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森達也の本気が見られる本。
長々と綴られたエッセイで、内容は多岐に渡るので好き嫌いがあるかもしれない。
やっぱりこのひとの理不尽を許さない態度、一貫した姿勢、やさしい感覚が好きですね。
タイトルも、あったかくていい。ひさしぶりの森達也本でした。
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オウム真理教を被写体にした「A」という映画についての内容が多い。
しかし、当該の映画を観ていなくても十分に通じる内容である。
過去に文芸誌等色々なところで発表されているものを集めているため、内容的に重複することがあった。
しかし、それらは著者が本当に伝えたいことであり、何度でも言いたいことなのだと思う。
例えば、オウム真理教の信者や戦争に加担した兵士たちは、一見凶暴であると思いがちだが、彼らは、私たちと同じ優しい善良な一般市民である。
そして、彼らが人を殺めるのは悪意ではなく、むしろ善意だということ。この一文を読んだ時には鳥肌が立った。
悪意ではなく、善意が人々を傷つけると思うと、やるせない。
けれど、オオム真理教に関していえば、彼らは普通の人々であり、単純に糾弾するだけでは、なにも解決にならない。表面的ではなく、もっと根の部分を見なければいけない。
ドキュメンタリーを撮るということのジレンマは、とても興味深く、著者の立場だからこそ感じる葛藤は、読者の私にはとても引き受けられそうもないほどで、覚悟を持って映画を撮り続けている著者の凄さを感じた。
著者が言うように、たまには一人になって考えることも大切だし、一人称で考えることも大切だと思う。
世界はもっと豊かだし、人はもっと優しいと皆が認識することで世界はもっと良くなるのだろう。
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オウム真理教の信者たちを被写体にしたドキュメンタリー「A」「A2」をつくった森達也さんの著書「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」。
この本の中で、森さんが繰り返し書いているのは、オウム真理教の信者たちのほとんどが善良で、穏やかで、純粋な人たちであるということだ。
しかし、そういう善良で穏やかな人たちが、「組織」を作った時に、何かが停止して、暴走することがある。
そして、穏やかで善良な人たちが、限りなく残虐になれる。
「組織」といえば、「学校」や「企業」が思い浮かぶ。
小さな単位では「家族」もそうかもしれない。
森氏は、組織に属する限り、善良で穏やかな人が残虐になる可能性(リスク)を、どこかに抱えているという。
重大な事件や犯罪が起きると、犯人の成育歴や動機を探ったりする。
自分とは「別の」人間であることを確認して、安心するのだと思います。
自分には関係ない。
悪いのはアイツ。アイツのせい。
そんなふうに考えて、
それ以上の思考を停止をしてしまうのは、とても危険だと感じています。
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誰もが近寄りたくない人々や集団にスポットをあて、ノンフィクションの映画作品を作り上げる森監督。
多様性を持った人々が世界には数多くいるが、自分の身近にそういった人が近づいてくると本能的に避けようとするのは否めない。
きっと自分もそうするだろう。自分の理解が及ばないものを遠ざけようとするのは自然なあり方である。
それでも他人の気持ちを理解する努力は怠らないようにしていきたい。他人の痛みや心が100%分かるようになれるとは絶対言わないが、苦しんでる人や助けを求めている人に誰も手をさしのべない世の中は悪夢でしかないからだ。