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夜明けの縁をさ迷う人々 みんなのレビュー

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みんなのレビュー85件

みんなの評価3.6

評価内訳

85 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

まわりつづけるメリーゴーランド

2007/10/10 04:18

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:田川ミメイ - この投稿者のレビュー一覧を見る

逆立ちの練習をしつづける曲芸師、
食べても食べても減らないスパゲティを食べつづける、女達。
エレベーターの中で生きつづけるエレベーターボーイのイービー、
涙を売るために、涙を流しつづける女……。

何かを「続ける」姿というのは、時に感動を誘う。
それが真剣であればあるほど、見る者は手に汗を握り、頑張れと応援したくなる。あるいはその反対に、その姿があまりにさりげなく自然であればあるほど、さすがだ、と感嘆する。とても自分には真似できない、と。
が、その「続ける」という行為がある一線を越えてしまったとき、人々はそこに狂気を見る。恐怖を感じて、思わず後ずさる。
例えば、夢のように美しいメリーゴーランドが、どうやっても止まらなくなってしまったときのように。狂ったように回りつづけるメリーゴーランドを目の前にして、見物客であるあたし達は為す術もなく、ただ恐怖に立ち尽くすことになる。

この短編集に描かれているヒトたちは、みんな何かを「しつづけている」。
まさに、止まることのないメリーゴーランドに乗っているようなものだ。が、その中にいる彼ら彼女らはそのことを妙だとは思っていない。彼らにとっては回りつづけていることこそが大切であり、そんな主人公に寄りそう人々も、それをごく当たり前のこととして(あるいはその事を賞賛しつつ)、共に生きている。
読み手は、それを外側から眺めることになる。だからこそ、「怖い」のだ。
怖いのに目を離すこともできなくて、ひきこまれるように見つめてしまう。

止まらないメリーゴーランドに乗りつづけるには、金の柱につながれた白馬や馬車と同じ速度で回りつづけなくてはならない。自分だけ止まることなど不可能だし、そこから飛び降りようとしたり、外に立つ人々がむりやり引きずりおろそうと腕を引いたりすれば、たちまち大きな事故となる。ましてや、速度を徐々に落とすことなく一気に急停止させたりしたら、乗っていた者達は皆どこかへ弾き飛ばされてしまうだろう。
回りつづける世界の中には、それなりのバランスがあり、秩序がある。その危ういバランスが崩れたとき、悲劇はおこる。
ひとつひとつの物語りに描かれているのは、そんな世界だ。

今思えば「博士の愛した数式」は特異な設定があったにも関わらず、小川洋子の作品の中では一番「現実的」なものだった。が、やはり彼女ならではの独特の世界を堪能できるのは、この短編集にあるような「挾間」を描いたものではないだろうか。生と死、夢と現、闇と光。それらの狭間。

この本の表紙には、四角い箱が描かれている。たぷたぷとした湖のような「夜」を固めたような闇色の箱。それは夜の遊園地で回りつづけるメリーゴーランドと同じようなものなのだ。そこに生きる者達は、そこから出ることはできない。いつまでも夜と白日の狭間―夜明けの縁―をさ迷いつづけるしかない。
あたし達は、哀しい結末を予感しながらも、目を離すことが出来ない。恐怖に足をすくめたまま、危ういバランスで夜明けの縁を歩く人々を、見守るしかないのだ。

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紙の本

小川洋子の世界へようこそ

2007/09/22 19:52

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

ロマンチックな珍事や不可思議な出来事を
味わい深く描く短編集。
絶対に存在しないのに、なぜか確かさが感じとれます。

僕がレフト方向にしかヒットが打てない理由は
少年時代の出会いにあった「曲芸と野球」。
女性曲芸師の技がすごい。

留守番のD子さんに招かれ、大皿のパスタを平らげたが
なかなか帰宅のきっかけがつかめない「教授宅の留守番」。

中華料理店のエレベーターに住む青年は
生まれてから一度も出たことがない「イービーのかなわぬ望み」。
イチオシのお話。

ちょっと困った家を紹介してくれる不動産屋さん「お探しの物件」。
見てみたい気もします。

楽器の音色を美しくする涙をもつ少女は「涙売り」。
その恋は切なくて、悲しい。

シッターさんの家で不思議な老人に出会う「パラソルチョコレート」。

指圧のお客さんだった老女から形見に贈られたのは
M氏の文学全集15巻。その孫だったという「ラ・ヴェール嬢」。

山の狩猟小屋を執筆の家にするために下見に行く作家と
その秘書。変な男が管理をする「銀山の狩猟小屋」。

私の通う高校が甲子園に出場。
決勝戦で決着がつかなくて「再試合」。

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紙の本

いやはや、どーしてあんなにオーソドックスな読書からこんな奇妙で不可思議なお話が生まれるのかな、なんて思います

2007/12/08 19:10

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

ちょうど今、小池真理子の短篇コレクション『贅肉』を読み終えたばかりなんですが、あとがきで夫君である藤田宜永が「文学少女はいても文学少年はいない」と書いています。確かにそうで、男性の場合は文学青年になってしまいます。うーん、なかなかうまいことを言うな、って感心。

で、そのとき私の頭を過ぎったのが桜庭一樹でも川上弘美でも、勿論、豊崎由美の名前でもなくて、小川洋子の名前でした。彼女の読書に関するエッセイを立て続けに読んだこともあります。彼女が掲げる書名は、一言で言ってオーソドックス。とてもあんなに奇妙なお話が生まれてくるとは思えないようなものです。

ちなみに、今回の本、英文タイトルは The people who wander at edge of the dawn 。装画・挿画/磯 良一、装丁/片岡忠彦となっています。カバーもですが、各話の扉についている挿画が秀逸で、本には画や図版がついているのがいいなあ、ってつくづく思います。そして、お話のほうは相変わらず、彼女の読書体験からは想像もつかない不可思議なもの。全作一気に紹介しましょう( )内は初出です。

・曲芸と野球       (「野生時代」2006年7月号):僕が流し打ちを上手にできるようになったのは三塁側で逆立ちの練習をしていた曲芸師のおかげ・・・

・教授宅の留守番     (「野生時代」2006年8月号):海外研究のためにパリに行った教授の家の留守番役をしているD子さんを訪ねた私、留守宅に舞い込んだ教授の受賞ニュースとお祝いの品々が・・・

・イービーのかなわぬ望み (「野生時代」2006年9月号):中華料理店・福寿楼のエレベーターで生まれて育った少年はいつしか青年となって・・・

・お探しの物件      (「野生時代」2006年10月号):客の希望する物件を紹介するのではなく、物件が求める借り手を探すことを役目とする不思議な不動産屋は・・・

・涙売り         (「野生時代」2006年11月号):私の流す涙は、なぜか楽器に潤いを与え、素晴らしい演奏を引き出す。そんな私が恋をしたのは・・・

・パラソルチョコレート  (「野生時代」2006年12月号):忘れ物を取りに戻った私を家で待っていたのは貧相な老人で、彼がおいしそうにしゃぶっていたのは・・・

・ラ・ヴェール嬢     (「野生時代」2007年1月号):決して有名ではなかったものの15巻の全集を残した作家のM。その孫というのが、出張専門の指圧師である私の大事なお得意様、ラ・ヴェール嬢・・・

・銀山の狩猟小屋     (「野生時代」2007年2月号):以前、事件があったということで買い手がつかなくて困っていたF銀山にある狩猟小屋を、洋服の仕立てを頼んでいる洋品店の女主人に勧められた私は・・・

・再試合         (「野生時代」2007年3月号):17歳の時、私が応援に行った甲子園の夏の大会。これで勝負がつくかと思われた試合は、私の気にかかるレフトのファインプレーで延長戦にもつれ込み・・・

どれも好きな話ばかりですが、小川らしいのは、彼女が好きな野球が出てくる「曲芸と野球」でしょうか。同じ野球ものでも「再試合」のほうは、らしくない。それと同じように、面白いけれど小川でなくても書きそうなのが「教授宅の留守番」と「銀山の狩猟小屋」でしょう。ズレ具合が普通です。

それに比べて小川ならではの筆頭が「涙売り」で、以下順に不可思議な状況のまま一気に読ませる「イービーのかなわぬ望み」、ちょっとエロチックな「ラ・ヴェール嬢」、子供と老人を上手に組み合わせたファンタジー「パラソルチョコレート」、そして常識を逆手に取った「お探しの物件」となっていきます。

個人的には「涙売り」でしょうね。ダーク・ファンタジーで、『薬指の標本』を思わせるような、といえば雰囲気が分ってもらえるでしょうか。切なくて、悲しくて、残酷で。これが愛?身を捧げる、って言ったってこういうのは予想しないよな、できないなあ、って思うんです。是非、お読みください。読み終わって最後にもう一度本のタイトルを見てください。納得してしまいますよ、きっと。

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紙の本

ケータイ小説しか読んだことがないというような人に是非読んでほしい

2007/11/01 21:30

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『野性時代』に連載された9つの短編が掲載順に並べてある。残念ながら書評にあまり詳しいストーリーは書き辛い。何故ならジャスト・ワン・アイデアで書かれた作品が多いから、少し現実離れしたひとつの特異な設定に基づいて展開されただけの物語が多いから。もうひとひねり、あるいはもうひと波乱、おかずがもう一品ほしいような感じもする。しかし、短く単純なストーリーが並ぶとは言え、ここにあるのは紛れもない小説世界、しかもかなり確立した小説世界である。ほんの小さなひとつの特異な設定がここまでの広がりを持ってくるところが、柴田元幸が「台所が異界と繋がっている」と評す所以だろう。
 流し打ちしかできない野球選手の話、外遊中の教授の家に住みついた国立大学の食堂の賄い婦の話、エレベーターの中で生まれて生涯をそこで過ごしたエレベーター・ボーイの話、客が物件を選ぶのではなく物件が客を選ぶ不動産屋の話、楽器の音を良くする涙を売って暮らす少女の話、少女と不思議なベビー・シッターの話、指圧師と客の老婦人の話、山奥の狩猟小屋を格安で買わないかと勧められて現地に検分に行った女流作家の話、高校の野球部の7番レフトに憧れて遠くから見守る女子高生の話──この説明を読んだだけでは不思議な話となんでもない話が混在しているように思えるかもしれないが、実際にはいずれもかなり奇妙な話である。空恐ろしい話、残酷な話も少なくない。
 そして最初と最後は野球の話であるが、この2つを読むとこの作家がいかに野球が好きかが良く解る。アメリカには「野球小説」という立派なジャンルがあるが、最後に収められた「再試合」の筆の走り具合はまさに「野球小説」の名にふさわしい見事なものだと思う。やっぱりこの人はかなり「筆の立つ」作家である。
 単純な構造の作品の羅列ではあるが、その分読みやすく、そして読みやすい分だけ安っぽいというようなことは全くない作品群であるので、普段小説をあまり読まない人、ケータイ小説しか読んだことがないというような人に是非読んでほしい気がする。小説と言われるものの中にはこんなものもあるのかときっと感心してもらえると思う。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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2007/09/11 22:44

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2007/10/07 23:43

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2007/10/09 21:53

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2007/10/15 10:25

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2007/10/17 03:22

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2007/10/17 17:06

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2007/10/24 12:15

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2009/08/24 17:35

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2008/01/04 09:36

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2008/03/12 14:19

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2008/03/14 21:19

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