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あかね空 みんなのレビュー

文庫 126(2001下半期)直木賞 受賞作品

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みんなのレビュー156件

みんなの評価4.0

評価内訳

153 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

家族を外から支えているもの

2010/11/09 15:27

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

文章が美しい。同じ作者の他の作品と比べても、この作品の文章は一段と味わい深い。他の作品だと、あまりにも一流の職人とか一流の商人とかにこだわりすぎて鼻に付くことがあるのだが、この作品にはそれがなかった。すべての登場人物の喜怒哀楽がきっちりと描かれていて、人間らしさを感じた。それは快感と同時に苦痛を感じるほどだった。

魅力的なヒロインであったおふみが、愚かで子供を苦しめる母親になってしまったこと、母親の歪んだ愛情の注ぎ方のせいで、本来、仲良く育つことができたであろう三人の子供たちの間に、溝が出来てしまったこと、母親に一番可愛がられた長男が、その甘やかしのせいで、だめな男になること、この愚かな母親が更に次男の嫁をいじめること、それはもう、一行読むごとに、苦痛を感じずにはいられない。

どんなに深い理由があろうとも、どんなに無理もない事情があろうとも、児童虐待をしてはいけない、たとえば、子供を間引くのよりはましだろうとか、女郎屋に売り払うよりもましだろうとかいうことは、言い訳以前のことだ、たとえ、江戸時代であっても。と、私は、声を大にして叫びたい。たとえ心の底にはどんなに深い愛情があったとしても、だからって上辺は意地悪に振る舞ってもいいってもんじゃない、上辺の優しさも両方とも大切だよ、とも、言いたい。

そんなことわかっていても、自分ではどうにもできないままに、死を迎える、おふみ。そのとき、家族の絆を結び直す力が、外から働きかけてくる。

物語は、同じ作者の『まとい大名』の舞台だった徳川吉宗の治世の次の時代から、『かんじき飛脚』の舞台となる松平定信の寛政の改革の頃までの数十年間に亘る。天明の大飢饉があり、棄捐令がある。それらも主人公たちの人生に影響を与えるが、それ以上に、主人公たちに深い関わりを持つ老夫婦の存在が、強く胸を打つ。

永代寺門前の豆腐屋相州屋の主人が死ぬ場面で、私は泣いた。年老いた夫の手を、同じく年老いた妻が握り、声をかける。閉じた眼が、うっすらと、開く。何度か繰り返し、もう、眼が開かなくなっても、妻が声をかけると、少し力を入れて手を握り返してきた。だが、最後には、もう、何も返ってこなくなった。妻はまだ手を握っていた。

雨戸を閉じた相州屋の外を、若い豆腐屋の祝言の行列が通り過ぎていく。上方から来て、上方の豆腐を作って売り始めた定吉と、定吉の豆腐が深川の人々に受け入れられるまで支え続けた、おふみ。彼らを暖かく見守ってきた長屋の人々。相州屋の年老いたお内儀は、明り取りの窓を開けて、行列をのぞいた。心からの喜びでいっぱいになって、そして、悲しみでいっぱいになって、泣き崩れて。

長い物語の中程で、私は、「あっ」と、声を出して驚いた。あっ、この人は……!と、この物語を貫く仕掛けと、登場人物たちが結び合っている不思議な縁を想った。その後、読み進む間の興味の半分は、常にそのことにあって、最後にはすべてが明るみに出るのだろうか、と気になって仕方がなかった。だが、終わりが近づくに従って、だけどこれですべてがわかって大団円になったら、まるで、歌舞伎だよなあ、と思った。歌舞伎も好きだが、この小説にはそれは似合わない。そして、それで良かったのか悪かったのかわからないが、結局、歌舞伎のような大団円には、至らなかった。

それでも、最後までおもしろかった。定吉とおふみの子供たち、栄太郎、悟郎、おきみ、彼らひとりひとりの幼い心に、どんな悲しみや傷が残されたか、そしてまた、悟郎とその嫁に来るおすみとの間にも、幼い頃から、どんな深い絆があったかが語り尽くされる。

読者の方にはわかっても、登場人物たちにとっては、すべてが明るみに出るわけではない。それでも、物事は落ち着くところに落ち着いて、何度も引き裂けそうになってきた家族の絆がしっかりと結び直され、溝を埋めることができた。それで私は、ますます、縁の不思議さを想った。実際、縁というものは、そういうものだろうとも、思った。何か、ありがたいような気もした。それは物語だから、そんなふうにうまく運んだんだ、と言えばそれまでだけど。

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紙の本

あなたの心に熱き魂が戻ってくる熱き家族小説です。

2004/11/02 23:40

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作は現役の時代小説作家では乙川優三郎さんと人気・実力を二分しているといっても過言ではない著者の代表作と言われている作品で第126回直木賞受賞作品である。
受賞当時、同時ノミネートされた乙川さんが落選し山本さんが受賞されたので腑に落ちないと思ったものだが、本書を手にとってそれが杞憂だったことがわかった。

作風的には乙川さんが端正な文章で“武家もの”を得意としているのとは対照的に、著者の山本さんは力強い文章で“市井もの”を描いて熱く読者に訴えかける。
上方から江戸に出てきて豆腐やを開業した永吉とおふみ夫婦。味覚の違いにもめげずに商売は軌道に乗って行くのだが…

まず関西人として、主人公が関西弁(ここでは上方弁かな)なのが親しみやすい。

2部構成となっていているがこの構成も見事成功している。
第1部では子供が出来てから夫婦に少しづつ亀裂が入って行くのが辛くって仕方なかったけど第2部でその悩みも解消される。
親の死によってあとに残された子供たちがいかにそれぞれのわだかまりをなくして行くかを入念に書いている。

徐々にそれぞれの登場人物の思いが伝わってくる筋書きとなっていて、最終的に家族の絆を上手く描いている。
ひとりひとりの人物造型もきっちり出来ていて読みやすい。
特に妹の“おきみ”ちゃんがとっても健気な性格でいい。
あと、豆腐の値段や家賃等かなりリアルで臨場感を醸し出している点も見逃せない。
このあたりが他の作家と比べて描き方の秀でたところなのだろう。

小説を読む醍醐味のひとつに、普段日々の忙しさや現実の厳しさに追いやられた読者が当たり前のことなんだけど忘れがちになっている、生きて行く上でとっても大切なことを思い起こさせてくれる点があると思う。
本書なんか典型的なその例であって、本書を読まれて子供の幸せなくして親の幸せはないんだということを分からない読者っていないであろう。
きっと読者の脳裡に焼きつくのである。

とにかく、いつの時代も子供を思う親の気持ちは同じなんだなと再認識させてくれた点は作者に感謝したく思う。
仲の悪いようにも見えた永吉とおふみ夫婦が、子供たちのあいだのわだかまりが消えて結束できた事によって、理想の夫婦だったんだとわからせてくれたような気がした。

親が子供を思う気持ち、裏返せばこれは子供にとっても同じ事である。
なぜなら、長男“栄太郎”に腹が立ってた読者も最後にはきっと彼の気持ちもわかって本を閉じる事が出来るであろうから。
作者の筆力の高さを実感できた証拠であろう。

時代小説ってとっつきにくく感じられてる方が多いかもしれない。
確かに文章は現代物ほど早く読めない方もいらっしゃると思う。
ちなみに私もそうである。
しかしながら作者が伝えたいことは現代物となんら変わりない。
いや、むしろシンプルなのである。

そういう意味では、本作は時代小説というジャンルに留めずに“究極の家族小説”と捉えて読まれたらより楽しめることだろう。

トラキチのブックレビュー

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2004/10/14 14:58

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2004/11/07 14:04

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2004/11/30 16:34

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2005/01/10 04:10

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2005/02/08 18:40

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2005/07/07 22:21

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2006/01/18 20:18

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2005/11/15 00:55

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2006/03/23 00:29

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