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紙の本
冒険小説を捨てた清水の作品は、たしかにうまいけれど、埋没するしてしまいますよね。でも、あとがきのことば、これは、ないんじゃあないかなあ
2006/04/28 19:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
へえ、志水ってもうお爺さんなんだ、なんて思いましたね。私は、ちょうど彼が『餓えて狼』でデビューしたときからのよくない読者なんですが、イメージ的には一回りくらい年上の人だとばかり思い込んでいたんです。ま、北上次郎が絶賛した『背いて故郷』あたりから普通小説への傾斜が強くなって、私としては読書の対象にはならなくなってしまったんですが、それでも戦後生まれの作家だと思っていたんです。
で、なんでこんなことを書くかといえば、この本がそういった普通小説ばかりだったら読む気しないしな、とあとがきをチェックしたせいなんですね。で、驚いた。だって
「わたしの小説、とくにこの本に収めた作品などすでに過去のものである。過去のスタイルであり、過去の価値観という畑でつくりだした作物にすぎない。(中略)わたしたちの時代は終わろうとしている。自分たちのたどってきた道とは一体何だったか」「この本を手にとってくださった方に心からお礼を申し上げます。この手の作品はこれが最後になります。」
こんなことが書いてあるんですよ。これじゃあ遺書じゃないか、なんでこんなに弱気なんだろう、アイデンティティの喪失?なんておもいましたね、たまたま上野千鶴子編『脱アイデンティティ』を読んでいたせいではあるんですけれど、自分と周囲との距離がとれなくなっちゃてるんじゃない?なんて思いました。で、年齢チェック。ゲッ、1936年生まれっていったら、ジーサンじゃん。
ま、芸術家はいざ知らず、フツーのサラリーマンやってた人だったら、呆けが始って、だいたいあと五年もすれば本格的に体調を崩し始める、そういう年齢なんですね。そうか、冒険小説の時代、を背負ってきた人たちも、もう半分棺おけに足を突っ込み始めたんだ、なんてしみじみ思いました。そんな寂しい本の装幀は奥沢光雄、写真AKIKO SEO/A.collection/amana。
そう思ってみるとBK-1の内容紹介「人生の終着が見えてきたとき、人は何を思うのか。あぶない橋と知りつつ犯罪に手を染める初老の男、酒乱の父を殺してしまった秘密を共有する姉弟…。人の弱さや哀しさ、たくましさを独特の筆致で描き切る7篇を収めた短篇集。」は限りなく正しいのかななんて思ったりもして・・・
今井啓吉、竹田元治、上野孝允の三人組みが犯した犯罪は「トマト」、地方で土建業を営む東山秀策の前に現れた森脇忠志は借金を返せと迫って「香典」、さびれた商店街でひっそり自転車屋を営む中井隆治は肝臓を悪くした。退院して散歩する彼が気にしていたのはハナダイコンの「むらさきの花」。
20年ぶりの帰京した延代は母・金本織江の墓から骨を写そうと「もう来ない」、癌が再発した姉を病院に訪ねた真幸が甥から聞かされたのは「ひょーぅ!」、北海道でひとりリゾートタウンで管理人をしている康治のもとに娘が結婚相手をつれてきて「雪景色」、知人の通夜に行く為、久しぶりに東京に出た郁雄が思うのは地道に生きた父の人生「もどり道」 。
それに、問題の「あとがき」。
志水辰夫ですが、1936年年高知県生まれで、雑誌ライターなどを経て、1981年『飢えて狼』でデビュー、ということは当時既に45歳。私のイメージでは三十代後半だったので、それがそのまま誤解になっちゃっていました。『背いて故郷』で日本推理作家協会賞、『きのうの空』で柴田錬三郎賞を受賞だそうですが、なんていうかその頃から作風が人情冒険小説風になってきています。
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