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深い谷底へ
2020/03/23 17:56
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
心を閉ざし続けていた少女と、どこか浮世離れした青年との出会いを描く表題作が魅力的です。内向の世代の記念碑でもあり、日本の純文学の到達点かもしれません。
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どんよりとした男女関係にひかれる
2019/01/26 22:29
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼の作品には、当時激しかった学生運動についてのかかわりが皆無なことから「社会的問題やイデオロギーなど外部に距離をおいて、内に向っている作家たち」という意味から「内向の世代」と呼ばれたり、「退屈の美学」と呼ばれてたりと諸先輩からは手厳しい評価もあったようだが、「杳子」のどんよりとした男女の関係、「妻隠」における幸せの夫婦の中の言い知れぬ不安という「第三の世代」の作品における男女関係をさらに内向に内向にと掘り下げていく面白さがあった。とくに「杳子」における精神を患っている杳子に対する彼の気持ちのついたり、離れたりとする危うい関係が巧みに描かれている。今から考えてみれば、当時の若者の中にはイデオロギーなんて関係ないと思っていた人も少なからず存在したわけで
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「平たいところにいる時に感じるんです。ときどきなんですけど、どうして立っていられるのかわからなくなって……」誤解をおそれずに言うなら、神経症のもつある一面を、圧倒的な筆力で描ききったたぐい希なる小説。読了後はヒロインの病がわずかにこちらに伝染し、食事や電車に乗るなど、当たり前の行為がひどく慣れないものに思えてくる。文章のうまさは本気で日本最高峰、暗い小説がきらいではないという人には特に大推薦。
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「杳子」の方が好き。
面白かった。
あと、よくこれだけ「感覚」をうまく表現できるよな・・・と感心した。
でも、話自体は教科書的・・・かな(汗)
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一度読んだら脳裏に焼きつく日本文学史上最高クラスの文体。
あとは「ヤンデレ」杳子に萌えられるか否か。もし萌えるなら、一生忘れがたい作品となるでしょう。
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軽い小説ばかり読んでいたので最初は中々入り込めず。
ノッて来たらスルスルッと読めました。
風景や情景の描写が気持ち良かった。
内容は重めやけど、読後感はちっとも悪かない。
日本語を楽しめる種で良かったと思いました
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授業の関係で、図書館で借りた。図書館のはカバーついてなかったので、今初めてこれでカバー画像を見た。怖ぇ。
古井由吉は2冊目。…のはずだが、1冊目に何読んだか思い出せない。しかもここにまだ書いてない頃だったっぽい。すーごい気になるが分かんないし、とりあえずこの本ではなかったらしい。
何となく、この曖昧さが不安感を募らせる。いまいちはっきりとしないぼんやりとした輪郭が、怖い。
というか、これで「つまごみ」って読めないよなぁ…。
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「杳子」は高校時代に読んで、特異なセンセーションを覚えた記憶がある。先日、30年ぶりに読み直してみると、ストーリーをほぼ忘れていたので、初めて読む本のように読んだ。高校当時、いかに具体的な内容を理解・消化できていなかったかがわかった。同時に、それにも関わらず当時の僕はこの小説に深く感動したのだ。ここに文学の面白さがある。感受するためには、理解は必ずしも必要ない。
「妻隠」は、初めて読んだ。「杳子」とは全然違った趣のストーリーで、作者の幅の広さを感じた。
特異な感受性は、梶井基次郎や安岡章太郎と並ぶ、日本文学の宝だと思う。
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古井由吉初体験。
いや、文学の奥深さを堪能した。
「杳子」なんていうのは今ならばありきたりの設定。
病んだ女と健常な男の恋。
でも古さを感じさせない。
神聖なものに触れたって気分。
もう聖域っていうか。
多分現代の作家が同じテーマで書いたらここまでのモノは無理でしょう。
情景と心理の描写が秀逸。
それでいてサクッと読ませる。
不快な感じもない。
うーん、素晴らしい。
芥川賞も納得。
もう一つの「妻隠」も設定としては普通なんだけど、そこからの展開があるようでないというか。
言葉にできない美しさでまとめ上げてる。
小説を読んだ、っていう読後感がすごい。
こういうの好きだなー。
色々ワイワイと語り合える小説じゃない。
「うん・・・上手く言えないけど・・・良いよね」みたいな、言葉数少なめで味わいたいタイプ。
他の代表作も即チェック決定。
まだまだ引き出しは沢山あると見た。
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この人の本は何冊か読みましたが、やはりこの「杳子」という中編?だけが際立ってアウラを放っているような気がしてなりません。
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おもしろかったか、と尋ねられれば、おもしろくはなかったと答える。読んでいる間の快楽はなかった。むしろ苦痛にも近かった。
でも十年近く絶対に読みたいと思っていた作家だし、じっさいに読んでよかった。陳腐な言い方だが、この読書経験をつうじて自分について今まで気づかなかったことが見えた気もする。
いずれにせよ快とも不快ともつかぬ不思議な感触を味わった。同属嫌悪とノスタルジーとがまぜこぜになった感覚、とでも言おうか。
この小説が描き出したのは、神経が外界に対してむきだしになってしまったがゆえに、日常生活をうまく送ることのできなくなった女と、その女をなかば理解し、もっと理解したいと願い、同時になかば欲望の対象として消費する男、このふたりのあいだの閉じられた関係性である。起伏にとんだ物語性はなく、その筆致の大半は「極限まで感性が研ぎすまされ、周囲でおこる事象のすべて―自然現象から対面する他人の表情・ことば・しぐさまで―に逐一全身が刺激されてしまうようになったとき、人はどうなってしまうのか」を女をモデルとして描くことに向けられている。
考えてみれば、この小説には「セカイ系」に向けられている批判のすべてが、おそらくあてはまる。そして当時向けられた批判も、それに似たものであったとも聞く。であるならば、この小説を「世界と個とが二項対立的になってしまい、あらゆる歴史・社会意識および世界と個人とをつなぐ社会的中間項への意識が欠落した、自慰的・自足的な閉じられた世界観」として鼻で笑う気になれないのは、どうしてなのか。うっすらとしていながらも由々しい同属嫌悪とノスタルジーを、読んでいる間中感じさせられたのは、どうしてなのだろうか。
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読みは〈ヨウコ〉で、「杳として行方が知れない」などの杳、神経を病んだヤンデレ女子大生と山男の関係を描いた作品。
主題の部分的な誇張は刺画でおなじみの技法で、この精神病も同じ、もし杳子が精神病であるなら、世の女性の大半は神経病み、少なくともそう思いこんでる。一般に女は自分を異常―健常でないことに矜持があって、逆に男は自身を健常だと思ってる。翳のある女性に憧れたことってあるでしょう。
そのルーツは終盤の対話にでる二人の人生観の違いにあって、少しも変わらない自分自身の反復、もしくは外の世界に応じる部分、どちらが自分にとっての人生か。
ところで、絶版のため定価320円がama●zonで600円でした。ガッデム
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著者の小説のなかで、とても読みやすい一冊。
「読みやすい」とは「文章」のことであり、内容のことではないことに要注意。
病んだ少女と彼女に惹き付けられる青年の話。
現在でも小説のテーマと成りうる題材が、1979年にもうこんなにはっきりと描かれ、こんなにも美しく深く書かれていたことに衝撃を受ける。
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両方とも面白かったが「杳子」のほうが個人的に好き。
読みやすく幻想的で、あの白痴の女を描き出す言葉の羅列が綺麗。
生々しくも惹かれる、妖艶さがあった。
精神病に犯されたものの純粋さと狂気は読んでいて酔う。
何度でも読み返したい作品だった。
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自由が人を不安定にする
狂気が人を大人にする
登場人物の不安定な心が
リアルにぶちまけられたような文章は
正直読んでて重かった