紙の本
私を北欧ミステリブームに引きずり込んだ記念すべき作品
2016/06/30 19:31
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
よさげなタイトルと表紙の装丁に、思わず手に取った。
なんと舞台はスウェーデンである。 ヴァランダー警部が電話で呼び出された先で、少女が謎の焼身自殺をとげる。 その後、斧で割られ、頭皮をはぎとられた死体が連続して発見される事件が起き・・・そんな警察小説。
上下巻だし、長いなぁと思ってしばらくほうっておいたのだが、読み始めたらえらく面白くてやめられない。
スウェーデンの警察といえばマルティン・ベックだが(以前ドラマで見た)、ヴァランダー警部シリーズはそれよりも少し時代は後になるらしい。 そう、シリーズ物の5作目だったのである。
うわっ、こりゃ1作目から読まねば!
スウェーデンというよく知らない国に対する理解が深まる、という意味でも面白いのです。
油断して日焼けしすぎて病院に行く人がいたり(緯度が高いんだな)、一週間の休暇ぐらい普通にとれる環境だったり、福祉が手厚いイメージだけどそれなりに貧困層が存在したり、通貨単位がクローネだったり(マルティン・ベックのときも思ったな、そういえば)。 ただ人の名前がなじみのない音のため、どれが誰のことだがいまいちわからない・・・。 登場人物一覧とにらめっこ。
シリーズ物だからか、キャラクターがそれぞれ魅力的。 スウェーデン人、という日本人からは身近じゃない人々の日常が示される分、親しみがわきます。
で、スウェーデンの警察組織についても詳しくなるぞ。 人物造形だけでなく、勿論、事件についてもしっかり書きこまれているので、ただの目新しさだけでは終われない。 壮絶な事件を前にもがき苦しむ警察官の、日常生活もしっかりと。
このタイトルが気になったのは、もしかしたら以前のこのミス海外部門の上位にランクされてたからかな? そう思えるほどに、硬派で骨太。
舞台は1994年なのでスウェーデンにはまだ科学捜査を本格導入していない模様、FBI的プロファイリングもあまり信憑性は見出されてない(触れられてはいるが)。 思わず、「それはきっとそういう意味だよ!」と伝えたくなってしまうのであった。 でも14年以上前なんだよね・・・。
ミステリとしては結構早い段階で犯人がわかってしまうのであるが、読ませどころはそればかりではないのでそんなに気にならない(あまりに早いのでミスリードだと思った。 裏を読みすぎるのが私の悪い癖だ)。
ヴァランダー警部はヒーローとはほど遠い人物であるが、「それが自分の仕事だから」という仕事人としての姿勢は、誰にでも起こりうること(事件に遭遇するということではなく、そのような気持ちになったり決断を下さなければならなかったり、という意味で)だと思わせてくれるのだ。
世界は広い。 文化も様々だ。 でも、まっとうな人は本質的な部分できっとわかりあえる。(2008年12月読了)
紙の本
天国の裏側
2019/11/06 22:32
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻から続くやり切れないスウェーデンの赤裸々な現状が哀しい。
上下巻の表紙写真があまりにも天国のようなスウェーデンの夏の日を表現しているので、この裏側で行われている目を覆うような悲惨さがより際立つ。
先進国でかつては福祉天国とも呼ばれたスウェーデンだが、冒頭に描かれた中米の村に暮らす家族と比べて、どこが天国といえるのだろう。
ヴァランダーでなくとも嫌気がさすというものだ。
やり切れないし、ヴァランダー一人でどうなるものでもないが、やっぱりこのシリーズ読むのを止められないのはひそかに我が身に迫るこの世の地獄を自分も感じているからだろうと思う。
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ヴァランダー警部は捜査に能力を発揮するが、老いた父の行動を案じ、進路の定まらない娘を気遣い、恋人にもなかなか連絡が取れない。
犯人は比較的早くわかるが、綿密な描写で飽きさせない。
哀切な結末。
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リアルと言えばリアルなんだろうけど、波がない。犯人を明らかにするのであれば動機や人物関連にひとひねり加えるなどの工夫がほしい。心情を中心に読ませるにしても語彙やエピソードが平凡。
”めくらましの道”にしたって犯人の欺きによるものでなく、捜査陣が勝手に混乱しているだけなので言葉負けしているのではと。
巷ではそこそこの評価のようだが、自分にはあまり合わない模様。
■このミス2008海外9位
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本作は「出来れば知りたくなかったことを確実に知るに至る」までの“本筋”も面白いが、ヴァランダー警部周辺のことを扱うような“脇筋”も面白い。
本作の最末尾に在る“訳者解説”だが、なかなかお得だ…ヴァランダー警部シリーズの刑事達に関する小事典が在る!!
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少女の焼身自殺と頭皮を剥ぐというなかなかエグい連続殺人がいったいどう絡んでくるのだろうとどきどきして読めました。警部は相変わらず睡眠時間が短いですが冴えています。登場人物たちにすっかりなじんだので続きがでるといいなあと思います。
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人間を事件にかかわりのないところまできちんと描き、一つ一つ捜査の手順を踏み、事実を積み上げてみせる。
これはとてもよくできた警察小説だと思う。
謎解きの側面だけを読んでいたのではこの面白さは半減してしまうだろうなぁ。
作品後半、事件に深いかかわりを持つと思われる人物の家をヴァランダーが尋ねる場面。
何度も道を間違えて、間違えた場所に気づいて引き返して、正しい道に戻る。わずか1ページにも満たないシーンが、この物語のすべてを表しているようだ。
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スウェーデンの小さな町の警察官、クルト・ヴァランダーのシリーズ5作目。
事件の事で思い悩んでいた1秒後には、季節の移り変わりの美しさに目を奪われ、遠距離恋愛中の女性に思いを馳せ、病気が発覚した父親と向かい合おうと考え、ふらっとやってきた愛娘に癒され…とにかく人間くさいおじさんが魅力的。こういうジャンルだと、いつのまにか超人的になっちゃう主人公が多い中、何度も何度も同じ悩みにはまったり、鬱からなかなか抜け出せなかったり。ヨーロッパの片隅の小さな町で、変化していく世界への不安を抱えながら、それでも日常生活のなかに光を見出そうともがいている主人公が、とにかく情けなくてかっこいい。
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下巻に入っても期待は裏切られませんでした。人物像がはっきりと浮かび上がっていること、1995年当時の世相がよく伝わること、そして着地がすっきりしていることなどがポイントの高さにつながっています。昔読んだ「マルティン・ベック・シリーズ」とは雰囲気が違いますが、こちらのスウェーデン警察小説シリーズもお勧めです。ぜひ一作目の「殺人者の顔」からどうぞ。追記。スウェーデンでドラマ化されたという話は、解説で読んだ記憶があるし、ケネス・ブラナー主演で、去年イギリスでドラマ化された(舞台はスウェーデン)というニュースも聞いていたが、まさか、今日WOWOWで放送されていたとは知りませんでした。しかも一作目が「目くらましの道」。残りの二作はこれから翻訳される作品なのか、それとも、オリジナルなのかは不明ですが。引越しを機に、解約してしまったのが悔やまれる。でも、ソフト化されることを期待しましょう。
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やっぱり結末全然覚えてなかった。ところで、動機の必然性というか、理由がイマイチよくわからなかったのは、オレの読解力のなさですか、そうですか。
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犯人がすぐそばに居たり、娘に近づいているのに全く気づかないヴァランダーにハラハラ。鍵が盗まれてるっちゅうねん!以前の国際組織と渡り合ったとは思えない迂闊さ。それもこれも犯人が。。。だからだろうけど。
ゴールドダガー賞受賞ということで、期待値が高すぎたか。最後もあっけなく(エピローグは良かったけれど)て、私にとってはいつもと変わらない面白さでした。
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ふだんは人一倍読むのが遅いのに、半日で読了。新記録。
センテンスが短いのでリズムよく読み進むことができる。淡々と進みながらもいや増してゆく緊張感。訳者の手腕かもしれない。
北欧のひとびとがいかに夏休みを楽しみにしているか? 彼らがどのように夏を過ごすのか? マイペースで、いなたい登場人物たち……(事件は悲惨だが、なんとなくの〜んびりした印象なのはそれゆえ?)。「北欧の人と暮らし」という視点から読んでも、なかなか興味深い一冊。
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(上巻より)
ただ、心理学者のマッツ・エルクホルムが、
もうちょっと活躍(捜査上だけでなく)してくれると、
良かった気がする。
女性署長が就任した、今度の展開に期待したい。
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読者には犯人が分かっている事でよりハラハラさせられる展開に思わず引き込まれた。 このシリーズを読むのはかなり遅い参戦でしたがおかげでまとめて読める幸せを味わっております。
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初ヘニング・マンケル。謎解き(犯人、動機、犯行方法)よりは社会問題を書くためにミステリーを書くという姿勢が北欧ミステリーの特徴と言われるが、それがよくわかる作品だと思う。読み応えがあった。サンタナ父さんに涙したわー