紙の本
ガサツな兄と潔癖症の妹の物語
2007/09/04 16:10
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
19歳で視覚障害者となった妹凛子。
病的なまでの潔癖症が幸して
一人で出歩けるように白杖の訓練を受け始めます。
半年前、看護婦で一家の稼ぎ頭だった母が
交通事故で亡くなり、汚くなっていく家のなかに
我慢がならなくなったからです。
2歳上の兄真司はサラリーマン。
デベロッパーに入社早々、ハウスウェディング会社に出向。
ウェディングプランナーとして営業の日々。
もてないわけではないのですが、すぐにフラれます。
大雑把でいい加減な性格。
ところが、ソリのあわない兄妹を残して、漫画家の父親が失踪。
ふだんから無口で何を考えているかわからない人でしたが
凛子は父親の漫画の原案者として
中途失明の女の子を主人公に自分の体験を重ね、成功。
生まれて初めて連載が11ヶ月続き、
順風に思えるかのような時でした。
失明した娘を置いて失踪してしまうのが
不可解なのですが、兄妹の物語は
それぞれが必要不可欠な存在として認め合い
それぞれの人生を歩いていく姿を描きます。
また出版社の編集者西尾の存在が秀逸。
父親失踪後、頼れる人であった彼が別の面をさらけ出し
ただの兄妹の物語だけじゃない小説になっています。
真司の彼女として登場するふたりの彼女も
それぞれ味わいがあります。
小粒ながら、しっかりと描き出される人間の心に
ちょっぴり笑って、ちょっぴり泣けました。
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18歳で全盲になった妹と兄の成長物語。「成長」というキーワードはいつも通りなんだけど、この結末と、キーになる善人が全くいないという設定はどうだろう?今までの桂作品中、いちばんすっきりしない読後感だった。
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「迷惑なんて」典子が言う。
「かけちゃいなさいよ。なんたって、こっちは目が見えないんだから。私もね、昔は――視覚を失ってしばらくは、凛子ちゃんみたいに思ってたわ。でもね、晴眼者だって、決して一人では生きてないのよ。誰かに支えられて、助けられて生きているんだから、それよりちょっとばかり多く助けてもらったって、構わないじゃないって開き直ったら、楽になっちゃった。電車もね、最初は一人で乗るの、怖かったの。でもね、電車とホームの間に何度も落ちてるうちに ――」
「何度も落ちたんですか?」私は大きな声を上げた。
「そうよ。何度も。その度に、ひょいって周りの人たちに引き上げられた。助けてくれるのよ。もっともっと助けていただいたって、いいと私は思うわ」
>泣いたなぁ。。。この部分結構きた。涙腺に。
ぅぅん。良いと思う。助けるよって思った。
そして助けてくれるんだって安心した。
胸が苦しくなる。でも暖かいと感じます。
ちょっと泣きたい時に。
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一言で言ってしまえば、大人になってから全盲になった妹と、その兄の成長の物語。「優しい」ということは、必ずしも言葉に出すだけがそうなんじゃない、ということを知らされた。(2007/11/4読了)
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中途失明の妹とその兄。気が合わないながらも暮らしている。
章ごとに3年づつくらい経過して語り手が兄妹交互になる。
それぞれの成長が見て取れる点は面白い。
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世の中こんなに上手くいかないんだけどね。
でももしかしたらこの世界のどこかにこんな兄妹がいて、
慎ましくひたむきに生きているのかな、と。
そんなやわらかい気持ちになれたことが嬉しい。
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話は好感度が高いなあ、っていう感じでした。
一章ごとに兄・妹の立場から
話が綴られるのですが、その一章ごとの
確実な成長・・・というかなんというか
だんだん寄り添いあっていく感じが
とても良かった。
最後にはまた少しずつ離れていくんだろうな・・という感じだけど、
ゆっくりゆっくり、
丁寧に書いてるっていう感じ・・が良かったね。
兄・妹以外の登場人物は薄かったけど。
必要ないのかねえ・・。薄すぎると思うなあ・・
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桂さんの作品は読後感の良さが好きで読んでいるのだけど、今回はちょっと。。。私の求めてるものとは違うっていうだけですが。
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それまで相手に見向きもしなかった兄妹。妹が突然視力を失ったことにより、世界が一変します。1つ1つの試練を乗り越える度に相手の存在の大きさに気づいていきます。口数が少なくても、相手のことがわかるのは、やはり兄妹だからかなと思いました。特に、兄の成長に引き付けられました。最初は駄目人間でしかなかったのに、いつの間にか読者の声を代弁する存在になっていた気がします。近すぎず、遠すぎない兄妹関係がよかったです。
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失明し、母が死に、父が失踪し、、って不幸てんこ盛りにした上で、10年にわたる、兄と妹の関係性や人としての成長をえがくというのは、やや無理のあるようにも思いました。リアルに書いていそうで、やや現実感がないというか。。
しかし、不器用ながらもいい関係性を築いていく、あるいは成長していくというよりは、2人っきりになってしまって始めて、今まで知らなかった兄の、妹の本質をわかりあってきたのかもしれない。
最初は嫌なヤツと思ってた兄「真司」の人としてのあたたかさはなかなかのものだと思うし。
読んでるうちに、兄妹のことを応援している自分、いったいお父さんはどこに行ってしまったんだろうと心配してしまう自分、と登場人物と一体感がありました。
ただ、タイトルから受けた印象と読後感がやや合ってないということで、評価は☆3つにしておきます。
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後天的に視力を失った凜子と、兄の真司の1995年から2006年の11年間を断片的に描いた作品。
最初のうちは兄の真司にはまったく共感できなかったのだが、話が進んでいくごとに実はいいヤツじゃんと思うようになった。
最初の方の真司がダメだったのは同属嫌悪に似た感情を覚えていたからかもしれない。
桂作品のよさは主人公が共感できるようないいヤツじゃなくてどこか性格や人となりに難があるヤツばかりななんだけど、そんな主人公に徐々に読み手を惹きつけ、最後には気持ちの良い読後感を残すところだと思う。
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失明してしまった女のひととその家族の話。お父さんが失踪してしまうことは兄妹の仲には関係してくるけれど、最後までそうする必要はあったのかな?と思ってしまった。はっきしりない最後はあまり好きじゃないなぁ。あと結局どこに焦点を当てた話なのかわかりづらかった。けど、話自体は結構さくさくと読めた。この人のほかの本も読んでみようと思った。
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突然視力を失った妹、その兄。母は以前に失い、残った売れない漫画家の父もある日突然失踪する。
破天荒なようでいて、とても心温まる物語。中がいいんだか悪いんだかわからない兄と妹の関係がすごくいい。あっという間に10年ってのはちょっとあれだが。あと失踪の件はなんとかなるかと思ってた。
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内容(「BOOK」データベースより)
19歳で途中失明して夢を失った凛子。向日葵のようだった母の死に続き、寡黙だけど優しい漫画家の父までいきなり「消えて」しまった。残ったのは、自分のことに精一杯で気配りの足りない兄・真司だけ。その日から「世界中の誰よりも気が合わない二人」だけの生活が始まった!一番近くにいても誰より遠い二人の未来に待っているのは…。家族の愛がぎっしり詰まったハートフルな長編小説。
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お互い反発し合いながらも、お互いの存在を認め、尊重していく。
こういう兄妹の形があっても、良いかもしれない。
短気な兄が不器用に妹を思い、家族というよりは、一人の人間として見守り、ともに成長していく姿が清々しい。