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紙の本

大戦と伝奇とルパン

2023/08/28 18:01

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

ポーランドの没落貴族の末裔らしき男とかつて結婚していた女が、今は修道女となって、死んだと思われていた父と息子の消息を訪ねて南仏の田舎町を訪ねる。そこで彼女を名指ししたかのような、十字架にかけられるという予言もどきに出会う。彼女の元夫の影がちらつき始めるが、その元夫は第一次大戦中にドイツ籍であることがばれて収監され、脱獄後に孤島で隠れ棲んで、狂的な陰謀を練っていたのだ。
そしてこの島では恐ろしいことが起こり、彼女もそこに巻き込まれて運命との戦いに放り込まれる。
ルパンは、なかなか出てこない。というか、どこで出てくるのかとドキドキしながら読むものなのかもしれない。
主人公はこの謎の孤島で、自分や島民たちに襲いかかる恐怖と戦い、またなつかしき我が子に会うための冒険に、一人きりで突き進まねばならない。
女性主人公が、孤独と危険に立ち向かって、走り回り、這いずり回り、時に震えおののきながら戦うという展開が、冒険小説としてきわめて現代的ではないだろうか。彼女を駆り立てる愛と勇気の物語であり、母は強しと言うよりも、シンプルに強い女の物語と言っていいだろう。息子の愛犬である「万事OK」君の活躍も可愛らしいし、スピーディーな展開にも一役買っている。
もうこのままの勢いで最後まで行ってほしいと思い始めたりもするが、終盤になって島を訪れたルパンの活躍がやはり超人的だ。大戦当時の複雑な情勢や、伝奇的な背景、常人には想像の及ばないサイコパスな人間の動機や行動の解明についても、彼のような洞察力を持つ人間が必要だったろう。この酸鼻すぎる事件に幕を降ろすことができる、強靭な神経の持ち主も。
堀口大學の翻訳は、やくざで横暴な人物の口調を日本語に移すところで苦労した感じもあるが、いずれにしろ時代が移れば古びてしまいやすい部分なのだろう。

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2008/01/06 07:52

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2007/09/18 21:25

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2011/08/23 08:46

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2014/07/14 22:45

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2018/09/21 23:14

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