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紙の本
真の豊かさについて考えさせられる本
2010/10/26 01:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は著者が「信長の棺」で作家デビューする遥か前の平成元年から三年までの間に日本工業新聞に「豊かな生き方の人事学」と称して連載していたものを収録した本である。当時はまだサラリーマンだったとか。テーマは都会での生活や、老い、働き方、経営、遊びなど多岐に渡る。本当に20年も前に書かれたのかと思うほど、その内容は古さを感じさせない。それほど著者は未来、時代の先行きが見えていたということになる。驚くべきことである。しかし、見方を変えれば逆に、20年間、日本は何も変わらなかったとも言える。
「おわりに」で本当の豊かさを実現するための処方箋を3つ挙げている:
・家庭を砦として戦うこと(配偶者も戦力として)
・生活に棲み分けの知恵を持つこと(身の丈に合った生活水準で暮らす)
・ポータブル・スキルを持つこと(複合スキル、あるいは稀少価値である職人技術)
これらは豊かさを実現するためと同時に、経済が低成長の今ではサバイバルに必要な必須科目とも言えるものかも知れない。
巻末には著者と東大教授・山本博文との平成19年の対談が収められている。その締めくくりとして著者は「豊かさは効率優先を捨てなければ手に入らない」と、無駄やゆとりの必要性を説いている。経済が成熟し、日本は物質的な豊かさは手に入れた。従って二人の対談でいう豊かさは精神的な豊かさを指している。これからは身の丈に合わせて、物心両面でほどほどに豊かであればいいのではないだろうか。
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