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紙の本

20世紀の多様な前衛芸術をシャープに描出!

2005/08/25 10:27

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の多木浩二氏は、内外に渡る近現代の哲学・美術・建築・文学・写真などの領域について鋭利な著作を多く発表している批評家である。その一連の仕事には、文化についての鋭い洞察と理論的な裏づけが伴い、強い説得力がある。
本書は、20世紀文化を多角的に検討する目的で書かれた寄稿文を纏めて一書としたものである。雑記に寄稿されたものが中心となっているので、ややまとまりに欠けるところがあるものの、それがかえって著者の多方面の関心が反映されて興味深いものとなっている。
第一部では、イタリアで始まった未来派運動、ロシアのアヴァンギャルド、イタリアやメキシコの現代建築などのモダニスト運動に関わる領域が紹介されている。いずれも、未来派運動の担い手のマリネッティやボッチョーニ以外は、一般にはあまり知られていない人物や機関が取り上げられている。
例えば、本書のカバーを飾っているエル・リシツキーは、1920〜1930年代に活躍したロシアのグラフィックデザイナーで、本書に載せられて作品の写真を見ると、正方形を多用したシンプルで洗練されたデザインには、今から70年以上も前の作品とは思えない斬新さを感じる。ロシア・アヴァンギャルドは、近年様々な作家や作品の再評価が進んでいるが、このリシツキーなどももっと注目されてもよいアーティストと思われる。
この他に、建築・映画・絵画などの分野でモダニズムに立脚した様々な作品が紹介されているが、いずれも19世紀末の装飾過剰で無駄の多い文化様式を排して、機能的でありながらシンプルな美を目指しており、改めてモダニズムの現代的な意義を感じさせる。
第二部では、政治的・文化的な抑圧状況から生まれた様々な思想や芸術が扱われている。ここでは、ナチスドイツによってゲットーに押し込められ死の恐怖に怯えるユダヤ人の日記、歴史の記憶が建物に刻まれ訪れた人に謎めいた印象を与えるイタリアの都市トリノ、メキシコの女性シュールレアリストの魔術的な絵画、ヴァルター・ベンヤミンが書物の中で愛惜している時代遅れの古い家具が醸し出すノスタルジックな室内世界など雑多なものが論じられている。
モダニズム運動の勃興を論じた章と比べ、やや統一感に欠け著者の主張が読み取りにくいところがあるが、著者の言葉を借りれば、「二十世紀は人間を叩きのめすにもたけ・・・人間を非人間的状況に追いやった。そうした抑圧のなかに、いくつかの真空のようなスポットがあった。そこで、これまでにはなかった思想や芸術が芽生えた」という観点から、これまであまり注目されて来なかった作品が論じられている。
続く第三部では、モダニズム建築を受け継ぎながらも、それを乗り越えて活躍している日本の建築家たちの多様な作品と考え方を紹介している。
以上、本書の概略を紹介したが、著者の多方面にわたる知識と関心には今更ながら驚かされる。
ただ、本書には釈然としないところもある。それは、20世紀の様々な前衛運動は何故、挫折したのかということが必ずしも解明されていないということである。一般には知られていない20世紀前衛運動とその作品が多く紹介されていながら、その挫折が明らかにされないと、歴史に果たした役割やその限界が真に理解できないと思われる。やはり、終章で、簡単にでも触れておくべきであったであろう。
とは言え、本書は図版も多く掲載され、多木氏の明晰で論理的な文章と相俟って極めて刺激的な20世紀文化論となっていることは言うまでもない。

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