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家宝として代々伝わるぬか床。
叔母が亡くなりそれを引き継ぐキャリアウーマンの久美。
しかしあるときぬか床に卵ができて・・人間がでてきた。
ほんわかファンタジーと思いきや、事態は思わぬ方向に向かって・・。生命の誕生や、他者と自己、圧倒的な孤独と増殖、クローン、などなど折り込まれた壮大なテーマに。
最初はなんのことか分からなかった挿入シーンも後から考えるとなんともエロティックな、女性らしい表現で美しかったです。神話のような作品。
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(2006.01.28読了)(2006.01.15購入)
大山鳴動してネズミ一匹と言う印象の残る作品です。前半は、話が大きく膨らんでいくようで、どんどん話に引き込まれていくのですが、後半になって話が狭くなって、膨らんだ話が収拾しきれずに終わってしまったような感じです。
島に集まってきた、ペリカンを探す人たちは結局どうなったのでしょうか。ぬか床を沼地に帰して、かき回す人がいなくなったらどうなるわけでしょうか?
謎解きをしてくれる本、解説をしてくれる本が必要そうな本です。作者はいったい何を表現したかったのでしょうか?
神さんに聞いてみたら、結婚などする気のない二人が大自然の中で、自然の本姓に目覚めて男と女であることに気付き、結ばれると言う新しい形の恋愛小説じゃないのかな?というのです。
僕の解釈は、無性生殖で生き延びてきた鏡原の者たちが、上淵久美と風野さんを通して有性生殖に切り替えたと言うことなのだ、ということです。
「私(上淵久美)の両親は私が大学の頃交通事故で共に死んだ。私には兄弟がいなかったので、以来家族はない。正式には三人家族だったが、どういうわけだか人の出入りの多い家だった。マンションで、さして広いところでもなかったのに、遠い親戚のような人たちがしょっちゅう出入りしていたように思う。母は三人姉妹の長女だった。」(9頁)
三女の叔母、時子さんが死亡し、時子さんが引き継いでいた家宝のぬか床が次女の加世子叔母から渡された。「その昔、駆け落ち同然に故郷の島を出た私たちの祖父母が、ただ一つ持って出たもの、それがこのぬか床。」(12頁)
手入れを怠ると文句を言ってくる。そのぬか床は、長女が引き継ぐことになっている。時子叔母のマンションごとぬか床を引き継いだ。ある晩、ぬか床をかき回していたら、卵が現われた。「取り出してしげしげと見入っていると、突然牛ガエルの鳴き声のようなものが大音響で辺りに鳴り響いた。私は慌てて卵をぬか床に埋めた。途端に鳴き声はぴたりと止んだ。」(18頁)
卵が現われてから50日になろうかという日の朝、卵にひびが入っていた。翌日の朝、男の子が体育座りでぼうっとしている。半分透き通っている。卵から生まれたらしい。(卵の大きさと子供の大きさがつりあわないけど。ファンタジーだから・・・。)
幼馴染のフリオに相談し、合わせたらフリオと仲良しだった光彦だという。光彦は、フリオが引き取ってくれた。
ぬか床から現われた二人目は、三味線を弾く和服の女だった。名前はカッサンドラ。目鼻は無く口がある。目は体とは別になっていた。中空に浮かんでいる。(70頁)
時子叔母さんの友人、木原さんから、父母及び時子叔母さんの死因はいずれも心臓発作であることを告げられた。また、ぬか床の成分について風野さんに相談していたことも教えてもらった。風野さんは、私と同じ会社の研究所勤務の人だった。
ぬか床、ひどい匂いがするので、加世子叔母さんに電話で相談すると芥子粉を入れると聞いている、と教えてくれた。両親の死因の話をすると、ぬか床を島の沼地に返しに行く途中で死んだという。(113頁)
芥子粉を買って、ぬか床にかけたら、カッサンドラは消えた。(116頁)
(話が面白いのはこの辺��でで、ここから先は、時子叔母さんの日記やら、島の異世界の話やらで話しの焦点が定まらず、結末が平凡すぎて、???)
☆梨木香歩さんの本(既読)
「西の魔女が死んだ」梨木香歩著、楡出版、1994.04.19
「春になったら莓を摘みに」梨木香歩著、新潮社、2002.02.25
「家守綺譚」梨木香歩著、新潮社、2004.01.30
「村田エフェンディ滞土録」梨木香歩著、角川書店、2004.04.30
第16回(2006年) 紫式部文学賞受賞
(「BOOK」データベースより)amazon
始まりは「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を探る書下ろし長篇。
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亡くなった伯母から譲り受けた、しゃべるぬか床。得体の知れないぬか床から発生する妖しげな人タチ。人類はどこから発生してどこへ行くのか。生まれてきた意味。死んでいく理由。そんな感じの壮大なファンタジーと一風変わった恋愛模様。好きな人は大好きだと思う。割と読みやすいところと、途中から難しさを帯びてくる文章を我慢して読んでください。最後は感動します。
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自家製ぬか漬けをつくろうと、いろいろ調べているうちにあたった小説。確かにぬか床は生命の沼なんだなー。でも、ぬか漬け食べるたびに、この話を思い出しそうだ。自分のぬか床から卵が出てきたらどうしよう・・・。
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ぬか床をめぐるファンタジー。梨木果歩さん、入り込めるまで時間がかるけどコレははまった。久美子が家庭に対して考察するところが面白い。
「家庭を営める、ということは、〜家族の成員のそれぞれの生理がぶつかり合う場なだけに、どこか力の抜けた、ある種の感度の鈍さ、感受性の低さが求められる」
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今までの梨木香歩と全然違う!まず文章の感じが軽いしバイオがあんなに深く絡んでくる哲学も今までなかった。でも相変わらず梨木風なんだよね。
今回も私のストライクゾーンばっちり。
でも最後の、生物が生きているのは進化するためではなく「最初の細胞の遺伝子を生きながらえさせること」っていうのはちょっと引っかかったかな。それなら死はいらないし、有性生殖もいらないんじゃない?チャンスが増えるってこと?そっか・・・でもどんなに形を変えても、その遺伝子さえあればいいというのはまたどうなの?定義的には生きているけど、もうその生物にとって主役ではないかもよ?
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キャラクターは魅力的。お話も面白いのだけれどいわゆる尻切れトンボで終わっていて、ナゾははっきりと解明されないままなのがはがゆい。また、途中の科学的な解説のところが嘘っぽく感じてしまう(それなりに調べているか実体験があるかなのだろうけど)文体が難。
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始まりは「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を探る書下ろし長篇
【その他読んだ本】
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酵母菌とかぬか床とかちょっと理系っぽい臭いがする。梨木香歩の文章はすきだ。現実と、シマの話の同時進行
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今までの梨木さんの作品とはちょっと雰囲気が違います。バイオファンタジー?ぬか床が出てくるたび怖くてドキドキしました。
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2007/12/16
ぬか床で、ファンタジー?
単なるぬか床の不思議、だけで進んでいく前半はかなりさくさくと読めたのだけど、後半から、だんだん「生命と」は、という小難しい展開になっていく。挿入されている寓話もまた難しい…いろいろな解釈ができるのがまた魅力のひとつではあるのだろう。
淡々としているのに、ここまで小難しくてとっつきにくそうな話を最後まで読ませる文章力はさすが。ぬか床から派生した酵母の話やらなにやら、科学的な部分もそれなりに楽しめました。
時間を置いてから読み直してみるかな…
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わーほんとにぬか床小説だ。ぬか床が芯のところでどっかり座ってる。すげーわけわかんなくて面白かった。久美ちゃんがすき。やさしい世界とどこかに毒をもつ世界が一緒にあるような。ぬか床がグローバル。ほんとうにグローバル。ぬか床効果すごすぎる。
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ぬか床から人間が現れるという、奇想天外なところから始まる、
ファンタジーといえば、ファンタジー。
梨木さん、すごい小説を書かれたなあと思いました。
誰しもが本を読むときには、きっとこんな感じのところにたどり着くのだろうなと、ある程度予感を持って読み始めるのではないかと思いますが、
このお話の場合、予感しなかった出口に連れて行かれて、思いもかけなかった光景を見せられたという印象があります。
生命とかジェンダーとか、自然とか人間の絆とか、
この世界のあらゆるものが、根っこの部分で繋がっているのだなと、そんな風に思わされました。
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ぬか床ファンタジー。
お話は面白いんだろうし、文章も綺麗なんだけど、でもこれ菌なんだろう?って思うと、ちょっとテンション下がる…。
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ファンタジーだとかホラーだとか、最初に教えておいてくれれば、幽霊だの魔法だのが出てきても動揺しませんが、ごく普通の現実の話かと思っていたら非現実がまぎれこんでくるという形で書かれたものは、往々にして消化不良になります。
これも、そこまで行くか!?ってくらい不可思議なことが起こるのでびっくりでしたが、この人の本は以前に『からくりからくさ』を読んでいたので、今回はそれなりについていけました。この本が最初だったらダメだったかも。
ただ、最後まで読むことはできましたが、ホラーでもファンタジーともつかないこの話をどう読んだらいいのかというとこまでは到達できませんでした。
生命の起源とか命の存在意義とか、色々なことを「不思議な出来事」が抱え込んでいるんですが、それで作者が何を伝えようとしているのか、それを受け止める用意が私の中にないようです。
しばらく時間をおいて再読すれば、また違う印象を持てるかもしれません。