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紙の本
タイトルだけで★五つ、おまけに中身も★五つ、合計10、なんてね、思わず言いたくなります。こんな題名つけることができるの、シーナさんだけ?
2008/09/30 20:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル見ただけで心がウキウキしてしまう、そんな本の典型がこれじゃあないでしょうか。しかも森川弘子描くカバー画が秀逸で、おまけに平野甲賀が装丁をしています。平野が書いたであろう題字だけだって売れるだろうに、著者が椎名誠で、絵がよくて、本の題がいい、小ぶりのハードカバーっていうのもいいし、値段も手ごろ、売れないわけがありません。
そんな刺激的な組み合わせなのにカバー折り返しの言葉は
暑いところから寒いところまで、世界中のあ
まり人の行かないところへ行く行動派作家、
シーナ・マコトが、もし……が……だったら、
という思考をアレコレと突き詰めていったと
したら――フシギな思考がくねくねと脳ミソ
を刺激するエッセイ集。
と極めてフツー。そこで私は収められたエッセイすべてを初出とともにご案内、ドーダ!
・思考のくねくね(SFマガジン1996年5月号):どうして「仮面」が流行しないのか、っていうか普通、考えないでしょ・・・
・モグラの歯ぎしり(SFマガジン1996年7月号):新潟の寺泊での撮影苦労話が歩くビルのことになって・・・
・ワニ目と未来羊(SFマガジン1996年9月号):なぜ羊の顔は同じか、という恐怖はわかる。アジアに来た白人の恐怖も・・・
・羞恥と糞便(SFマガジン1996年11月号):そうか、中国のあの便所は昔からの伝統じゃないんだ・・・
・上か下か(SFマガジン1997年1月号):NYの地下鉄のトンネルに沢山のホームレス、うーん、SFじゃないんだ・・・
・樹の上の闇(SFマガジン1997年3月号):超能力者を前にした人間の反応は、宮部みゆきや半村良ならずとも・・・
・宇宙人をあそぶ(SFマガジン1997年5月号):惑星の精密な想像画があるんだから、生きものにだってリアルなものがあっても・・・
・超なまこ(SFマガジン1997年7月号):そうか、小説はテーマ、ストーリー、キャラクターか。本論以外で納得・・・
・怖いもの(SFマガジン1997年9月号):シーナさんの精神が絶不調、それが信じられない・・・
・持っているもの(SFマガジン1997年11月号):世界物持ちランキングで日本がトップに立てるものは・・・
・笑う犬(SFマガジン2007年4月号):シーナさんの奥さんは実際の鳥葬まで見ちゃうんだ・・・
・長さ一キロのアナコンダ(SFマガジン2007年6月号):いやらしいカンジル、というのは上手いタイトルだなあ・・・
・這うもの吸うもの齧るもの(SFマガジン2007年10月号):アメリカの西海岸のナメクジはバナナみたいな大きさ・・・
・アルキメデスの螺旋とカブトムシはどっちが強いか(SFマガジン2007年8月号):大蛇とアリゲーターの死闘の結末・・・
・無言飛脚がやってくる(SFマガジン2007年12月号):もし空を飛ぶことができたら?ペリカン便には笑います・・・
・地球発熱衰弱状態(SFマガジン2008年2月号):アメリカと中国が環境破壊の元凶で、モラルの点で中国に問題が・・・
・小便の王様をたずねる旅(SFマガジン2008年4月号):極寒の地ではオシッコの最中に本当にそれが凍る・・・
・あとがき:いやはや我が家のご主人も、似たようなことをよく言ってますが、行動力はゼロ、シーナさんは偉い・・・
ちなみに目次というか本文の章の順番と、巻末の初出一覧では「這うもの吸うもの齧るもの」と「アルキメデスの螺旋とカブトムシはどっちが強いか」の順番が逆になっています。間違いなのか、発表順を優先したのかは分かりませんが、これは極めて異例なこと。正直、ハヤカワさんのミスだと思います。やはり本文の順番に初出一覧は並べるものでしょう。
とはいえ、内容は立派で装丁を裏切りません。著者の思い入れのあるハヤカワ書房だから力が入ってる、なんていうのも変ですが、10年もの期間に及んで書かれたものなのに、他のエッセイ集とダブリがない気がする(ま、私がシーナの本を全部読んでいないので断言できないのが弱いですが)。
チベットの鳥葬の話はどこかであったかもしれませんが、奥さんがそれを見ていたというのには記憶がない。中国のトイレ事情は他でも読んだ記憶がありますが、環境破壊の話とあわせると彼の国の事情がかなりリアルに浮かんできます。バナナみたいなナメクジっていうのも初耳、っていうか見たくもないし想像もしたくない。
それとシーナさんの精神が絶不調というのがアリエネー、です。男の更年期障害、なんて思ったりします。ちなみに1944年生まれのマコトさんは「怖いもの」を発表した1997年には、53歳と、ちょっと早いかも。ま、2008年にはオシッコの大冒険をやっているので、元気になってはいますが、この時64歳、逆の意味でダイジョーブ?なんて思ったりして。
文庫になるのを待ってもいいですけど、今買って、墓場にもっていって、思わず嬉しくなって生き返りたくなる、そういう一冊です。長さ一キロのアナコンダ、ナンダコラ・・・
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