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紙の本
「明るさは滅びのしるし」という言葉(太宰)から読者を解き放ち、ほっとさせてくれる短編集
2009/05/28 07:54
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
太宰の短編「走れメロス」は教科書で読んだ方も多いだろう。死を意識した作品が多い中にあって、本作は健康的な作品だ。太宰は山梨から東京の三鷹に移り住み、精神的に安定していた。この頃に書かれた短編を中心にして9編が本書には収められている。
「走れメロス」にはほっとする。読者は、作品にほっとするというよりも、太宰に対してほっとするのである。このような健全な作品をものにすることができた時期もあったのだなあと。
もっとも、友人の檀一雄を借金とともに旅先に残して東京に舞い戻り、井伏鱒二と将棋を指していた太宰。その太宰が、怒り心頭の檀に言い放った言葉「待つ身がつらいかね、待たせる身がつらいかね」が走れメロスにつながる話だと聞けば、いかにも太宰作品らしさがにじみ出てくる。良くも悪くも性格破綻者の面がある太宰。
ほかにも、「女生徒」などは、思春期の娘の言葉と感性で書かれており、男性にここまで描写できるかと感心してしまう。女性によっては、「あんな風には思春期の娘は言葉を用いないわよ」となるようだが。それでも、あたかも若き文学少女の手になるものであるかのような一人称語りはまぎれもなく太宰の技だ。太宰の世界ドがここにもある。
「駈込み訴え」など、口述筆記で奥様に書き取らせ、しかもほとんど言いよどむことがなかったというのだから、才能のほどがうかがえる。
「人間失格」や「斜陽」などを読み終えて、もう少し軽めの作品に手を伸ばしたいような人にはお勧めできる短編集と思われる。
紙の本
走れメロス以外にもすばらしい短編がつまっています
2001/02/08 13:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
「走れメロス」は国語の教科書に載っていた。私が中学生のころ読んだ記憶がある。友情の物語だが、こんなすごい友情あるか?と感動を越えて、ちょっと信じられない気がした。
だから「走れメロス」はそれほど好きな方ではない。もともと「人間失格」で太宰を知った私は、この2作を同じ人が書いたとは思えなかった。
でもこの本を読んでいくうち、私は思った。やはり太宰は天才だと。
特に「女生徒」。女性の独白体の形式によるこの作品は、ほんとうに一人の女生徒が書いたように生き生きとしている。
このほかにも難解ではない太宰の作品がつまっている。その太宰らしいリズムのある文章を堪能できる。
紙の本
読みやすい短編集
2022/06/23 08:53
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投稿者:いけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ダスゲマイネ、走れメロス、帰去来、故郷を読了。女生徒も途中まで読む。富嶽百景は高校の教科書で読んだ。
脚注などなく、どの短編も読みやすかった。
印象に残ったのは、帰去来、故郷。太宰治の実家青森津軽金木町の話。実家とは自身の事件が原因で、疎遠になっていた。しかし、北さん中畑さんという面倒を見てくれる人たちのおかげでなんとかやっていくという話。
太宰治にとって、この故郷との関係性も何か大事な要素になっているのかも知れない。
紙の本
誰もが知る作品
2020/06/25 21:48
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投稿者:のび太君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「走れメロス」は、自分であれば主人公のようにはできないと思いつつも応援しながら読んでしまう作品である。
紙の本
簡潔にして繊細
2016/09/28 15:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポージー - この投稿者のレビュー一覧を見る
九編からなる短編集。特にダス・ゲマイネ、満願、富嶽百景がよかった。物語は暗かったり明るかったりとぼけていたりするけど、全体にさっぱりした淡い光が射しているようでそれが心地良い。
走れメロスは純粋すぎてちょっととまどっちゃうが、文体に注目。四字熟語や七五調を多用した文章は引き締まっていてリズムがいいので、読むこと自体だけで楽しい。
太宰のダメ人間ぶりも笑える。自身のクズっぷりをさらけ出す感じは、今で言うなら芸人さんのエピソードトークみたいな。その後自殺しちゃうことを考えると軽い話ではないが。
紙の本
走れメロス
2002/03/14 12:52
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポンタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今思うとあんまりよい作品ではないと思うのだが、こう言っては失礼だが。どうもこの題名を見ると幼いころの記憶が頭から離れないし、それがまた懐かしい。幼いころはみんな純潔だった。そんな懐かしさにもひたれる真の友情小説。