紙の本
ま、えこひいき、っていうのは分かっているんですが、このお話ならシリーズ化認めちゃいます。世界に通じる冒険小説
2007/10/24 19:47
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
田中芳樹『月蝕島の魔物』(理論社2007)
私が大好きな理論社のミステリYA!装幀の素晴らしさはどの巻も同じですが、今回はカバーイラストが秀逸です。装画には、具象、抽象、写真利用、CG、など様々なパターンがありますが、ミステリYA!に、若い人なら誰もが好む洒落た本格的イラストが使用されたのは、今回が初めてではないでしょうか。
落ち着いた、セピア調の柔らか風合いは、19世紀半ば、ヴィクトリア朝の雰囲気をよく表わしていますし、描かれている人々の表情や服装も、これが古きよき時代の冒険小説だぞ、って言っているようで、実に好ましい。そんな装画は後藤啓介、マークイラストレーションは谷山彩子、ブックデザインはお馴染み岩郷重力+WONDER WORKZ。
日本人だけが異常に拘る小難しい本格ミステリーではなく血沸き肉踊る昔懐かしい冒険譚、楽しさではシリーズ中のベストかも・・・。ちなみに、英語のタイトル
Victorian Horror Adventures
The Devils of the Eclipsed Island
がついているのは、田中の生まれだけではなく、彼が目指す文学が、狭い日本という枠を越えて世界の誰もが楽しむものであることの現れだと思います。勿論、内容もしれに相応しく、意味も無く日本人が登場するといった我が国作家の手になる凡百の小説とは一線を画し、外人?だけが活躍します。海外を舞台にする以上は、ここまで割り切ってもいいでしょう、拍手!
カバー折り返しの紹介文は
「1857年、ヴィクトリア朝のイギリス。
当時、世間をにぎわせていたのは、
スコットランド近くにある月蝕島(ルナ・イクリプス・アイランド)の沖で
氷山に閉じ込められた謎の帆船が発見されたというニュースだった。
そんな中、クリミア戦争から奇跡的に生還したニーダム青年は、
姪のメープルとともに、大手の会員制貸本屋で働くことになる。
ある日、社長から言い渡された特命は、作家アンデルセンとディケンズの世話をすること。
超マイペースな二大文豪に翻弄され、きりきり舞いのニーダム青年をさらなる試練が襲う。
なんと、ジャーナリズム精神あふれるディケンズが、月蝕島へ行くと言い出したのだ。
かくして一行は不吉な噂に満ちた月蝕島へ向かうのだが・・・・・・。
物語の創造主・田中芳樹が放つ、極上のエンターテイメント。
ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作の第一作!」
です。とりあえず、これ以上の内容紹介は不要でしょう。
全八章の本文に、あとがき、地図/関係年表、参考文献リストつく構成で、各章のタイトルはいかにも西欧のよき時代の小説風。例えば
第一章
氷山に閉じ込められた謎の帆船のこと
生還した兵士が姪と再会を果たすこと
第二章
それぞれ悩み多き二大文豪のこと
大詩人の朗読が衝撃を与えること
と各々同じ字数の二つの文からなるものが八つ並びます。ともかく、いい人悪い人がはっきりしているのと、各人がうまく描き分けられています。こう書くといかにも単純化され過ぎてつまらない、と思われがちなんですが、007シリーズの面白さを連想してみてください。シンプルなことが足を引っ張らないのです。
欠点は、あっという間に読み終えてしまうこと。それと、エドモンドとメープルの年齢設定、特にエドモンドのそれがわかりにくいことでしょうか。従軍した経験などをよく読めば、31歳は妥当なのですが、むしろ25歳くらいのほうが相応しい気がはします。そうなると二人の関係ももっと楽しくなる。或はもっと年上、40歳くらいにする。そうしないと、恋愛感情がないのが不自然です。
それと、繰り返しますがイラストがいいです。ほんのりしたセピア色を基調にしたカバー画と、本の中の白黒の線描画は、色の違いだけではなく、受ける印象も異なり、全年齢対応の心地よいものとなっています。挿絵を機能をもっと評価して、大人の本にももっと積極的に取り入れるべきとは以前から言いつづけていますが、ルビとともに出版各社はもっと前向きに考えて欲しいものです。
あとがきにうれしい情報が書いてありました。この話は
第一部 月蝕島の魔物
第二部 髑髏城の花嫁
第三部 水晶宮の死神
と続くそうです。だらだらと続くのではなく、先が見えているのもいいことですが、シリーズ化が作家の都合であるよりは話の流れであることが嬉しいです。安直なシリーズ化が、小説の飯のタネ化を生み、作品レベルの低下を生んでいるのは冷徹な事実で、それを作家が読者の要望、と甘えるのは結局、読者軽視であり文学そのものへの侮蔑であることをキモに命じるべきでしょう。
紙の本
いつもの怪奇モノテイスト
2007/09/13 20:27
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近お得意の怪奇モノ
戦場帰りの叔父と姪と文豪たちの冒険物語
いつもどうりのテイスト
歴史の面白さをちりばめつつ、キャラクター達の魅力で物語を引っ張りフィクションの部分に引き込んでゆく
変わらぬ味変わらぬ旨さ
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・三部作の第一弾。読みながら一体どれだけ調べたのかと思ったが、例によってすごい量でした参考文献リスト。さすがです先生。ちょっとした時代背景とか雑学とか満載で、面白いし勉強になります。『違う時代の違う国の人のために説明すると』ありがとうございます(笑) ・叔父と姪ってどっかで見たことある気もしますが(笑)、面白かったです! 冒険活劇のジャンルかしら。続刊も楽しみです。
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クリミア戦争帰りのニーダムと姪のメープルが、文豪ディケンズとアンデルセンと共に1857年のイギリスで体験した月蝕島での冒険譚。貸本屋に就職したニーダムとメープルは国際的な文豪二人の世話を任された。しかし四人は次第に事件に巻き込まれてゆく。月蝕島の領主ゴードンによる悪辣な仕打ちに腹を立てた一行は、月蝕島と、そこに漂着した氷山に閉じ込められた帆船の秘密を暴くべく漕ぎ出したのだったが・・・。ゴードン一家と怪物の終焉を見送ったニーダムが後に綴る物語。勇敢なニーダム青年、賢く元気なメープル少女、そして実在の文豪二人がとても魅力的に描かれている。
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歴史を織り交ぜた冒険推理もの気分で呼んでいたら、後半思い出させられました。タイトルに「魔物」と入っていることに。
怪奇モノ。
しかしエンターテイメント。楽しいです。
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19世紀のイギリス〜1857年,ヴィクトリア朝のイギリスはクリミア戦争の泥沼から抜け出したが,スコットランドの北の外れのポート・グレイモアに氷漬けになった帆船が流れ着いたというニュースが噂に上っていた。バラクラーヴァでロシア軍の砲兵陣地へ突撃した673騎の生き残り195名の一人であったエドモンド・ニーダムと姪のメープル・コンウェイは,ミューザー・セレクト・ライブラリーで職を得,文豪ディケンズとデンマークのアンデルセンの守り役を任され,行方不明となった北極探検隊を捜索するアバディーンから出航するのを見送り,スコットランドで権勢を振るうゴードン大佐がクリアランスと称する農民追い出しを行っているのに触れて,ポート・グレイモアへと同行する。人が立ち入るのを禁じた月蝕島(エクリプスド・アイランド)への潜入を手引きしたマクレイン記者は,身分違いの結婚をしたゴードン大佐の長男で,父と弟への復讐のため,帆船が閉じこめられた氷山を爆破した。そこには,冷気を吐き出して全てを凍らせて喰らう化け物がいたのだった〜これが第一部の『月蝕島の悪魔』で,第二部は『髑髏城の花嫁』,第三部が『水晶宮の死神』なのだそうだ。10歳から80歳までを読者として捕らえて居られるそうです。『黒十字の幻影』『逆賊門の悪霊』『白骨塔の人狼』というタイトルが浮かんでいるのだそうだ。アルマダ海戦が一週間に渡って行われ,逃げ込んだカレーで大きな打撃を受けた末,英仏海峡をイギリスに抑えられ,ブリテン島とアイルランドを反時計回りに迂回してスペインに帰ったのだが63隻を失っていたとか・・・,英仏海峡の海底に電線を這わせて電信が交わされていたとか・・・,1ギニー金貨は1ポンド1シリングであり21シリングであった端数はチップ分だとか・・・,カブラー内親王殿下事件とか・・・,コーヒーハウスがイギリスで開店したのは1650年のオックスフォードだとか・・・,カティーサークは紅茶運搬レースで優勝した船だとか・・・蘊蓄が織り込まれている。理論社YAシリーズの一冊。しかし,今は図書室のない総合市民センターのラベルを使うとは,,市も追い込まれているのか・・・間もなくリクエストには応えないという事態にならないようにならないと良いが
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まさかのファンタジー。
普通にミステリとして読み進めて、クライマックスまでこの本がファンタジーだと言うことを忘れてました。
「そう来るかそう来ちゃうのか!」と読みながら思ったものです。
それにしても登場人物が皆素敵。
アンデルセンとディケンズのやり取りが可愛いったらない。
メープルは見ていて気持ちのいいお嬢さんです、本当に。
そんな中にたまに混じるクリミアの傷跡が生々しくて上手いなあと思う。
続刊早く出ないかなあ…!
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読み薦すすめていくにつれて引き込まれていく作品。ディケンズやアンデルセンといった史実を交えた話でおもしろい。でも、、そういうオチで良いのか!?という点で納得がいかない。
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理論社のHPから、サイン本をゲット。
白泉社文庫「超少女明日香」の解説に、「こんな話を書きたい」と構想を紹介していた。
ミステリーだと思って読んでいたので、本当に怪物が出てきて驚いた。そうか、ホラーだったのか。
物語の運び方、キャラクターの造形など「うまいなあ」とうならされるところが、そこここにある。
歴史の取り込み方も、「ちょっとやりすぎ?」な気もするが、参考文献として多くの書名を上げているので、ぜひそこから興味を持って読み進んでほしい、って気持ちが感じられる。
YA層に読んでもらいたい本。
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19世紀のイギリスを舞台にした冒険もので、YAらしくどきどき感がありました。
ラストがちょっとあっけなかったかな。
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海外小説っぽい感じ。
これほど田中芳樹に向いている作品はそうないだろう。
アンデルセン、ディケンズなど超有名な文豪たちがでてくるのも楽しい。
この作品を読んでいる時は、時代を超越して中世ヨーロッパに紛れこめた。
万人にお勧めできる作品。
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1857年、ヴィクトリア朝のイギリス。当時、世間をにぎわせていたのは、スコットランド近くにある月蝕島(ルナ・イクリプス・アイランド)の沖で氷山に閉じ込められた謎の帆船が発見されたというニュースだった。そんな中、クリミア戦争から奇跡的に生還したニーダム青年は、姪のメープルとともに、大手の会員制貸本屋で働くことになる。ある日、社長から言い渡された特命は、作家アンデルセンとディケンズの世話をすること。超マイペースな二大文豪に翻弄され、きりきり舞いのニーダム青年をさらなる試練が襲う。なんと、ジャーナリズム精神あふれるディケンズが、月蝕島へ行くと言いだしたのだ。かくして一行は不吉な噂に満ちた月蝕島へ向かうのだが…。物語の創造主・田中芳樹が放つ、極上のエンターテインメント。ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作の第一作。
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久しぶり海外が舞台となる小説を読んだ。毎回思うのだが、歴史上の人物を取り入れたり、このように海外、特に歴史的事実を扱う作品は、資料集めが大変そうだ。そのような場合、フィクションだからと、イメージだけで書かれる作家もおられるが、反対にこれでもかというくらい徹底して史実にこだわりつくす方もいる。それが田中芳樹だ。
田中さんの作品は、教科書よりずっと面白く歴史を学べる。ただしフィクションもあるので、本来ならば同じ位か、そこそこの知識があった方がより良いのだろうが(笑) というのも、私は田中さんが講談社から出版した『創竜伝』を読んで中国史が好きになったからだ。(もっとも創竜伝の世界観は、ほぼ伝記をもとにしている)
毎回、かなり気持ち悪い敵役に苦笑いしながらも、楽しんで読ませてもらうのだが、それなりに遅筆でも有名な田中さん。よく調べていただくのも嬉しいが、果たして次巻はいつになるやら?(笑) とにかく楽しみにしておこう。
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三部とはいっても、全部切り離した話のようで
これ一冊で終わってます。
児童書なので文字が大きくて読みやすい…と思ったら大間違い。
読み終わるのに1時間はかかりますw
イギリスを舞台にした話なので、イギリスの歴史や事件が出てきたり。
歴史の話は嫌いなのですが、面白い話もあって
最後まで楽しく読めましたw
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最高でした。
続刊の髑髏城の花嫁が、すぐにでも読みたいのですがいつ出るのでしょうかね。中学生の頃から待っているのですが、もう高校生になっちゃいました…。