電子書籍
通り雨
2013/07/08 01:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かぞお - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編なれど心に残るいい作品。
紙の本
藤沢周平のふ・ふ・ふ
2019/04/02 15:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤沢周平の作品は暗いとよく言われる。
その暗さは魅力とも言われるのだから、不思議なものだ。
しかし、10篇の短編を収めたこの短編集を読むと、藤沢の作品が暗さだけが魅力でないことがよくわかる。
むしろ、藤沢にはどこかで笑いを意識した思いもあったのではないかと感じる。
表題作である「驟り雨(はしりあめ)」は、一人の男が雨の中一軒の大店に盗みに入ろうとしている様を描いた短編である。
雨がやむのを待つ男の前に雨宿りに走り込んできた若い男女。
なんともいわくありげなその会話。若い男女の会話がどこか面白い。
二人が立ち去ったあと、今度は怪しい男の二人組が雨宿りにやってきて、男は盗みに入る機会をうしなう。
さらには、病人の母と幼い娘の親子づれ。とうとう男は盗みを諦め、この親子を助けるはめに。
なんとも間の抜けた男の話だ。
きっと少し男の言動をおおげさにすれば、笑いをもった人情噺になるだろう。
もっと落語噺に近いのが、「うしろ姿」。
いつも酔った勢いで見知らぬ他人を長屋に連れ帰る六助という亭主が出色だ。
その女房のおはまもいい。
かつて六助がどんな男たちを連れ帰ってきたかという出だしから笑いを誘う。そして、なんともきたないお婆さんを連れ帰ったことで、話は一気に面白さと、この夫婦にかつて面倒を見切れなかった母親がいた人情噺と進む。
大家と店子である六助との軽妙な会話。お婆さんのいわくありげな振る舞い。
最後のオチまで、完璧な寄席噺になっている。
こういう藤沢周平を読むのもまた楽しい。
投稿元:
レビューを見る
2007.03. いい!藤沢さんの小説は、数年前から”中高年の心に染みる”なんて言われたり、映画化されたりでおじさんに大人気だったけれど、私は敢えて読まなかった。中高年のうちの父も、藤沢さんの小説をたくさん読んでいたのに。だけど「十話」というアンソロジーで表題作の「驟り雨」に出合って、思いは変わった。市井の人々、それも裏店に住んでいるような貧しい人の心の機微が本当にうまく描かれている。無駄な文はひとつもなくて、でも気持ちが伝わる。情景が浮かぶ。素晴らしいです。
投稿元:
レビューを見る
全1巻。
短編集。
しみる。
けども。
不幸の中でほんの少しともる幸せ。
小さいがゆえに、かけがえがなく、
人生ってそんなものって気がする。
そんな話。
あれだ。
自分の嫌いな北の国から臭がする。
鬼平の後だからなおのこと暗く感じた。
まあ。
藤沢先生らしいっちゃらしい話なんだけど。
まだいいかな。
もう少しガツガツしよう。
自分。
投稿元:
レビューを見る
真っ当ではない人生でもみんな心を持ちながら懸命に生きている。
ときに我を省みる。諦めたり、幸せを夢見たり・・・そんな登場人物たちに励まされる。
投稿元:
レビューを見る
男と女にまつわる短編集。よかった。本当によかった。
藤沢周平の人情話だと思ったらガツンと裏切られる厳しい話から、ほろりと涙してしまうようなものまであった。特に表題の「驟り雨」は大好き。この短編にめぐり合えてうれしい、と思った。
これ、役所とかの離婚受付窓口において、待ち時間の間に読んでもらうようにすれば離婚がへるんじゃないだろうか。
投稿元:
レビューを見る
江戸の下町に生きる、名もない庶民の人間模様を描いた短編集。
短編集『たそがれ清兵衛』の時のようなスカッと感は少ないけれど、
もちろん江戸時代に私も藤沢周平も生きたことないのに、江戸下町の風景が、情景が、自然と浮かび上がってくる。
特に表題作の『驟り雨』(はしりあめ)。
事件はなにも起きない、ただ、これから盗みに入ろうとする男が神社の軒下で雨宿りをするだけ。なのに、同じく雨宿りのために立ち寄った人々の会話をきいた彼の心の動き、ずっと降り続ける雨の音、雨の匂いがただよってくる。
投稿元:
レビューを見る
秋雨の朝読了。3回目くらい。全10編が本当に「珠玉」。しんみりとしたり、憤ったり、滑稽だったり、ほっこりしたり。いろいろあるけど、“人生っていいな”と思える。
『泣かない女』の最後、道蔵の言葉が良い。
「夫婦ってえのは、あきらめがかんじんなのだぜ。じたばたしてもはじまらねえ(p345)」
投稿元:
レビューを見る
『ちきしょう』のみ。
大原麗子さん、三浦友和さん、乙羽信子さん他出演のTVドラマ版(1986年)は未ソフト化のようなので原作登録。
投稿元:
レビューを見る
再読。
盗みに入る前に潜む神社の軒下で、次々に雨宿りにくる人たちのあさましい姿と、やがてあがった雨と心情の変化をシンクロさせる表題作「驟り雨」。
初期の藤沢作品にある暗さ・悲哀と、ほっとする作品が混在した10短編集。20頁程度で人の生き様を映し出しひとつの物語を完成させるのはさすがの藤沢周平。
以前読んだ時は完成度には感嘆したものの、筋で読んでいて、心の変化をあえて描かずに描くといったことが分からなかったが、あらためて読むともっと深く読めた。
投稿元:
レビューを見る
読み終えて、本を閉じ、あぁ人間て、かわいいなぁ。
と、人肌のぬくもりに包まれるような温かさに
心がゆるむ短編集。
どの主人公もどこか幸せでないし、幸せになれたかと
いうと、そうでないかもしれない。
だからこそ、読後、自分を肯定できるのかもしれない。
「泣かない女」で、
何一つ、解決したわけではないのに主人公がいう
「夫婦ってぇのは、あきらめがかんじんなのだぜ。
じたばたしてもはじまらねぇ」セリフは、心にしみた。
人生の大問題と思われることは、こんなふうに
まとめて、やりすごしていくことが肝心なような気がした。
投稿元:
レビューを見る
江戸に住む町人たちがおりなすドラマ。
登場人物も必ずしも善人ではなく、善と悪の間で揺れ動いているのが共感を生む。
というか、善人と悪人なんて白と黒でわけられるもんじゃないし。
投稿元:
レビューを見る
短編10作。
「贈り物」「うしろ姿」「ちきしょう!」「驟(はし)り雨」「人殺し」「朝焼け」「遅いしあわせ」「運の尽き」「捨てた女」「泣かない女」
江戸の裏長屋が舞台。
登場人物の人となりが憎みきれなくてほろっとする。
ハッピーエンドもアンハッピーもあるが、後味の悪さはない。
そしてとても読みやすい。
こちらと「たそがれ清兵衛」で作者の世界にはまってしまったかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
激しい雨の中、一人の盗っ人が八幡さまの軒下に潜んで、通り向いの問屋の様子を窺っていた。その眼の前へ、入れかわり立ちかわり雨やどりに来る人々。そして彼らが寸時、繰り広げる人間模様……。表題作「驟り雨」をはじめ、「贈り物」「遅いしあわせ」など、全10編を収める。抗いきれない運命に翻弄されながらも江戸の町に懸命に生きる人々を、陰翳深く描く珠玉の作品集。
投稿元:
レビューを見る
知人に勧められ、同郷出身ということもあり。実際の江戸がどうかわからないけど、今もありそうな事が描かれている。いや…今はないことなのかも…。艶と情がある。