、『うしろ姿』、『ちきしょう!』、『驟り雨』、『人殺し』、『朝焼け』、『遅いしあわせ』、『運の尽き』、『捨てた女』、『泣かない女』、解説:原田康子(昭和60年1月、作家)、備考:昭和55年2月青樹社より刊行された。
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過去の読書ノート記録第3弾
藤沢周平は、名もなき人々の悲しみに寄り添い、薄いしあわせに寄り添う。
(以下ネットなき時代なので全て自分用覚えです)
『驟り雨』95.1.6読了
藤沢周平著 新潮文庫 440円
85年2月発行 80年単行本
下町市井もの
「贈り物」
作十 渡世人 蔵前から駒形町にかかる所で腹が痛くなる。
おうめ 親身な看病。
「かわいそうに、とおうめはつぶやいた。たかがその程度の女なのに、作十は家ものぞいちゃいけないとあたしをかばって、暗いところで一人で死んでいったのだ。おうめはこみ上げてくる涙をあふれるままにしていた」
「人殺し」
伊太蔵 大河の船頭 日斜め長屋
「遅いしあわせ」
両国橋で 免沢町のおもん
「捨てた女」
「病気がぶり返す前に、ふきを探し当てたいものだ、と信助は思った。それが今の信助にとっては、たったひとつののぞみのようだった」
「泣かない女」
お才は黙って道蔵を見返したが、不意に風呂敷包みを取り落として手で顔を覆うと、背をむけて蔵屋敷の塀の下にうずくまった。
お才は声を出して泣いていた。お才の泣き声を聞くのははじめてだった。風呂敷をひろい、雨に濡れたお才の髪と肩が小さくふるえるのをぼんやり眺めながら道蔵は、山藤の店をやめようと思っていた。ほかの店でやり直すのだ。そう思うと、店も、小料理屋で待ってるかもしれないお柳も、遠い景色のように小さく思えた。泣くだけ泣いたお才が、手に取りすがってきたのを、道蔵は振りとって歩き出した。その時になってやっと思い浮かんだことを道蔵は大きな声で言った。「夫婦ってのはあきらめがかんじんだ。じたばたしても始まらねぇ」その言葉をどう受け取ったかは分からなかったが、お才はめずらしく晴々とした表情で道蔵を見上げた。
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10編の作品だが似たような名前が出てくるので、コンガラって来る
江戸時代に生きる下町の喜怒哀楽をつぶさに描いている
時代を超えて見えてくる人間模様が面白い
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私はこの『驟り雨』で初めて藤沢周平の小説を読みました。そのため、他の作品がどうなのかはわかりませんが、少なくとも本書には性交の描写が多くあります。
その事を知らずに読んでしまうと少々ショッキングかもしれません。
しかし、最後の『泣かない女』はそのようなものがなく(薄く)、本全体を気持ち良い形で読み終わることができました。