紙の本
自身の人生を振り替える5編
2020/03/21 11:28
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
若くしてこの世を去った夏目雅子に捧げるかのような、表題作には涙してしまいます。王道の私小説だけでなく、遊び心ある短編もあって面白いです。
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図書館の文庫本の棚「あ」行~シリーズ。
「い」行の伊集院 静さん。
伊集院 静さんの本はいつも静寂があって感じがよいな、と思います。
常に男性目線の話は、女性の視点からするとへえと思うところが多く、興味深いところがあります。
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今日でアラカンの伊集院静は、1950年2月9日山口県防府市生まれの小説家。
本書は、1985年9月11日に急性骨髄性白血病つまり血液の癌でわずか27歳の若さで死去した亡き妻・夏目雅子を偲んで1990年に書かれた作品ですが、本当はもっともっと悲しく切なく狂おしく、それこそ身をズタズタに引き裂かれるような思いをしたでしょうに、小説は割と押さえた筆致で、無常観の漂うような静寂のなかにひっそりと悲痛を包み込むように書かれているようです。
おそらく彼は、その沈痛の底から這い上がるために、とてつもない心身ともの労苦を味わったにちがいありませんが、幸い自死にも到らず悲しみを乗り越えて、その後大きく飛躍して健筆をふるわれている由。
それにしても、下世話な話で恐縮ですが、その7年後に篠ひろ子と再婚する伊集院静という人は、いったいぜんたい、何故このように美しい女性に、どうしてこんなにもいい女に、もてもてなのでしょうか?
彼の読みごたえのある数々の小説は、どれもみな美しい日本語で書かれている名作といっていいものばかりですが、やはり中でも海峡三部作として上梓された『海峡』(1991年)と『春雷』(1999年)それに『岬へ』(2000年)の3冊が、もっとも序破急にすぐれて豊かな、物語性に富んだ傑作として面白く、私は好きです。
こうしてずいぶんと伊集院静の小説に接してきて、いま思いがけずふと感じるのは、その哀愁感に共通する立原正秋の面影がちらつくことに気がつきましたが、たぶん気のせいだと思います。
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五作品が収録された短編集。「乳房」と「クレープ」がいい。
久世光彦さんが解説で伊集院静を太宰治に重ねている書評に納得。「ヴィヨンの妻」的世界を伊集院静が書いたらそれは僕だって読んでみたい。きっと面白いんだろうな。
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表題を含む5編を収録。愛しい妻は癌に冒されていた表題の"乳房"、別れた娘と出会う"クレープ"は秀逸。以下メモ。(1)トランプの総とっかえのように、里子の肉体とこの女の肉体を変えることはできないのか(2)娘の声援の仕方は、ひとテンポずれていた。私はそれに合わせた。二人とも不器用なのだと思った。
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私にとって「初・伊集院静」となった作品。
表題作が、沁みた。
本を読んで泣くなんて、何年ぶりかわからないくらい。
大人な描写。
読んでから思い出したのだけど
夏目雅子さんのダンナ様だったのか。
他の作品も気になるなぁ。
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作者自身の過去から発想を得たのが幾つかみられる。短編集ではあるが、内容は少し重いものが多いためか少し読むのに時間がかかってしまった。
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伊集院静さんの作品、初めて読みました。
心の内側を描くとは、こういう作品を言うのか、と感じました。
どの作品も、人が生きていく寂しさが
優しく描かれています。またラストが
美しく余韻の残る締め方ですね。
どれも良かったけれど、「桃の宵橋」と
「クレープ」が印象に残りました。