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三年坂 火の夢 みんなのレビュー

  • 早瀬 乱 (著)
  • 税込価格:1,76016pt
  • 出版社:講談社
  • 発行年月:2006.8
  • 発送可能日:購入できません

第52回江戸川乱歩賞 受賞作品

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みんなのレビュー32件

みんなの評価3.0

評価内訳

32 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

同時受賞の『東京ダモイ』に比べたら、別次元の出来、とはいえるんですけど、やっぱり古いんですね。ファウスト賞に比べると乱歩賞、古色蒼然。曲がり角?

2006/10/01 21:52

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本のデザイン、嫌いじゃありません。ちょっとレトロで、活字の形にも工夫があって。繰り返しになりますが、馴染みやすい。中身だけではなく、外見も同時受賞の『東京ダモイ』とは比べ物にならない、なんて書いたら、怒る関係者は一杯いるんでしょうねエ。そんな、装幀をしたのは芦澤泰偉。
目次は、ちょっとアッサリ気味で、
古い話、三年坂1〜8、火の夢1〜7、最後が「三年坂 火の夢」、それに東京略図、参考文献、江戸川乱歩賞の沿革及び本年度の選考経過、選評、江戸川乱歩賞受賞リスト、第五十三回(平成十九年度)江戸川乱歩賞応募規定
となっています。うーん、三年坂は8つなのに、火の夢は7つ、イマイチ工夫足りないかな。しかも、最初の「古い話」ですが、これって実際には、古い話の部分と、三年坂0みたいなものが合体していて、これを加味すると、三年坂9に対して、火の夢7つともっと差があるし・・・
「古い話」の前半は西暦1892年、明治25年に起きた神田大火の様子を描きます。この火事、私は知りませんでしたが、二日間にわたって燃え続け、四千百戸ほどが全焼したと言うもの。「東京府東京市は15区に分かれ、ほぼ現在の山手線内を市域としていた。概していえば、今の区一つが区二つに当たる。麹町区は皇居(宮城)周囲一帯のことで、神田区とあわせて、現東京都千代田区に相当した。」を皮切りに、当時の東京の模様が丹念に描かれます。
そして、ここでこの話の主人公である内村実之が登場します。最初、橋上といっていた父親の家は、作事奉行を代々務める家柄で、一方内村の家は、同じ藩士といっても足軽に毛の生えた程度、貧しかったといいます。で、橋上家の息子一之助と内村家の娘が結ばれ、生まれたのが義之であり、五歳年下の実之であったわけです。
二人が結婚したのが明治元年、一之助22歳、妻は17歳。そして版籍奉還、廃藩置県といった元武士には苛酷な並が若い二人を襲います。藩主とともに江戸に出た一之助は、新たに知事となった殿様とともに、一年で帰国します。そして藩がなくなり、一之助は失業、隆と名を改め、明治七年、今度は夫婦揃って東京に出ます。そして家庭を顧みなくなった隆と妻が別れたのが、明治13年です。
母親は故郷に帰り、そこで実之を生みます。明治14年のことです。藩がどこであったのか、母親の名前が何であったのかは、はっきりとは書かれません。
で、明治32年、実之は18歳となり、母子家庭の常として貧しい生活を送っています。母子家庭で兄の学資がかかる、となれば実之はそのまま就職ということになり、将来は何も考えていないけれども、不満だけはある。そんな実家に兄が帰郷します。大学を中退してきただけでなく、残っていたはずの学資は無くなり、おまけに怪我までしている。そしてあっけなく義之は逝ってしまいます。弟の質問に遺した言葉が「三年坂で転んでね」。
娘たちが通っている中高一貫校が市ヶ谷にあって、この小説では市ヶ谷、麹町、九段といったあたりが出てきます。しかも夫が生まれて育った文京区の小石川から江戸川橋あたりもかなり書かれます。勿論、帝大のある本郷近辺も。
ともかく、当時の東京の様子がよく描かれています。町の雰囲気、どぶ板の匂い、歩き回る主人公の疲労、空腹、お金に対する心配。ミステリとしてどうとかいう前に、小説として読ませます。ただし、新鮮さ、驚き、ワクワク感はありません。こう考えると、藤原伊織や岡嶋二人、あるいは桐野夏生がいかに凄い存在であったかというのが逆に分かろうかというものです。でも、早瀬それら傑出した先輩に伍するか否かはともかく、最近の乱歩賞受賞作家の中では、もっとも安定した筆力を持っていることは確かでしょう。

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紙の本

変わりゆく明治期の東京の町を描くミステリー

2006/08/29 18:15

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

第52回(2006年)江戸川乱歩賞受賞作。
ふたつの物語が同時進行し、東京大火災を目論むヤカラを追うミステリー。
ひとつ目の物語の主人公は、奈良の元士族だが、生活に貧している内村実之。父は維新後、東京で民権運動に関わり、家を省みず、母と離縁。母は兄義之を連れて、奈良の実家に帰ります。母のおなかにいた実之は、父の顔を知らないばかりか、父は実之の存在すら知りません。
帝大生となった兄は、母のたった一つの希望でしたが、腹に傷を負い、帰省してなすすべなく死亡。「三年坂で転んだ」という謎の言葉を残します。
三年坂で転ぶと、三年以内に死ぬ。それを避けるには土を舐める、という言い伝えがあります。
実之は、高等学校に受験する学力も資力も不足しています。しかし、友人の助力によって東京に出奔。兄の謎、三年坂の謎、父の行方を追います。
もうひとつの物語は、予備校の英語講師高嶋鍍金(めっき)。彼は人力車に乗っており、火事の中を駆ける夢を見ます。同じく予備校講師の立原総一郎が、鍍金が雑誌に書いた都市火災やスラム・クリアランスに興味をもち、近づいてきます。
その雑誌の編集者が、東京で頻発する火災の犯人ではないか。そもそも東京(江戸)には発火点と呼ばれる火災の起きやすい地形や町並みがあった。鍍金にその論文を書かせて、自分の代わりに犯人に仕立てようとしているのでは、ともちかけます。
ふたりの東京発火点探しが始まります。
田舎出身で、迷いややりたいことの多い若い実之、外国暮らしの長い鍍金など、人物設定がうまい。自由な空気のなか、そんな人物が集まってくる東京の力を感じます。
また江戸から明治に変わり、さらに変わりゆく東京の町で、坂の名前、地名の由来などを追っていくプロットも興味深い。けれど、ふたつの話がやや細切れ過ぎます。もう少しじっくり読ませてもよかったのでは。三年坂の名前の由来も途中で飽きてしまいました。
さらに一度、東京という町を俯瞰させるシーンを挟むと、物語に奥行きが生まれたと思います。
またところどころ、作者の目で文章を挟んでいますが、これは不要でした。この古い手法は興ざめしてしまいます。
このような細かなところ、斬新さ、ラストのまとめ方のご都合主義を除けば、まあまあの合格点。では、次回作を読むかどうかは難しいところですね。

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紙の本

この本片手に東京散歩。東京の坂巡りはいかが?

2010/07/08 19:23

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

東京には本当に坂が多い。
今、なんと云う通りを歩いているのか?という問いと 今何という坂を上り下りしているのかという問いの多さはさして変わらないのではないかと思うほどだ。
そしてその坂の名前にはそれぞれの物語が隠れていたり、曰く付きだったりする。
だから、この題名・・・「三年坂」「火の夢」という二つのキーワードになにやら「いわくつき」の興味をかき立てられたのかもしれない。
そうして私はこの作品を読み始めた。

導入部分~中盤までは面白い。もともと伝説やら逸話やらが好きな読者なら食いつくであろう数々の魅力的な単語が連なってくる。
「3年坂で転んだら死ぬ」という迷信。殺人と失踪と言う謎。放火と言う事件などが絡み合い、『帝都物語』を髣髴させる東京大改築という都市伝説的な言葉まで出てくるのだから!
材料は揃っている。興味深く、人をひきつける題材である。
そして話の運びも、引き込みも、当時の風潮、面影もどことなく全体に漂っていて、明治の情景が何とはなしに目に浮かぶ、そんな意味で見事な文面だと思った。
正当な純文学などを好む方々にはこの程度では・・・と思われるかもしれないが、現代に生き、明治を知らない私共にとってはこんなくらいがちょうどよい。

貧乏と受験に苦悩する主人公の書生、あこがれの帝大に行きながら途中退学し傷を負って帰ってきた兄、行方の知らない父親。兄は父を、弟は兄の痕跡を追っていくうちに『東京』に差し迫った大火災の危機に迫っていく。そうとも知らないうちに。

一方ではその、東京を燃やし尽くすと言う阿修羅のごとき火の発火点=7つの三年坂を追い求める教授たちがいる。 次第に接点を持つ2つの追及者たちだが、犯行者は兄でも、父でもなく、意外なとことにいた・・・

面白い展開と構成もよいと思う。けれど犯人がいきなり脈絡なく出てきた気がして、ちょっとだけ、つまらない。
裏をかくもの何も、犯人が誰なのか?という追及が全体に薄いからかもしれない。
謎はむしろ、なぜ三年坂と発火点が結びつくのか?なぜ三年坂というのか?という点に絞られており、後者の名前の由来にいたっては最後の最後の数行であっさり解決してしまう。しかも殆ど関係ない、と言う有様だ。そりゃないだろう・・・。

ドラマチックな展開になるかと思いきや、最後だけ腑抜けてしまった。
それでも、最後のニクイ「名探偵」の手際は、かっこいいんじゃないかと思う。

この本には地図も付いているのでこれを片手に東京の坂巡りをする。
そんな応用もありではないか?

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紙の本

首都東京の成り立ちにはこんな不思議な伝奇、伝承があったのかしら。と首を傾げつつも本当らしさに魅了されます。

2006/10/01 20:06

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

全国的な不平士族による反乱は鎮まったもののいまだその余韻が重たい政情不安の明治政府である。「三年坂で転んでね」——そう言って兄は死んだ。
東京にはいくつかの「三年坂」があるという。その坂で転ぶと死ぬのだそうだ。父の失踪を探る兄が死んだ。明治32年(1899年)、奈良県S市。没落士族の次男坊に生まれた内村実之。貧しさの中のしかし実直の若者らしい青春の一ページが始まる。家族から立身出世を期待され、上京して一高・帝大をめざす受験勉強の傍ら父と兄に関わる真実を探るために奇怪な謎に肉薄していく。
高島鍍金、銀座に住まう高等遊民は夢を見る。東京が全焼する、顔の見えない人力俥夫が火の粉をあびながら炎熱地獄を駆け回る。帝都全体を炎上させるための要となる「発火点」がいくつかあるのだそうだ。高島がうなされるのは夢か幻かそれとも予知夢なのだろうか。
「三年坂伝承」と「発火点伝承」。大田道灌の江戸城構築よりも前から今に至る帝都の成立・破壊・再建の歴史には隠された国家的秘事がある!?その秘事にかかわる怪しい家紋をもつ一族の登場?
実之と最下層に生きる少年、鍍金と帝大工科の研究生。この二組がそれぞれにたどる二つの伝承に隠された真実が交差したとき………。
早瀬乱はこんなにもスケールのでっかい伝奇小説の装いを仕掛けている。あらすじを紹介するのに書き過ぎの感があったかもしれないが、これがいかに魅力的な小説であるかを述べたかったからである。それは半村良が名作『産霊山秘録』で追った恒久平和を祈るべき特別の場所としての首都構想に似て、また荒俣宏の奇書『帝都物語』にある怨霊平将門の霊力による帝都破壊の真相を想起させるものだ。
銀座、虎ノ門、霞ヶ関、永田町、麹町、麻布、飯倉。大手町、神田、御茶ノ水、駿河台、湯島、小石川、本郷。九段、市谷、番町、牛込、飯田橋。根津、千駄木、谷中、根岸。参謀本部が西郷隆盛らの帝都侵犯に備えて作成した「五千分之一図」。三年坂を求めて、宮城を取り囲む下町と山の手、実之はとりつかれたように歩く、歩く。東京育ちの私にはどこもなじみの土地である。しかし、そこに関わるイメージは点と線でつながれた場所の平面地図に過ぎなかったのだ。この大都市は山と水辺と谷と坂道で成立しているんだな。いやおうなく東京という地表の起伏、深浅など立体的地勢を頭の中で俯瞰させられる。そして土木と建設による地形の大規模な人工的変形、時間の経過がかさなりぼんやりと四次元の座標軸に東京のかたちが浮かび上がる。まるで気づかなかった東京のかたちだ。この絶妙な仕掛けにものめりこまされた。
夢幻の世界に誘導させられる、本当にそんな伝承はあるんだろうか。参謀本部による「五千分之一図」なんてものがあったのだろうか。ふとその気にさせられるが、その事実を検証してみようかと野暮なことは考えず、ここは騙されているのだろうと楽しもう。ただ、実之の足跡は実際にたどってみたくなった。それだけのリアリティーは充分だ。
仕掛けは大掛かり、そういう羊頭狗肉の作品にもしばしばお目にかかる。でも犯人当てのミステリーとしてはどうか。犯人の意外性に不自然さがあるかもしれない。犯人のあぶり出しが陳腐だと言えなくはない。しかしこの作品の構成の妙にはなにごとにも変えがたい新鮮さがある。独創的であった。さらに現代に通じるテーマには奥行きと深さがある。
私たちがこうあればと願う首都に不可欠な要素、帝都成立時の実之ですらそれはもはや幻想でしか見られないほど都市化という破壊が進んでいた。規制撤廃のこのごろである。政治家のノリトにすらもはや都市改造計画という高い理念の発想はなくなってしまった。
だからこそこの作品のラストはやさしく、美しいのだ。

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2006/09/07 09:19

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2006/10/09 18:51

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2007/11/29 11:58

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