紙の本
探偵シリーズからは離れて
2004/03/22 07:35
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投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者いわく、題名に色が入っていないときはシリーズから離れている証、なのだそうです。というわけで、今回は妖怪色の強いお話。探偵風味はそこそこに、といった感じでしょうか。
三日月祭りにて、妖怪仲間に無実の罪を着せられた秋。
真犯人を追い求める秋と、偶然不可解な事件に遭遇してしまった刑事、高遠の私的な捜査が絡み合います。
今回はケルト文化について深く言及しているのですが、これから先、秋、座木(くらき)、リベザルの三人の出自も次第に明らかになってきそうな気配が濃厚で、目を離せない感じです。
著者の作品を読んで常に感じるのは、言葉の使い方が独特だということ。
人が落下して電線に引っかかるという現象を
——電柱との接合部に強い負荷が掛かる。
とする文章を読むと、やはり理系の表現が多いなと思います。
また、著者はとても透明感のある文章を書きます。
——初雪の最初の一粒を
両手の平で閉じ込めたのは
消えてしまうと知っていたから。
消え行くものと信じたくないから。
章の扉の部分ですが、こうした語句を楽しみながら読んでいくのはとても味わい深いもの。
特に今回は、登場人物の人間関係に大きな進展が見られるので、シリーズを通して読んでいる人には読み応えのある一冊となっています。
——忘れたい過去は未来を作る自分への戒め。忘れて欲しい過去は未来を縛る他者による足枷。
こんなセリフをさらりと口にするクールな秋と穏やかで優しい座木、そして可愛いリベザル。
著者によると、それぞれのラストはもう決まっているのだとか。しかし、ラストへの到達時間を少しでも引き延ばし、できるだけ長く続けて欲しいと願うシリーズです。
紙の本
ファンタジーだと思えば、腹も立たない
2004/03/18 16:33
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投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズ全編に対して言えることだが、シリーズ名の『薬屋探偵』という単語に騙されてはいけない。いや、騙すというと語弊があるか、そう、“探偵”という単語に先入観を持ってはいけない、とでも言おうか。一般的に小説の探偵というと、複雑なトリックを暴いたり、難解な謎を解き明かすといったイメージが先行するのではないだろうか。ミステリの定石である“不可能を排除し、可能のみを真実とする”との言葉に従い、時間や場所といった要素を絞り込むことで推理を展開する。だが、本シリーズに登場する探偵は、自らの知識に頼って推理する。読者は充分な情報を与えられずに、推理が進められてしまうことも多々あるのだ。だから、“探偵”という単語を見てミステリを期待しても、おそらくはガッカリするだろう。本シリーズはあくまで妖怪小説だ。ファンタジーとして読み進めば、良質な物語だと分かるはず。殺人事件等はスパイス。そう思えば、腹を立てずに済む。
シリーズ11作目の本書は、ケルト神話から題材を得ていて、草原を妖精が舞い飛ぶファンタジーが好きな人にはたまらない構成。妖怪と人間の異種族間に発生するトラブルを解決するという内容も、これまで通りだ。ただ、本書だけを楽しもうとしても、それは無理。これまでのシリーズの流れを知っていないと、半分も楽しむことはできない。もし初めて興味を惹かれた方は、せめて5〜6冊は目を通しておいたほうが良いだろう。
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薬屋さんシリーズは一通り読んでますが、表紙が一番お気に入りなのでこれを。
今は挿絵入り文庫も出ていますね。でも何かそれだと…本当にキャラクタ小説になっちゃうんじゃないかと心配に…。
ミステリと云うよりはきっと、言葉遊びとかふいに手に取ってパラパラ捲ってみると良い感じな本。
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薬屋探偵シリーズ11。
主人公、犯人に仕立て上げられるの巻(笑。おまけに、完全にアブノーマルな世界の方かと思えば、普通に刑事さん出てくるし。いろんなところに伏線張ってあって面白かった〜☆
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秋が出てこないので、最初は読むのをやめようかと思いましたよ(うわ
最近、何だか座木は原型に戻ってることが多いですね。
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シリーズの中で一番読むのと理解するのに時間を要した作品。
一番読み応えがあって、一番好きかも。
リベザルじゃないけど、秋は作品を重ねるごとにどんどん謎が深くなって遠くなる感じがする。
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高遠さんサイドと薬屋サイド、ひとつの事件の表と裏。
周りが期待する自分と本当の自分の間で行き詰ってしまった少年。
最後の展開が救いだったのかどうかはわかりませんが、友達になれたんだったらいいなぁと思います。
時期的にはハロウィンネタでぴったりでした。
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薬屋11冊目。高遠さんと秋って近い感じがするけど、全く反対で、全く遠いとこにいるんじゃないかなぁ、なんて思いながら。高遠さんは、秋が一番綺麗で寂しく見える所に立ってるのかもなぁ、とか妄想。
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秋の過去に触れそうなキャラが登場!
話は普通だったけど、ラストの秋の鬼の一言にヤラレタw
あああ、秋ってば鬼っ子!!
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薬屋探偵シリーズ第11弾:
「その短い命、残らず山百合に奪われて、今すぐここで果てるが良い」
呪いの言葉は、自らの未来を縛る足枷となる。
好きなのに好きと言えない。傍に居てほしいのに突き放す。
裏切られることに怯えるあまり、かけがえのない人を先に裏切ってしまう。
そして、同じ心を持つ少年がここにも一人。
さびしくて悲しくて、しかしやがて、やさしい
題名に色が入っていないときはシリーズから離れている証だそうで
今回はいつもとはちょっと違ってました。
不可解な事件に遭遇した高遠。妖怪のお祭りで無実の罪を着せられる秋。
そして二つの事件は絡み合って・・・
このシリーズは心に残る言葉が本当に多いです。
「頑張れ」って言葉の使い方を考えさせられます。
100の意味を込めても10の意味しか伝わらなければ
それは10しかないと同然。
聞き違いに勘違い・・・話し手と聞き手・・・
そして秋が言う「言葉が使い手を選ぶ」と・・・
「忘れたい過去は未来を作る自分への戒め。
忘れて欲しい過去は未来を縛る他者による足枷」
こんなセリフとサラッと言える秋はやっぱりステキです。
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080210貸出。080222読了。
歯が痛かったのですることがなく、読んだ。
お祭りに出るリベザルが可愛い☆
秋のひょうひょうとした特徴が一番現れる場所だな、と思う。
創作の御伽噺もいい感じ。
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本当の自分って何だろう。
三つの視点から見る、一繋がりの事件。
高遠刑事、リベザル、そして不安定な自分と偽りの友人。明かされる事実と見失いかけた真実。
ほんとうってなんだろう。
現代の子供達はみんな同じ悩みを抱えて生きているはず。
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なにかと精神的に痛いです。
人間と、そうでないものは歩み寄れないのか、と。
百合の花、スミレの花。
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人と妖の葛藤。信じることの難しさを描く
読了日:2006.05.08
分 類:長編
ページ:319P
値 段:840円
発行日:2004年3月発行
出版社:講談社ノベルス
評 定:★★★
●作品データ●
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主人公 :深山木 秋他
語り口 :3人称
ジャンル:オカルトファンタジー
対 象 :ヤングアダルト寄り
雰囲気 :ライトノベル、やや暗い
結 末 :一件落着、ハッピーエンド
ブックデザイン:熊谷 博人
カバーイラスト:斉藤 昭 (Veia)
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---【100字紹介】--------------------
好きなのに好きと言えず、傍に居て欲しいのに突き放す。
裏切られることに怯えるあまり、
かけがえのない人を裏切ってしまう…。
奇妙な事件に関わった刑事と少年と妖を通して、
葛藤を描く薬屋三人組のシリーズ第11作
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高里椎奈の「薬屋探偵」シリーズの第11作です。
今回はタイトルに「色」が入っていませんね。そんな意味でも、著者にとっての「シリーズ中の異色作」だとか。あとがきでも言及されるように、確かにシリーズの他の作品と比べると「探偵」としてのエピソードではなく、「妖」だからこそのエピソード、という感じです。
今回は殺人事件ではありません。
ミステリでもないでしょうか。
オカルトファンタジーですね。
全三話から成っていて、第一話はお馴染みの刑事、高遠三次を中心に話が進みます。幾つかの事件があって、高遠と父の関係を絡めながら巧みにそれぞれの事件でも親子関係にほんのりとスポットが当たっている感じ。テーマは親子愛か!?いや、親子の葛藤か。
第二話では、我らが深山木秋たち3人組が登場。今回は妖のお祭りからスタートで、何だかとっても楽しそう。こういう雰囲気は今まで意外になかったかも。リベザルと一緒に、不思議な世界へれっつ・ごー!そして、起こった事件。ちょっと嫌な感じですが、めげない秋を見ていると、素直に頑張れ!と思ってしまいます。一方でゆれまくりのリベザル。巧い対比です。
最終話は今回のゲストキャラ?の視点で、これまでの総括がなされます。第一話の伏線もよく生きていて、なかなか感動的。
キャラの安定感と不安定感の対比や、展開上の伏線の張り方などの、いかにも技巧的な部分、著者をとても理系的に感じるのは菜の花だけでしょうか?そう、まるで小説の書き方の教科書みたいなのです。ただ、もう少しだけ、不安定感の方の描写に、滑らかさがあると、技巧が物語の中に綺麗に溶け込んでもっと名作になると思うのですが、まだそこまでは…、でしょうか。
●菜の花の独断と偏見による評定●
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文章・描写 :★★★
展開・結末 :★★★+
キャラクタ :★★★+
独 自 性 :★★★
読 後 感 :★★★★
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菜の花の一押しキャラ…小浦(おさうら)
「ヘラえらい?褒めて褒めて」(ヘラ)
無邪気なこの人が大好きです。
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高遠來多川コンビもいいけど、やっぱり高遠葉山コンビはいいですね…!落ち着く…。
人間と妖怪ずっとお互い幸せに暮らしていけたらいいなぁ。