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松本清張傑作短篇コレクション 下 みんなのレビュー
- 松本 清張 (著), 宮部 みゆき (責任編集)
- 税込価格:836円(7pt)
- 出版社:文芸春秋
- 発売日:2004/11/10
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文庫
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紙の本
宮部みゆきではありませんが、結構読んでいたつもりの清張短篇。でも未読が多かった。そういう意味でも下巻が意外と楽しめました。支払い過ぎた縁談、なんて意外です
2007/10/31 19:31
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部責任編集本の最終巻です。実は今日もお茶をしながら友人と話をしていたんです。で、彼女が言うんですね、清張って本当に面白い?って。彼女、『或る小倉日記伝』を読み直したばかりなんだそうですが、これで芥川賞はないだろう、っていいます。『点と線』も再読したけれど、最初の時ほど楽しめなかった、って。
私は答えたんです、清張に面白おかしさを求めちゃいけないんじゃないかなあ、どれも苦い結末ばっかりだし。文章だって、ゴツゴツしてセンスがいい、とかそういうんじゃあない。それに主人公に感情移入しにくいし。もっと言えば、出てくる男、皆馬鹿だし。でも、その愚かな男たちがどうなる、何でこんなバカなことをしたんだろう、いや最後までこのままでは、っていう不快とも何ともいえない気持ちで読んでしまう、っていうのを面白い、っていうことはできるかも。
少なくとも、そこにいる男も女も絵空事の存在ではなくて、私たち自身、或は身の回りにいる人、或は今日逮捕されたあの男だってそうかも、って思わせることは確かでしょ。ただし、清張は狂気や異常心理を書くのは下手だったかもしれません。手詰まりになった犯人が正気を失っていく様子は色々なところで書いていますが、単なる殺人鬼を登場させることはなかったと思います。
この巻では、最後の方に掲載された「菊枕 ぬい女略歴」が、自分の思い通りにならないことから狂的な行動に走ってしまう女性を描いて哀れを感じさせます。「生けるパスカル」も主人公の性別は異なりますが、似ているかも。欲に取り憑かれた資産家を皮肉交じりに描く「支払い過ぎた縁談」は、微妙な笑いを誘います。
これって自分のことを書いたのかなあ、と違う意味で意外に思ったのが「骨壺の風景」と「火の記憶」。「帝銀事件の謎――(日本の黒い霧)」は記憶通りでしたが、「西郷札」は違っていました。やはり、好きと思った相手に真情を吐露しないのは愚か、ということでしょう。
カバー後の紹介ですが
「清張の傑作短篇を宮部みゆきが選
ぶシリーズ最終巻。昭和史の謎に
精力的に取り組んだ清張が、権力
に翻弄される人間を描いた「帝銀
事件の謎」「鴉」や、絶妙なタイト
ルとストーリーの傑作「支払い過
ぎた縁談」「生けるパスカル」「骨壷
の風景」。さらに横山秀夫ら松本清
張賞受賞作家が推薦する名作「西
郷札」「火の記憶」「菊枕」も収録。」
となっています。目次を写しておきますが、分りやすいように( )内に初出を書いておきました。昭和20、30、40、50年代から万遍なく選ばれていますが、あまり時代差を感じさせません。今でも、清張作品の殆どが文庫で読めるのは、やはり人間の真実に迫っているからでしょう。
第七章 タイトルの妙
前口上 宮部みゆき
支払い過ぎた縁談 (週刊新潮S32・12・2):良縁に恵まれなかった資産家の娘に、やっと舞い込んだいい話・・・
生けるパスカル (週刊朝日S46・5・7~7・30):妻をマネージャーにしたためにお金も自由にならない画家は・・・
骨壺の風景 (新潮S55・2):祖母から聞かされていたのは、仕事もせずに賭け事に現をぬかす父のこと・・・
第八章 権力は敵か
前口上 宮部みゆき
帝銀事件の謎――「日本の黒い霧」(原題「画家と毒薬と硝煙」文藝春秋S35・8)より:何故、途中で捜査方針が大きく変わってしまったのか
鴉 (週刊読売S37・1・7):うだつの上がらなかった男が、唯一輝いたのが組合運動の時だった・・・
第九章 松本清張賞受賞作家にききました
「真贋の森」と「西郷札」 山本兼一 (2004年・第十一回受賞)
「菊枕」と思い出の高校演劇 森福都 (1996年・第三回受賞)
「火の記憶」の記憶 岩井三四二 著 (2003年・第十回受賞)
『地方紙を買う女』もどきを書いてみる 横山秀夫(1998年・第五回受賞)
西郷札 (週刊朝日春季増刊号S26・3):義理の兄に嫉妬する官僚が仕掛けた罠を、歴史的な存在と絡めて
菊枕 ぬい女略歴 (文藝春秋S28・8):夫の無能に見切りをつけ、俳句に生きる美女の行動は・・・
火の記憶 (小説公園S28・10):結婚した夫が、ようやく口にしたのは自分の生い立ちと母親のこと・・・
終わりに 宮部みゆき
で、宮部がこのシリーズを締めくくるのに選んだのが
いま、ざっと目を通してみると、これらを書いた当時の生活環境や、編
集者その他の人々の顔や、取材に行った土地などの情景が浮かんできて、
なつかしい思いがする。
昭和四十九年三月
松本清張
という文章です。
本文イラスト・いしいひさいち 本文デザイン・関口聖司 カバーデザイン 関口聖司は上、中巻と同じです。
紙の本
宮部みゆきさんの魅力的なガイドに導かれて、清張ワールドをめぐる旅の醍醐味を堪能しました。
2004/11/15 03:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきセレクション版・松本清張傑作短篇集の3冊。下巻は、次のような構成になっています。
第七章【タイトルの妙】……前口上(宮部みゆき)、「支払い過ぎた縁談」「生けるパスカル」「骨壺の風景」
第八章【権力は敵か】……前口上(宮部みゆき)、「帝銀事件の謎」「鴉」
第九章【松本清張賞受賞作家にききました】……「真贋の森」と「西郷札」(山本兼一)、「菊枕」と思い出の高校演劇 (森福都)、「火の記憶」の記憶(岩井三四二)、『地方紙を買う女』もどきを書いてみる(横山秀夫)、「西郷札」「菊枕」「火の記憶」
終わりに(宮部みゆき)
なかでも読みごたえがあったのは、戦後昭和史検証ドキュメント『日本の黒い霧』からとられた「帝銀事件の謎」と、清張の記念すべきデビュー作「西郷札」でした。
前者は、帝銀事件が発生してから平沢貞道が犯人として逮捕されるまでの警視庁の捜査が、ある壁にぶつかったと考えられること、その突き当たった壁の正体を推理、検証していく論考です。“真相は藪の中にあり”とでもいう事件の謎、捜査陣が方向転回せざるを得なかった(と考えられる)背景には何があったのか。そのことが、鋭く核心に迫っていく推理によって検証されていく様は、実に説得力がありました。ぞくぞくするような面白さと衝撃を感じました。
また後者の短篇は、明治時代初頭に起きた「西郷札」(さいごうさつ)事件に題材をとり、その裏に秘められたひとつの悲劇を描いた作品です。一攫千金を狙う人、嫉妬に駆られる人、悪意にはめられた人、そうした人たちの心理がリアルに迫ってきて、しみじみとした哀しい読後感に誘われました。確か初めて読んだ清張作品がこれだったと思いますが、久しぶりに読み返してみて、「うーん。これは名品だなあ」と心を揺さぶられました。
横山秀夫さんの「『地方紙を買う女』もどきを書いてみる」も面白かった。清張の「地方紙を買う女」、私だったらこんな話を書いてみるという趣向のショート・エッセイ。“清張の「地方紙を買う女」の主題による横山秀夫版・変奏”と言ったらいいでしょうか。ひねりの利いたその趣向が楽しかったです。
あと、短篇「骨壺の風景」にもしみじみさせられたのですが、これ、清張さんの自伝風の味わいがあるんですよね。最近購入した松本清張の『半生の記』も、いずれ読んでみようと思っています。
紙の本
おもしろい
2020/08/13 07:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張さんの短編で、面白く興味深い作品が多かったです。宮部みゆきさんのセレクションということにも、興味を持ちました。