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堺雅人さんが「篤姫」の撮影前に読んだと言っていたので、なんとなく買ってみたら、とても面白かった。佐倉藩の留守居役(藩主の留守を守ったり、他藩との外交政策を行う役目)になった依田学海の日記を通して、幕末の様子が見えてくる。大政奉還後の混乱が、いち譜代藩の立場から感じられた。江戸では自分たちが官軍だと思っていたが京都では賊軍扱いなど、価値観がガラっと変わる時代の中で生き残ろ
うとするのも大変だったろう。本を堪能するには私の知識が少な過ぎたので、もっと知ってから改めて読むと、さらに面白く感じると思う。
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ちくま新書から刊行された『最後の江戸留守居役』を新潮文庫化するにあたり改題されたとのことである。
幕末の騒然とした時期に、突然江戸留守居役になった佐倉藩士依田学海の日記を読み解いて解説したもの。
留守居役は藩の外交を担う業務も含む役職だったらしい。
面倒な留守居役同士の交際の愚痴なども日記に綴られている。
突然の大政奉還で慌てる藩の運命を担って京都へ赴いたときのこと、鳥羽伏見の戦いで負傷した近藤と土方に江戸城で出会ったことも日記にみえるらしい。
また、明治新政府が公務人(公議人)、公用人という役職を設けて留守居役の職能を分離したことで江戸の幕藩体制が終わりを迎えた、ということも解説されており、非常に興味深いものだった。
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留守居について書かれたノンフィクションあるいは歴史書に足る本としては、江戸時代を通じて留守居がどのような役割を果たしたかを整理した、山本博文氏の『江戸お留守居役の日記』 (講談社学術文庫) や、——メインのテーマではないが——留守居の役目を仰せつかって、仙台藩から幕末の京都に派遣された大槻磐渓の様子を描いた、高田宏氏の『言葉の海へ 』(新潮文庫)が捨てがたい。
本書は風雲急を告げる幕末動乱期の盤渓と同時期に江戸・京都に派遣された佐倉堀田藩留守居役「依田学海」の評伝を扱ったものである。
詳しく述べる余裕はないが、例えば、禁門の変、長州征伐から蛤御門の変、大政奉還、鳥羽伏見の戦へと目まぐるしく政局が変わる中、学海は京都の政情を逐一本国(佐倉)に報告し、その指示を仰いでは次の行動を執るのだが、飛脚の足でも京・佐倉間は三日がかり、評議の結果が京都に届くのは早くても一週間・十日後である。その間に情勢は変化して、指示は何の役にも立たない。
今の即時連絡が可能な通信事情と、当時が異なることにはなかなか気づかない事だ。この点において、京都周辺の大名たちと江戸・東国の大名たちの行動に齟齬があったことが頷ける。
依田学海はもともと漢学の学者であったが、幕末に自藩反対派から処分を受けた盤渓と異なり、維新後も生き延びて、漢学者としての業績を残している。また、鷗外が師と仰ぐ人物でもある。本書は学海の『学海日録』から丹念に幕末の彼の行動を追ったもので、幕末・維新に興味のある読者には必読の書と言えよう。