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ゴシック名訳集成吸血妖鬼譚 みんなのレビュー
- 日夏 耿之介 (ほか著訳), 東 雅夫 (編)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:学研
- 発行年月:2008.10
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文庫
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紙の本
「吸血鬼」を生んだ人々
2013/09/20 00:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゴシックというよりは、ロマン主義と呼ばれるべき作品たちではないかと思う。ロマン主義というのがいかなるものか、日本人には分かりにくいかもしれないが、コールリッジ、バイロン、ゴーチエといった作家達はまさしくそれのはずだ。
コールリッッジなら「クリスタベル姫」が読みたいが、岩波文庫版詩集には第一部しか収録されていないので、ここで読めるのはありがたい。
バイロンの「不信者」、当時はバイロンの作と噂されたががポリドリ作で「吸血鬼」、それらは民衆の間に秘かに伝わってきたのだろう恐怖を昇華させ、そこからさらに創造的な作品を派生させ、さらにさまざまな吸血鬼映画により強烈なイメージを世界に標すことになる。
小ロマン派ゴーチエの「クラリモンド」は、各作品集にも所収されている名作。19世紀にこんな背徳的な話書いてよかったのだろうかと心配するようなゴシック的な恐怖を流麗に仕上げた作品で、これが大正3年に芥川龍之介訳というのだから刮目である。
メアリ・シェリー「新造物者」言わずと知れた「フランケンシュタイン」のこと、明治22年に邦訳されていたということにも驚くが、抄訳ではあるのだが物語の本質部分が決して失われておらず、新しいパラダイムを生み出した人間の苦悩に迫っているところもすごい。
こういう香気漂う作品から一転、1世紀がたっただけでガストン・ルルー「吸血鬼」は、もう吸血鬼も人造人間も消費され尽くされる存在となり、ドタバタ冒険劇の小道具に成り下がったかのようだ。しかしつい以前までロマン怪奇だった題材を、日常のすぐ隣に出現させてジェットコースター展開に仕立てたのは、むしろ「オペラ座の怪人」の作者らしいさすがの腕前かもしれない。
付録的作品として日夏耿之介、平井呈一のエッセイは感涙もの。
これらの作品と時代を通して幻想の系譜が投影されていると見ることもできるだろうし、一貫して人にあらざる者の悲しみに耽溺するもあり、我々には知覚し難いロマン主義の目指す姿を垣間見ることもあるだろう。宝石箱のような作品集。
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