紙の本
プルプルの可愛さに、大甘の★五つ。またまた早稲田大学文学部のお通りだ、それにしても女性作家の殆どが早稲田出身じゃないか、っていう錯覚に陥りますね
2006/12/15 20:40
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
集英社らしからぬ、とまでは言いませんが、これが新潮のクレストブックのカバーといわれても納得しそうな素適なカバー装画です。ま、注に、装画 勝本みつるとあるので、画と書きましたが、どう見てもオブジェで、だからこそ勝本の名前に続いて、撮影 松浦文生と書いてあるんだと思うんですね。
こういうところは、きちっとするのが出版社の役目だと思うんですが、どうでしょう。それにしても愛らしいオブジェで、洋画家の小杉小二郎、或は版画家の山中現、或はクレストブックで数多くのスカルプチャーを手がける三谷龍二といってもとおりそうな、心温まる作品です。ついでにデータ的なことを書いておけば
装幀 岩崎誠司
装画 勝本みつる
撮影 松浦文生
編集協力 (有)ぱぺる舎
構成は大きく五つに分かれますが、各々はさらに様々な媒体に掲載された小文からなっています。大項目だけを書き出せば
・数の不思議に魅せられて (10)
・「書く」ということ (16)
・アンネ・フランクへの旅 (5、紙がカラー)
・犬や野球に振り回されて (9)
・家族と思い出 (21)
です。( )内の数字は、その中に納められた小文の数で、全部で61にもなるので、初出は、とても書ききれません。最初の「『博士の愛した数式』をめぐって」が書き下ろしですが、残りは新聞、スポーツ新聞、PR誌、雑誌など様々で、頁数も10頁から1頁までと変化に富みますが、基本的には短いものが多いです。
電車に揺られながら、隣に座ったオバサンたちの姦しい声に苛々しつつ読んだせいか、それとも大嫌いな数学のせいか、「数の不思議に魅せられて」では、小川の数学への理解は私などの及ばない立派なものだ、とか、日本の数学者も捨てたもんじゃあないな、と思ったり、考えは右往左往。
書く、というところでは、作家というのは対談や講演をかなりするものだ、とか、小川の本がフランスで翻訳されて出版されているというのは凄いな、それにしても案外、小川は海外に行っているんだ、でもやっぱりどうしようもないのは犬のラブちゃんだなあ、迷い込んだ子犬、あげなくてもいいのに、などと思った次第。タイガース・ファンと宝塚ファンが似ているという指摘には思わず肯いてしまいます。
残念なことに、名作を読まずに来た私には、未読の『アンネの日記』について語ることはできませんが、中に出てくる日航の飛行機事故で息子を亡くした母親の、自分を責めずにはいられない苦しさと、アンネの友人で、それゆえに世界各国で講演することの多いジャクリーヌさんの
「アンネのことでいろいろな場所へ行き、いろいろな人と会う時、いつもそれを思います。手厚いもてなしを受けるたび、これを本当に受けるべきはアンネなのに・・・・・・と思うのです」
という呟きに、同質の心を見て、こういうことを書けるからこそ、あの静謐な、それでいてどこか心温まる小説が生まれるのだな、と思ったりします。そして思うのです、いつか私も宝塚で大空祐飛の演技を見て、その将来性を確信したいものだと。そして、プルプルのような犬を飼いたいと。
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*数の不思議に魅せられて*「書く」ということ*アンネフランクへの旅*犬や野球に振り回されて*家族と思い出
小川さんの小説の原点を思い浮かばせてくれるエッセイ集
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エッセイ
人間の悲しみを描こうとするとき、「悲しい」と書いてしまうと、真実の悲しみは表現できません。
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2006.12. 小川さんのエッセイを初めて読んだんだけれど、小説と同じような空気が漂っていて好き。小川さんの持つ優しさと、物事への真摯な気持ちと。実はまだ「アンネ〜」を読んでないから、早く読みたくなった。
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「博士の愛した数式」を以前読んでから好きな作家だったが、数学は実は苦手、などと書かれていて親しみを覚えてしまった。数の不思議・美しさに惹かれる数学者に対しては今回改めて私自身の中にある偏見を捨て去ることができた。「アンネフランクへの旅」のエッセイも感動。
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『博士の愛した数式』で有名な著者の数少ないエッセイの一つ。
数にまつわるエピソードなど『〜数式』にいたるまでの道のりが語られています。
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博士だった。素数を愛し、オイラーの公式を愛し、子供と阪神タイガースを愛した博士が、活字の中から、生きた人間に生まれ変わって、私の目の前に現れたのだ。
(P.17)
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エッセイ集。
数学に関することが最初の部分にある。なかなか面白い。小川流の小説のでき方とか、小説に対する考え方とか、色々わかって参考になるのではないか。
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小川洋子さんのエッセイ。彼女の小説にまつわるエピソードなどとともに、その生活がうかがえて面白い。景色も心情も淡々と描写するような書き方は、小説でもエッセイでも変わらないんだなぁ。
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「博士の愛した数式」にまつわるエピソード他、著者の日常生活を
窺い知ることのできるエッセイ集。
凛とした文章に、読んでいるうちに思わず背筋を伸ばしてしまった。
図書館貸出
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じっと人の深部をみつめぬいた情のある目線を。彼女の小説に感じるのだが、やはりそういう人だった。
とても謙虚でやさしくて、ゆっくり時間をかみしめながら生きるような生き方をしていると感じる。
魅力的な作家だ。
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(2011.05.21読了)(2007.06.23購入)
小川洋子さんのエッセイ集です。話題によって、5つのくくりにまとめられています。
「数の不思議に魅せられて」
「「書く」ということ」
「アンネ・フランクへの旅」
「犬や野球に振り回されて」
「家族と思い出」
2003年8月に「博士の愛した数式」を発表し、ベストセラーになり、映画化もされました。それ以来、「博士の愛した数式」や「数」や「数学」にまつわるエッセイをあれこれと書いています。「作家」ですので、「書く」ことにまつわる話もあるでしょう。
小川さんにとって「アンネの日記」とその著者であるアンネ・フランクは、特別な存在のようです。「アンネ・フランクの記憶」という本も出しています。オランダのアンネの隠れ家やポーランドのアウシュヴィッツも訪れています。
(「アンネの日記」は、手元にあるのですがまだ読んでいません。)
小川さんは、「阪神」ファンで、時々応援に行くようです。小川さんは、犬を飼っています。ラブラドールで、名前を「ラブ」といいます。作家は、何でもエッセイのネタにできていいですね、と言いたいところですが、ちょっとこの「ラブ」にはてこずっているようです。
小川さんは、どのテーマでも、丁寧に書いていて、どこかしらユーモアもあって、息抜きにはもってこいです。
●天才ガウス(9頁)
ただ単に難しい問題を解くのが天才ではない。複雑な問題を単純化してしまうのが天才だ。その結果として難しい問題が解けるだけなのだ
●虚数はない?(23頁)
「虚数」という概念があります。「虚ろな数」と書くだけで、どこか秘密めいて、魅惑的です。二回掛け合わせるとマイナス1になる数のことで、数学では「i」という記号で表します。
二乗してマイナスになる数など存在しません。
(小川さんの理解では、二乗してマイナスになる数など存在しないのでしょうが、数学の世界では、1,2,3という数と同じくらい確実に二乗してマイナスになる数は存在するのです。)
●ストーリー(26頁)
私の場合、書き始める前からはっきりとストーリーが決まっているわけではないのです。私はストーリーが書きたいわけではありません。私が書きたいのは人間であり、その人間が生きている場所であり、人と人の間に通いあう感情なのです。
自分の書きたい人間や場所が、映像のような一場面になって、頭に浮かんできます。その頭の中の映像をじっと観察して、言葉に置き換えて行きます。すると、書き写した人物が、今度はまた新しい場所へ移動していき、新しい人と出会います。
●指輪を買いに(55頁)
神戸の元町に真珠の指輪を買いに行くつもりで家を出たのに、気が付くと骨董屋さんに入って机を買っていた。骨董屋さんの前を通ったとき、感じのいい机が飾られているのを見つけ、そうだ自分は前々から仕事用の机を探していたんじゃないか、と思いだし、真珠の指輪のことなどすぐに忘れてしまった。
●場所が大事(79頁)
長編であれ短編であれ、私にとって小説を書くのに何より重要な問題は、場所の決定である。そこさえパスすれば、話は自然と動き始める。反対に、いくら登場人物たちの姿が明確であっ���も、彼らの動き回る場所があいまいなままでは、一行も書き出せない。
●涙の謎(179頁)
子供の頃、涙がどこで作られているのか不思議でなりませんでした。悲しいというのは心の問題なのに、それがどうしてすぐさま目に伝わり、どんな仕組みで涙となるのか、謎でした。いつか目医者さんの知り合いができたら訪ねてみようと思っていたのですが、未だにその機会には恵まれず、答えは分からないままです。
(目医者に聞いたらわかるのでしょうか?)
☆小川洋子のエッセイ(既読)
「深き心の底より」小川洋子著、PHP文庫、2006.10.18(1999.07.)
「物語の役割」小川洋子著、ちくまプリマー新書、2007.02.10
「妄想気分」小川洋子著、集英社、2011.01.31
(2011年5月23日・記)
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「アンネフランク」「ペットの犬」「阪神タイガース」をこよなく愛する小川さんは、この種のエッセイになると本から感情が漏れ出すほどの強い思い入れがあるようだ。見ているこっちも感化されてしまう。
小川さんは、自身も認めるが過度な自信喪失者である。
ではあるが、そのネガティブ思考を逆手にとって、周囲の物・人・環境をとても慈しむことができる。
「自分なんてちっぽけだ・・・もっともっと周りから学ぶことがたくさんある」という謙虚な気持ちを持って執筆に明け暮れる小川さんの今後の作品にも期待しよう。
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文系とおもっていた小説家がすっかり数字の魅力に取り付かれていく様子がおもしろい。「博士の愛した数式」をもう一度楽しめた。
「アンネ・フランクへの旅」のページは緑色の紙が使われており、思い入れの深さがうかがえる。
洋子さんは内気で繊細だと言っておられるが、そんな言葉の裏にも才能があふれている。著書がフランス語に訳されていたり映画化されていたり外国にも大勢のファンがおられるなんてはじめて知った。
フランスのプロバンスで開かれた文学フェスティバルでの会話「泉が盗まれた」という不思議な言葉をきっかけに書かれたという「ブラフマンの埋葬」をぜひ読んでみたい。
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エッセイ集。「博士の愛した数式」を書いた時のエピソード、愛犬、タイガース、家族の思い出などを綴る。文章は温かく、著者の温和な人柄がにじみ出ている。特に、「アンネの日記」のアンネ・フランクが隠れ住んでいたアムステルダムの家を訪ね、生と死を隔てる扉を前にしてしばらくの間たたずんでいたシーンが印象的。
著者の小説がフランス語に訳され、フランスで読まれているという。文学フェスティバルでフーヴォー村を訪れた著者は、村で出会った景色と、昼食で入った館の女主人がつぶやいた泉泥棒、という言葉だけを頼りに「ブラフマンの埋葬」という小説を書いたとか。村への感謝の気持ちを表現したものだそうだ。