紙の本
古代中国の晋の宰相、士会の生涯を描いたものです。
2009/03/07 21:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代中国の晋の宰相、士会の生涯を描いたものです。
時代は春秋。
群雄割拠の時代。
知力、兵略、人望とどれをとっても申し分ない士会は、順調に出世をしていきます。
本書を読んでいると、戦いの場面の描写が、時代背景と非常にマッチしているため引き込まれます。
能力がある士会は、それだけで出世したわけではありません。「徳」の力が大きいのです。
なにができるのかではなく、どうするのが正しいのか、が判断基準なのです。主人公の判断基準は、それに尽きるのです。
特に古代中国という背景があるため、その判断基準はよりリアリティをもってくるのです。
現代でそれが通用するのか?と言われれば、考えてしまいますが、正しいことが通用する世の中であってはしいものです。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
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主人公士会の、誠実に生きることで一国を任されるまでになる活劇。ここに趙盾という人物が出てくるのだが、これは『孟夏の太陽』という短編連作集と合わせて読んで欲しい、是非。多様な視点、それぞれの思いに従った結果、社会が食い違いや融合を予測できない形で紡ぐのだと実感できる。悪く言われる人物、なんでそうしちゃうかな、と感じさせる行動があっても、その裏側にはその人なりの思いも感情もある。そして、決して蔑ろにはできないことなのだと感じる。
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前630年頃。士会の話。随を領地としたので随会ともいい,後に范を領地としたので范会ともいう。士蔿の孫で晋の正卿となった人で,途中,秦に亡命し秦の臣として引き立てられた時期もあった。先軫,先且居とならぶ晋の名将軍。
文公(重耳)の漂流時狐偃,先軫が中心であり,士氏は司法家のため恵公(夷吾)がに従わざるを得なかったため重耳の帰国後は不遇でした。武術,外交面で優れているところを先軫に認められ,やがて文公の目にも止まり,車右に抜擢され,緩やかではありますが昇進を続け,最終的には宰相まで登りつめます。
晋の宰相である荀林父が首座を位2位の郤缺に譲った時の話。
反逆者(郤缺は一度晋公を攻めて殺している一味にいた)の子は宰相になれぬと言っていた郤缺が徳を積み続けて遂に人臣の最高位に登った。士会は我が事の様にうれしい。さっそく賀辞をたずさえて郤缺邸に行った。郤缺は士会を見つけると,席を降りて鄭重な礼容をしめした。士会が客席に座るや,満堂の族人に『隨会どのは私の命の恩人であり(郤缺は晋公を攻めた時に瀕死の重傷を負ったが,士会は郤缺とはしらず助けていた),子の克を隨会どのに仕えさせるつもりである。旗鼓(軍事)のことは一族をあげて隨会どのに従う。』と大声でいいきかせ,士会にむかって低頭した。するとすばやく席をおりた士会は『旗鼓は徳にまさることが出来ない。わたしは郤氏の徳に従う』と言った。このあたりの士会の人を思いやる感じが好きだ。
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晋の文公(重耳)が即位した後くらいからのお話、主人公は士会。重耳、介子推、と読んでこれを読み始めてみた。
この人がどういう人として歴史に残っているのかを知らずに読んでいるので結末がわからないのだが、当時の「礼」に対する考え方が見える点は興味深い。戦争でも外交でも、礼が伴わないと一時の成功を結局継続させることができない。内部の組織もまとめていくことが出来ない。
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中国春秋時代の晋で混迷の乱世で、生き抜いた兵法家の士会の物語。あまり高い階層の出身でもない彼が如何にして宰相まで登り詰めたか。晋は、長期間にわたり秦、楚と戦い、近隣の諸国と外交上での深謀遠慮を駆使して、大国として数々の大戦をくぐり抜け、国を治めていく。
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宮城谷さんにはまった1冊。
春秋時代の晋の国。法に携わる仕事を生業としている没落寸前の家に生まれた士会のお話。 下級武将様ですね。
士会かっこよすぎる。
その一言に尽きる。
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まず上巻。
流れるような文章のお陰で結構スラスラ読めました。
とは言っても登場人物の多さには若干辟易しましたが。
尊敬する上司は尽く命を落とし、自分自身が精進しなければならない切り開ければならない人生は大変ですね。
只今下巻を読書中です。
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中国春秋時代最高の宰相と言われる晋の士会の物語。文公が覇者となってからの晋の歴史とともに、士会の歩んだ足跡が描かれる(上巻)
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下巻まで読了。
春秋時代の晋の宰相にして、天才的な兵略家である士会を主人公に据えた歴史小説。
詳細な史料の読み込みから成る物語の説得力や、登場人物たちの魅力はもちろんのこと、それらを描き出す文がまた美しい。
硬派で感情を抑えた筆致はいつものことながら、たとえば、士会が六十歳のときの内心の声として、
「世知や常識にくるまってしまう自分を憎悪し、みずみずしさの残った感覚の棘で虚空を搔(か)きたい。傷ついた虚空から何がしたたり落ちてくるのか、それをみたい。蒼天のしずくが地表に落ちて赤い花と化す、そのようなときに接したい」
と表現した文など、詩のような情趣も、本書では際立つ。