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紙の本

門外漢の私の胃の腑にもヨブ記をすとんと落としてくれる書

2010/08/20 22:08

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 著者は東京神学大学名誉教授だった人物。既に1998年に鬼籍に入っていますが、生前に朝日カルチャーセンターで行った聖書講話の録音テープを書き起こして2006年にまとめたのが本書です。

 ヨブ記の物語では、信仰心篤く品行方正な男ヨブが神の意思によって財産も家族も奪われ、全身に腫れものが出来る病に冒されます。さすがのヨブもなぜ自分のようなまじめな男がこれほどの苦しみを味わうのか、こんなことならいっそのこと死んだほうがましだと神に疑問の声をぶつけます。この聖書物語を読むと、ヨブならずとも神の理不尽さに首をかしげることしきりというのが私の感じたところでした。

 本書はカルチャーセンターで一般の受講者を相手にしたものだけあって、言葉遣いもこれ以上ないというくらいに平易に、噛んで含めるかのようにヨブ記の意味するところを解説してくれます。

 著者独自の解釈によればヨブ記は、徐々に物語が盛り上がって最後にクライマックスを迎える絶壁型の構成にはなっておらず、中途にクライマックスがある富士山型であるとのこと。そして著者が解釈するヨブ記のクライマックス=富士山の頂は16章から19章にかけてであり、そこに描かれる神は、裁きと赦しという相反する性格をもった存在として描かれているとします。

 破壊しつくす姿とその破壊の淵から人を救い出す姿を二つ兼ね備えたのが神であるというヨブ記が発するメッセージ。そこに人類のちっぽけさと神の偉大さを見て感応すること。
 それがどうやらヨブ記の役割だと著者は言っているようです。

 私自身は仏教に魅かれる人生を歩んできているので、聖書の理念に見識も知識もありませんが、そんな門外漢の私にも比較的容易にヨブ記を咀嚼させてくれたのが本書でした。

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