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時が滲む朝 みんなのレビュー

139(2008上半期)芥川賞 受賞作品

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みんなのレビュー81件

みんなの評価3.5

評価内訳

81 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

アイ・ラブ・国家。

2008/09/22 22:37

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ばー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 久々に文学らしい文学を読んだ気がした。日本のお家芸である自然主義をこんなにも力強く、スパッと書ききったのが中国出身の女性であることは、なんとなく寂しい。とにもかくにも読むのが止まらなかったのは事実。日本の最先端をずばーっと走っていくのもいいが、たまに振り返ってみると、こんなにも良い文学があることに気付く。やっぱり芥川賞、捨てたもんじゃないなあ、と小説を読む楽しさを取り戻した気がする。これだよこれ。こういうのを今の時代に読みたかったんだよ。

 第139回芥川賞受賞の今作の作者は楊逸(ヤン・イー)。第138回の芥川賞候補になり、話題になった。その時は「日本語のレベルが今ひとつ」という批判も受けたが、今作はその課題をクリアしていると言えるだろう。むしろ、拙さという技術を使っているようにも感じる。

 ものすごく気になるのだが、私たちは時代に関わっていると言えるだろうか?
 この小説を読んでいる間、ずっとそんな自己問答を繰り返していた。
 天安門事件から北京五輪までを背景に、中国の民主化を目指す主人公の希望と挫折、回復を描く、この『時が滲む朝』。
 私のような一人の日本人が苦い気持ちで胸に浮かんだ感情は
「なんてうらやましいんだろう」
 の一言に尽きる。
 主人公の浩遠(ハウ・ユェン)はじめ、登場人物は一言で言って「熱い」。今の日本で言う所の「イタイ」と紙一重の熱さ。特に大学時代の頃の彼らの会話は読んでいるこちらまで気恥ずかしくなってくる。その気恥ずかしさを打ち消しているのは彼らの純朴さ。いやらしさが無い。飾り気がない。
 「中国の民主化」への情熱が、浩遠の理想と現実のギャップからの苛立たしさ、絶望を際立せるのはもちろんのこと、この純朴さが、なんともいえない良い味を出しているのである。
 三田誠広『僕って何』、島田雅彦『優しいサヨクのための嬉遊曲』などの作品が思い浮かんだ。どちらも1970年周辺、まだ日本が時代と関わっていた頃だ。つまり、一人ひとりがなにかをしようとしていたし、なにかが出来ると信じていた頃だ(と思う)。
 それらの「行動を起こすという行動」がちょっと辟易されるような、そもそも「行動を起こすという行動」さえも相対化してしまった現代社会の中では、『時が滲む朝』のようなタイプの小説は、古めかしいようにも思えるかもしれない。
 だけど、ええやん、どっちかと言うと今の方がおかしくない?と私は思うのである。

 お国柄、と一言で言ってしまうのは軽すぎるし、それじゃあ日本の寂しさばかりが目立ってしまう。おおい、悔しくないのか、寂しくないのか、日本人。こんなにも自分の国を憂う人種がまだまだ世界にはあるのである(とりあえず暴食経済やら、パクリ文化とかは脇に置いて、この小説だけで考えて)。プチナショナリズムみたいな日本万歳はいらない。(笑)がつく日本万歳もいらない。暴走しない、もっと素直な愛国心が欲しい。
 この文章のような素直で素朴な文学を読むと、無性にうらやましくなるし、なんだが日本文学の将来とかどうのこう言うのが空しくなっちまうんです。嗚呼。もう日本人じゃあこういうのは書けないのかな。

 そんな一冊。是非ご一読を。

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紙の本

瞳に滲む時のいろ

2009/04/27 08:55

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る

天安門事件前夜から北京五輪前夜までの
中国と日本を舞台に
熱き志をもつ謝志強と梁浩遠のふたりの
男子学生を軸にした
民主化をめざす青春と挫折のものがたり――。

というのが
帯から得られるおよその前知識である。

実際
わたしは識らないけれど
かつて日本にも
学生運動があったように
熱い志をもったエリートの学生たちが
民主化運動を進めようとし
体制にかなわず挫折し
ほろにがく現実を生きていく
そんな話ではあるのだが。

横暴なる体制vs抑圧された民衆というような
わかりやすいカテゴリーでは語り得ない
実はしたたかな現実感覚が
ニュートラルなまなざしで描かれていく


時が滲む朝という
タイトルに呼応するような
素敵な比喩が
p13にある

主人公のひとり梁浩遠の父が
息子の大学合格の報せをうけた折の
1シーン

「さっきから読んでいた本のページを全くめくっていない父は
 いつもの重い顔つきの上に久しぶりに笑いが弾け、苦労に
 よって刻まれた目じりの皺一本一本に、洗い落とせないほど
 黒ずんで溜まった時の色が、暗く淡い光に照らされ、
 穏やかさを漂わせている。」

この父もまたかつて北京大を出た知識人の
エリートであったが体制への抵抗の末
農村へ下放され教員として暮らしているのであるが……。

幾度も朝が訪れ
ひとが育ちひとの親となり
青年の熱い想いを心に宿しつつ
時が過ぎていく

黒ずんで溜まった時の色は
理想への想い半ばに
現実を生きる者の
こころと、その瞳の色に宿る
そして
それらは決して険しくはないが
暗くもなく
消えもせず
父となった息子に受け継がれていくのだろう

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紙の本

ご存知の方が大半だと思うが著者は中国人で外国人作家初の芥川賞受賞作。こういう作品を読んでみると何故か“頑張れ日本人作家!”と叫んでしまう自分に遭遇する。やはり登場人物と同様、“志”を持った作者の熱意が読者に伝わるのだ。芥川賞が門戸開放した記念碑的な作品とも言えるし、日本人作家に強い危機感を促した意義深い作品とも言えよう。

2009/06/23 19:27

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

第139回芥川賞受賞作。外国人作家としては初の受賞で話題になった作品である。読む前に過去の芥川賞のことが否応なしに思い浮かんだのである。たとえば綿矢りさや金原ひとみがダブル受賞した時のように話題性だけが先走りした芥川賞だったのであろうかと危惧したのも事実。どちらかと言えば、特殊で偏狭で狭い世界を描いた作品が多い近年の芥川賞受賞作品。

そういった意味合いにおいては、登場人物や前半描かれている世界が中国の民主化なのであるがとても共感できるのである。ちょうど今から20年前の天安門事件のことが描かれている、本当に光陰矢のごとしですね。懐かしいテレサ・テンの歌やそして後半出てくる尾崎豊の歌。

私自身、尾崎の大ファンだったわけでもないが外国人に影響を及ぼしているところは少し驚きつつも嬉しさもある。この小説の主人公達の母国中国での純真な志を目の当たりにすると、なぜか尾崎の死が少し霞んで見えるのも事実なのであるが、日本と言う国の平和的な象徴だとも言えるかな。そして、命は落としたが外国人に対してでもそのひたむきな気持ちの象徴として受け入れられている尾崎豊の歌。感慨深いですね。
少し小説の本体の内容からは脱線したが、要するに尾崎の歌に夢を託し心を奪われるほど純真無垢な世界が描かれているのである。結果として、民主化の夢が破れて日本に来て少しずつ変化していく梁浩遠。
だから私たち日本人の日常からしたらかなりかけ離れてますよね。
そこがこの作品の魅力なのですわ。

絶えず愛国心を強く持って生きつつ社会に順応して行く姿。彼の変化は大きな人間的成長であるということを見届けれた幸せな気持ちを忘れてはならない。日本に来てからの梁浩遠は失望しても落ち込まずそれを希望に変えていますよね。

本作はその文章の稚拙さ(?)などから一部賛否両論の声も聞く。だが、日本人でこれ以上の文章を書ける人が果たしてどれくらいいるであろうか。そう重箱の隅をほじくることをやめて、大きな気持を持って読みたいはワールドワイドな作品なのである。わずか150ページの間に人生において学ぶべきエッセンスがギッシリ詰まってます。いろんなことをひきずっているあなたも是非手に取ってください。

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2008/07/16 20:48

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2008/07/27 11:50

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2008/07/30 04:02

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2008/08/18 01:56

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2008/08/31 09:05

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2008/11/17 14:32

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