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ネイティブでない人の日本語として考えればかなり流暢ではあるのだけど、そうした正しすぎるがゆえの不自然さみたいものを感じた。
この作品を評価するには、そうした言葉自体の持つ摩擦やざらつきをも含めて考えるということなのだろう。
中国のことを中国語ではなく、あえて強みにはならない他国の言葉、それも日本語で書くことの意味。
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まだ日本語が完璧でないのか
意味のわからないところがある。
物語としては 未成熟であるが・・
テーマは 大切なものが 含まれていると思った。
『中国の民主化』というのは、
どんなカタチで進んでいくのだろう。
それを リアルに描いた 作品であることに評価が出来る。
中国を愛するがゆえに 政府から弾圧される。
その矛盾が どのようなものか?
田舎にいる 謝志強と梁浩遠と言う二人の優秀な青年が
秦漢大学中国文学の合格を待つところから始まる。
浩遠の父親は 北京大学の哲学科のエリートであったが
『資本家や地主だからといって悪い人だと
決めつけるには 弁証法に矛盾する』
と言って、右派の烙印を押され 西北の農村に 下放させられた。
甘凌洲教授は30歳代で 詩人としての才能もあった。
浩遠と志強は 甘教授に心酔して行く。
そして 学生を中心とした民主化運動の群れの中にはいっていく。
テレサテンの歌が 腐敗だと思う状況だった。
アメリカのように民主主義を実現するという ことを 考えた。
その頃の学生運動は 市民からも支持され、
食物などが支援されていた。
その中には 白英露という
英文科の女性がいて 二人は好かれていくが
志強のように はっきりと言うことが出来ない 浩遠。
英露の着ている「我愛中国」に感化されて
I LOVE YOU 中国 のTシャツを作る二人 。
それが 記念となるのであった・・
6月3日 天安門広場では 反対する学生が 弾圧され殺された。
身動きできなくなった 二人は 酒を飲むしかないといって
料理屋に行くが そこで馬鹿にされ 喧嘩となる。
二人は 大学処分を受けてしまう。
大学でしっかり勉強しようと思っていた二人が 大学を追い出され
そして、肉体労働をしながら・・・
浩遠は 残留孤児の 梅と結婚し 日本で生活をしている。
日本で、中国人の民主化について組織に加わり、
中心的な存在になるが・・・
日本にいる中国人は 利己的なものが多く
組織的には 集まらなくなっていく。
浩遠には 尾崎豊の歌が 彼を励ますものであった。
甘教授は 家族を中国に残してアメリカに行き
英露は フランスにいると聞いていたが、
甘教授も フランスにいることを知る。
そして 中国に戻る と言う甘教授を日本で迎えあったときに
英露も一緒にいた。
甘教授は 息子の手紙を 浩遠に見せる。
『父さん、昨夜母さんは息を引き取った。
目尻に涙をひとつ残したままだった。
きっと僕が責任のある父親に恵まれることがないのを
最後まで悔やんだのだと思います。
妻も息子も省みることが出来ない、
そんな人が国を愛せるのだろうか。
これは僕の最後の手紙です。』
浩遠にも梅との間に
さくらと言う長女と 民生と言う息子がいた。
甘教授は 中国で、小学校の先生としてやり直すと言う。
民生は 姉のさくらに 甘教授がどこに行くと聞く
「中国よ」という・・
民生は 「中国ってどこ?」ってきく。
さくらは 「パパのふるさとよ」という
民生は 「パパのふるさと? ふるさとって何?」
浩遠は 「ふるさとはね、自分の生まれたところ、
そして死ぬところです」という
民生は 「じゃ、たっくんのふるさとは日本だね」といって・・・
小説は終わる。
この二つのフレーズを言うために
この物語はあったのだろう。
国を愛するとは?(愛国) ふるさととは?
この二つを 上手く纏め上げた作品と言える。
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授業で取り上げる内容なので、勉強しなければ・・・と思って読んでみた。
中国の学生運動・民主化運動の一端が描かれている。
天安門の件も出てくる。6月4日、中国ではネット上でも厳しく規制されていたというニュースを見たばかりだったので記憶に新しい話だった。
これをnonnativeの楊逸さんが書いたのは本当にすごい。
そのへんの日本人よりよほど日本語をよくわかっている。
芥川賞受賞作というだけあって内容は難しかったけど、「言語を学ぶということ」という点においては良い収穫ができた。授業でも話してみよう。
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日本語を母国語としない作家として初めて芥川賞を受賞した作品。文革と天安門事件を題材に中国の民主化に奮闘する学生の青春と挫折、挙句の果てに国を棄てるまでを淡々としたタッチで描写。中国に生まれ育った人にしか書けない小説やね。
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2008年芥川賞受賞作。明確なストーリーがあって、それをきちんと追っていく文章であり、日本語表現の多様性に挑戦しているものではない。ストーリーも天安門事件に絡められているから感じるものがあるけれど、題材勝ちの印象を受けました。知識としてあった中国の民主化運動について、物語を通して触れられたことはよかったですが。ジャーナリズム的な価値以外の、文学性というか力を持った文学というか、そういうものが感じられない。芥川賞に値するのか、日本語文学の未来の可能性を開くための受賞か、知らないけど、どうなんだろう。
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高い志を持って秦漢大学に入学した浩遠と志強。しかし、学生運動に翻弄され、二人の運命は大きく変わっていく。
本文中に尾崎豊の「I LOVE YOU」が盛り込まれ、主人公の戸惑いや悩みを代弁しているようだった。
秘かに香港映画好きな私にとり、「射雕英雄」、「上海灘」の単語に萌えました。
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物語は、1988年、中国西北部の農村に住む若者が大学入学試験を受けるところからはじまり、天安門事件を経て2000年の日本へと至る。
一家の期待を背負って大学に入学し、将来への希望に燃える”二狼”の姿が、日本語学校で見た留学生たちに重なった。彼らは昨今の反日運動をどう見ているのだろうか。
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日本語を母語としない作者として初めての芥川賞受賞者となった楊逸(ヤンイー)さん
新聞のエッセイなどでその筆力はすでに知っていた。まずは受賞作を拝読した。
中国の民主化運動に翻弄された登場人物たち。民主化を願う気持ちはどこか青臭くせつない。
民主化運動が熱を帯びるしたがい、どんどんのめりこんでいく。大声で演説する、ハンストもする。そして突然
当局から活動の中止を言い渡され、些細ないさかいから大学も放校となる。大学に入学したときは向学心あふれる若者だった人たちが
些細なことで、居場所を失う。運動家は別に特殊な人ではなく
何となく中国共産党一党独裁の政治が問題だと思っただけなのだ。
政治活動の空白化を描くことで楊逸は民主化への人民のの希望が決して反革命などという大それたものではなく
市井の人々の希望なのだと説く。この様な中国の民衆レベルでの政治の空白状況は日本も同様である。
民主化運動に明け暮れ、敗れ、さまよった人々が再会し、過ぎし日を思い出すとき時が滲むのであった。
なかなか上手。
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08年の芥川賞受賞作で、その時に読んだきりだったんだけど、改めていまの香港で起きていることを踏まえつつ、本棚の片隅にあったので軽く読み直し。当時から小説としての完成度は議論になった記憶が有るけど、改めて読んでも僕は嫌いじゃ無い。僕の周りにも天安門の時に現場にいて後に日本へ来た人、香港人で香港でサポートプロテストに学生として参加した人、何人かいる。彼らが今回の香港での出来事をどう感じるか、この小説が少し解説してくれる。結局、みな悶悶としたまま生きてる。今純粋に信じて動いてる学生達が、将来どんな感想を残していくかな…。今だから再読の価値有り。
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苦学の末、激戦を勝ち抜いて名門大学に進学した、梁浩遠と謝志強。学生運動に進み、天安門事件に遭遇、挫折と別れ、再会までを描く力作です。
描写は淡々として、少し薄っぺらい感じがしました。もうちょっと描いてほしい、せっかくの題材が勿体無い気がします。私には馴染みの無い言い回しが偶にでてきますが、日本語はしっかりしています。漢文が今となっては読み取れないのが悔しいです。
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それほど長くないので半日か1日で一気に読めます。ストーリー展開が早いせいか、主人公に感情移入できませんでした。特に天安門事件からの展開がやや唐突すぎる感じがしました。食堂で喧嘩して大学を退学になってしまうところとか。両親の期待を背負ってあれだけ頑張って入った大学なのに、そんなことするかっていう感じです。
全体的に話を長くして、当時の中国の大学生の生の姿を感じとれるよう色々なエピソードを盛り込んだならもっと面白くなったのではないでしょうか。
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中国の農村で生まれ育ち、秦都の大学で民主化の学生運動に参加し、挫折を味わい、その後日本で生活しつつ、民主化運動を続け、悩みながら大人になって行く。天安門事件が一つの象徴として記憶に残る中国の民主化運動を一人の中国人青年の目線で描いていて、知らなかった歴史の裏側を覗かせてくれる。多少、んん?と思う表現があるが、このような小説が書ける語学力はものすごいと思うし、むしろ違和感に感じる部分は、中国人の感性という、文化のバックグラウンドが表れている部分だと思えばいい。変な言い方かも知れないが、これは日本語で書かれた中国文学作品なのだと思う。内容はやや青臭い。が、中国の政治に対する一個人の中国人の悩み、ジレンマに共感出来るところはある。また、人と人が強く近密につながり合う関係がいかにも中国人らしいなと思う。今の日本の政治も客観的に見てほめられたものではないし、そんな国の中で日本人が昔から持っていた良い部分というのもずいぶん失われて来ていると思う。それぞれの国の、それぞれの人々。その違い。諸々、色々と考えさせられた。
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中国が舞台で始まり,学生運動の挫折の後舞台を日本に移して,民主化の思いを口にしながらも鬱々として生きていく浩遠.天安門事件辺りを生きた学生知識人の悲哀が伝わってくる.
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1989年北京天安門での民主化デモに対して戒厳令を敷いた中国政府は、人民解放軍による弾圧を実施し、犠牲者が出るまでの惨事となった。いわゆる天安門事件である。
戦車の前に立ちふさがり進路妨害をする男性の姿がテレビで世界に流れ、人々の記憶に残る出来事となった。
物語は、事件そのものでは無く地方大学へ入学したのち慕っている先生や憧れの先輩の影響から天安門まで参加した二人の若者の青春と挫折が描かれている。
外国語を母国語とする作家が日本語で書いた物語として初の芥川賞を受賞していることで有名。
最近の著書『我が敵「習近平」 中国共産党の「大罪」を許さない』では、中華人民共和国政府の「香港弾圧」や「コロナ隠蔽疑惑」に対して痛烈な批判を展開しているが、この頃はまだそこまで政治色を出していない。
それよりも、芥川賞応募で枚数の限られた中、当時の地方の一般市民の心情が素直に語られた物語。
母国語で長編小説としたとき、もっと深く描かれていたかも…。
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天安門事件が題材。
中国の地にて民主化運動に参加し、翻弄された一人の男の物語。
青春の一途さや、ほとばしるエネルギーをひしひしと感じた。挫折も味わうがさっぱりとした文章で重くない。
変われなくても、年月と共に受け入れていくのは自然の流れだと思う。最後は穏やかな気持ちになった。子供たちにふるさとを教える台詞がとても良く、心にすっと入ってくる。
愛のある本だった。