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迷走を続ける3世紀のローマ帝国は蛮族からの襲撃に苦しめられる。その中で現れたのが、軍人で騎兵団長出身のアウレリアヌスの皇帝就任。混迷期に珍しく、就任当初から明確な考えをもってグランド・デザインを描き、それを実行していく冷徹さを持っていた。蛮族を打ち破り混迷が打開されるかと思いきや、自分にも他人にも厳しい性格が災いし側近に忙殺される。混乱の最中のローマ人は目の前の蛮族襲撃、農耕地帯の荒廃に直面し、なぜ我々は生きているのか、という問いに自信を持てなくなってしまう(アイデンティティ・クライシス)。
そのローマ帝国の弱体化と疲弊化のなかで、人々の最後の希望として映ったのがキリスト教である。
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1〜34の これがシリーズ最終巻です。
現在 手元には、ない・・・。
内容 :
疫病の流行や自然災害の続発、そして蛮族の侵入といった危機的状況が続く中、騎兵団長出身のアウレリアヌスが帝位に就く。
内政改革を断行するとともに、安全保障面でも果断な指導力を発揮し、パルミラとガリアの独立で三分されていた帝国領土の再復に成功。
しかし、そのアウレリアヌスも些細なことから部下に謀殺され、ローマは再び混沌のなかに沈み込んでいく。
のちに帝国を侵食するキリスト教も、静かに勢力を伸ばしつつあった。
著者 :
1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。
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前巻より引き続き、皇帝がめまぐるしく入れ替わる。最後にディオクレティアヌスが登場するまで。
著者によれば、皇帝が次々と謀殺された理由のひとつは、皇帝と兵士の距離感の近さにあったという。
「~敬意を捧げられる方法は一つある。それはつまり、良い意味での距離を置くことだ~リーダーでありつづけることは、~親近感をもたれながら、距離感も抱かせる必要がある」p158
このことが、ローマを専制君主制へと導く原因のひとつになり、非ローマ化=中世への一歩めなのだという考察であるようだ。
まことに、時代の変化に政体をあわせていくことへの腐心が見てとれ、盛者必衰なのだと思わされる。
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三世紀後半「未曾有の国難」がこの国を襲います。ローマ皇帝が敵方の捕虜になるという事態を招いてしまったことによりローマ帝国の権威は失墜します。国民は茫然自失し、まとまるどころか分裂してその後次々と皇帝が入れ替わる状態になります。その頃に皇帝だったガリエヌスの治世では、行き掛かり上の出来事で部下の一人が離反して、ガリア帝国を作ってしまいます。その上東方のパルミラ王国一帯及びエジプトをゼノビア(女性)に支配されてしまいました。ローマ帝国は3分割されてしまったのです。その後、軍の下層出身者でも皇帝になるのが常態化する中、帝位に就いたアウレリアヌスは、わずか4年で帝国の再統合を成し遂げます。優れた実績を残したアウレリアヌスでしたが、ペルシャ戦役を前に些細なことから秘書から誤解を受け、暗殺されてしまいます。このことが招いたショックの大きさは、皇帝の空位が5カ月間も続いたことからも明らかです。
この三世紀の危機の時代を知るにつけ、ローマ帝国全盛時代の皇帝と比べてしまいうんざりしてしまいます。国の行方を支配する皇帝がこんなに頻繁に入れ替わるのでは、筆者が指摘するまでもなく国が弱体化するのは明らかです。名前など覚えきれる訳もなく、この後の皇帝が事故や落雷で絶命する件など、帝国の運命も地に墜ちた感極まりといった思いでした。
そして、この国の行方を左右することになる、キリスト教の台頭も結局のところ、「パクス・ロマーナ」が実現出来なくなった国に希望も持てない人々が、キリスト教に救いを求めた結果だということが理解出来ました。
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ペルシャによって捕囚された皇帝ヴァレリアヌスのあとをつぎ、その子であるガリエヌスが皇帝に。しかし、ガリエヌスがゲルマニア防衛線で蛮族の対応を行っている間にガリア地方が独立し、ガリア帝国になる。同時に東方でもパルミラが独立。帝国は3分される。
蛮族の侵入阻止には成功するも、帝国を再統一できず、ガリエヌスは部下に殺される。
次に立つのは、クラウディウス・ゴティクス。ゴート人を征したものという渾名だが、彼も蛮族相手の戦争中に病に倒れる。
その後に皇帝アウレリアヌスが、ガリア帝国、パルミラを再服し、10年ぶりにローマは元の形に治る。アウレリアヌスも何かの行き違いから部下に殺され、タキトゥス、プロブス、カルス、ヌメリアヌス、カリヌス、と短命の皇帝を経て、ディオクレティアヌス皇帝が誕生し、短命だった軍人皇帝時代が終了する。
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現時点で家にある本シリーズ完読、この先買うのでしょうか?自分とももうお一人にともどちらともつかぬ呟きです。
ようやくキリスト教の本丸の議論に入ってきて、この先どうなる?という面白さがあります。ただまぁこの作家のことだから、あんまり期待できないかなぁ、と思ったりして、読み続けべきか否か、ちょっと迷うところでありまする。
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2~3年、またはそれ以下の年数で次々に代わる皇帝。
しかし、なりたい人が部下の推薦という形で立候補しては、謀殺されてしまうことの繰り返しに、一体帝国に人材はいないのか、と思うほどだったが、この巻でようやく能力とやる気に恵まれた皇帝が現れる。
なのに。
やっぱり謀殺されるのだ。
やる気があって才能のある人は、往々にして厳しい。
自分に厳しいだけではなく他者にも厳しいとなれば、それに応えることのできない人には鬱屈が募る。
だから謀殺される。
そうなると今度は、殺されないように人気取り政策に走ることになる。
小手先のそんな政策では帝国の危機は乗り切れない。
能力のない皇帝はやっぱり殺される。
もちろん謀殺されなかった皇帝もいる。
やる気も能力もあったが、疫病に斃れた人や、戦地に向かう途中に高齢で斃れた人や、落雷が直撃した人。
ここまでくると、これはもう神の意志かと思う人が出てきてもしょうがない。
でも、まだ何とか帝国が帝国として存在できていたのは、辛うじて社会的なシステムが生きていたことと、志半ばで倒れたと言っても全力でローマ帝国の再興に努力した皇帝のおかげというのは確かにある。
そしてついに、迷走する三世紀最後に、20年もの長きにわたって帝位に就くことができた皇帝が現れる。
彼の出現は帝国にとって吉だったのか、凶だったのか。
次巻が楽しみである。
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もう皇帝の名前も覚えられない!
それほど次から次に変わる皇帝たち。
時代に翻弄されたと言うべき皇帝たちで、なんか悲哀を感じざるおえない。
とくにアウレリアヌスとプロプスは時代が違えば名将と称えられたのではないか。
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73年間で22人の皇帝が、しかもそのほとんどが謀殺により代替わりする三世紀の後編。
ローマ皇帝が敵国に捕らえられるという前代未聞の国難により、ローマ帝国は覇権を失い、ガリア帝国とパルミラ王国がローマから分離する。
いよいよ帝国も崩壊かと思われたが、生え抜きの軍人皇帝アウレリアヌスにより、なんとか失地回復に成功する。
だが、そんな皇帝でさえ謀殺により5年で失われてしまうのが、このときのローマだった。
5ヶ月の皇帝空位の後、75才のタキトゥスが8ヶ月で老衰、6年戦地を転々としたプロブスは謀殺、メソポタミアを回復したカルスは1年で事故死、ヌメリアヌス1年で謀殺、カリヌス2年で謀殺。
もはや何故これで政体として維持し続けていられるのか疑問だが、次の皇帝でようやく21年間の継続に成功する。
しかし、終わらない外敵の侵入により生活を脅かされた人々は、もはや国ではなく宗教に救いを求めるようになっていた。
外敵にはどうにか対抗できていたローマが、内なる敵にどう立ち向かうのか。
キリスト教との21年が始まる。