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「悪人」を凌ぐと帯に書いてあったので。ただ、折角のミステリアスな構成が帯で若干ネタバレ気味。大学の野球部部室での集団レイプ、した側とされた側のその後の心のありよう、みたいな。重苦しいけど、救いはある。
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『陰日向に咲く』の後に読んだせいか、物語の濃さにぐいっと引き込まれた。やはり小説家が書く文章は濃さが違う。そもそもぼくは吉田修一の文章とは波長が合うようだ。『悪人』と比べてどうのこうのという感想は特に無い。悲劇を描きながらも、淡々とした筆致がこの人らしい。淡々としたタッチだからこそ、ステレオタイプで一元的な感情だけで終わらずに、心を抉ってくる。わかりやすさやカタルシスはないけれども心に残る一冊だった。
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きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。長い歳月を経て、“被害者”と“加害者”を結びつけた残酷すぎる真実とは―。
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一緒に不幸になろうと暮らし始めたレイプ元被害者水谷夏美と元加害者尾崎。そんないびつな二人の関係も、「幸せになりそうだった」から、近所にある渓谷を形成している桂川にサンダルを流してしまった日を経て「さようなら」という夏美の置手紙で終止符が打たれる。
学生時代のきっかっけとしては軽いノリでの出来事がここまでいろいろな人のその後人生に暗い影をおとしいつまでも立ち直れないでいる姿が描かれる。
一緒にいると幸せになる、別れれば許してしまうことになる。その狭間から抜け出そうとする夏美と「彼女は俺を許す必要なんかない」と彼女を探し出そうとする尾崎。二人はどうなるんだろう。
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やるせないストーリーでありながら、ラストに救われる。美しくも悲しい小説。[姿を消せば、許したことになる。一緒にいれば幸せになってしまう]
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『パークライフ』において純文学的天才をみせつけ、『悪人』において大衆文学方面でも比類ない才能があることを示したというのに、この人はどこまで作家としての可能性を広げようというのでしょうか。これぞ、小説。面白く、しかも考えさせられる。余韻を楽しむという意味でも抜群の作品です。この内容の濃さをこの本の薄さに凝縮できるのはプロの業でしょう。次の作品で、何を見せてくれるのか、楽しみというより恐ろしい気がします。
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「告白」を読んだ時のような、何ともいえない後味の悪さが残った。一見、救いようがありそうにみえて、実はとても複雑でそんなにハッピーではない感じ。(2009/1/11読了)
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地図男のあとに読んだからか、吉田さんの文章はとても安心した。シリアスだったけど、とてもよかった。人間ってむつかしい。かなこは出て行くかもしれないし、出て行かないかもしれないし、出ても戻ってくるかもしれないし、出て行くか決められないかもしれない。許すとか、許さないっていうのは、一生決められるものじゃないのかもしれない。許そうとか許さないとか、頭や心で決められるものなのだろうか。こういうことを表現した、小説っていう表現の力を感じた。吉田さん、すごいです。
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2/12 吉田修一はなんで!何を書いてもおもしろいかなあ。とくにその「物語の世界に引っ張り込む力」には脱帽。ほんとに1行目からやられます。わからないっていう気持ちに変に解決をつけないところと、どうするんだろ?と最後まで思わせるのもすごい。
「私がいなくなれば、私は、あなたを許したことになってしまうから」
姿を消せば、許したことになる。一緒にいれば、幸せになってしまう。「さよなら」と書き置きしたかなこの言葉が、渡辺の胸に重く伸しかかる。
ってとこ。セツナス。この小説の要だったと思う。
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初めてこの著者の作品を読んだ。なかなかおもしろかった。異常な関係の中で許すこと愛すること…ちょっと異常すぎて普遍性はないんだけど、深かった。
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きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた15年前の「ある事件」。長い歳月を経て被害者と加害者を結びつけた残酷すぎる事実とは…(帯より)。夏の暑さが執拗に描かれている。あの嫌な暑さの感じが、男性の衝動のイメージなのだろうか。読んでいて息苦しくなります。そのしんどさが事件の重さを象徴しているかのようです。読後感は正直よくないけれど、その内容には深く考えさせられます。「息子ならそんなバカなことで一生が台無しになると思うとガッカリする。娘なら、相手の男、ぶっ殺すよ」(意訳)
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帯のキャッチコピーは常々誇大気味に感じるが、これはまさに帯にあるとおり、「人の心に潜む「業」を描き切る。『悪人』を凌ぐ最新長編。」な1冊だ。
『悪人』は冗長とも思えるラストへの道行きがそれはそれで物語の哀しさを感じられたので、☆5つにしたと思う。が、本書はそれ以上の哀しさが感じられ、単純に評価すれば、『悪人』以上だという思いはある。とはいえ、集団レイプの被害者とその犯人の一人が時を経て、不幸になるためといえども、同棲し、感じてはならない愛情を感じつつあるという設定が気にかからないはずはない。ということで、総合的に評価すれば☆4つ。
しかし、ひとつの物語とした場合、めぐり合わせの不運、そして複雑な心境の変化などに、業や宿命ということを感じずにはいられない。人の幸せって難しい。
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『悪人』から吉田修一の作品は一つの変化を果たしたようだ。
今後、吉田修一は初期作品ではなく中期に入ったと言える。
個人的には『悪人』の方が衝撃度は強かった。少し展開が読めたのが残念。
でも、今後もこの方向性で名作を書いてほしい。
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静かな田舎の住宅街で起こった幼児殺人事件。被害者の母親は過剰にマスコミに登場し、悲劇のヒロインを演じるが、世間からは彼女は最有力の容疑者と見られていた。マスコミも逮捕に備えて、彼女の家を取り囲む。少し前にどこかで実在していたようなシチュエーション。しかし、この小説は予期せぬ人物にスポットライトを当てて、意外な展開を見せる。
「さよなら渓谷」と、タイトルはさわやかだが、愛憎入り交じった登場人物たちがうごめく。ある事件の被害者と加害者が偶然、出会い、結びついてしまう残酷さは読んでいてつらくなる。彼らが一緒になった目的が次第に明らかになっていく展開は新しい形のミステリーだ。「不幸」と「愛」、正反対な2つの混ぜ合わせ方が絶妙。
以前読んだ「悪人」もそうだが、吉田修一って人、周囲からは理解されない不思議な人間心理を描くのが巧い。
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幼い子供が亡くなった。よくある事件だった。ただその背後には様々な思惑があった。
事件を取材していた記者と、事件のあった家の隣家の夫婦の視点が交互に入ります。まんまと、びっくりしました…。
「しあわせになるために一緒にいるわけじゃありませんから」