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大学時代、福祉について学んでいた時、障害者の社会における立ち位置についてよく考えていたことを思い出した。
現在の資本主義と格差社会の中で、今後さらに切り捨てられるのは福祉だろう。
そうなった時どのような日本社会が変容していくのか。
彼らのような人に、きちんと居場所のある社会であるのかを考えさせられる一冊。
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(推薦者コメント)
著者は、元国会議員で、2001年に秘書給与流用の罪で収監された。その刑務所では、実は1/4が知的障害者であったのだという。彼らの刑務所内での生き方は、およそ健常者と違っていた。彼らにとって、刑務所は「セーフティーネット」としての役割を担っていたのである。日本は本当に障害者の暮らしを考えている社会なのだろうか。障害者の現実を描くことはタブー視されがちである。しかし驚くなかれ、この本はノンフィクションなのである。
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受刑者の3割近くがなんらかの知的障害者だそうだが、それは知的障害者が犯罪を犯しやすいということを意味しない。著者は、現代日本の司法や福祉がとりこぼしてしまっていた人々の姿を浮き彫りにしていく。
福祉と接点を持つことができず、やがて窃盗を重ねたり、悪意ある者に食いものにされたりする。彼らに手を差し伸べる者も制度もなく、刑務所がもっとも居心地のいい場所となってしまう。
そうした知的障害者に対する施策がどうあるべきなのか、そう問う以前に、彼らの存在は意識的にあるいは無意識に私たちの視界から遠ざけられてきた。それこそが最大の問題。
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まず特筆すべきは著者。今旬の菅直人の公設秘書を経て、衆議院議員に。2000年9月に起こした、政策秘書給与の流用事件により懲役1年6ヶ月の実刑判決。1年2ヶ月の服役生活中に触法障害者の世話をするなどした経験がのちに福祉の道へ進むきっかけに。国会で見えなかった福祉や行政の穴が、刑務所の中で見えてきた、とはなんとも皮肉な話。
内容はとてもいい。取材もすごくしっかりとされていて事件の概要から当事者の心情まで細かく書かれている。
ただ文章の流れで多少読みにくく感じた部分が自分にはあった。作家歴が少ないからしかたないのかな。
私たちの身近にあるはずなのにない事にされている障害者の問題。かなり衝撃を受ける内容だ。
なぜこんなにも知る機会がないのかとか、健常者の常識を押し付けて考える事の無意味さとか、不の連鎖によってどこまでも状況がよくならない現実とか・・・・・知っておくべき事がたくさん書いてある。
しかし、著者は明らかに書き足りていない。文庫版のあとがきが新しい章かと思うくらいのボリュームだった。まだまだ書きたい事があるはずだ。
それはこの問題がいつまでもなくなる事などないからでもあるだろう。
目を背けてはいけない、目を向けなければいけない、皆で考えなければいけない問題なのだと痛感した。
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日本の知的障害者が安心して暮らせる場所が刑務所という実態は衝撃でした。
そして、手話が聾唖者が使うものと、公で見受けられる健常者と対話するものが違うという事実も。
セーフティネットがあっても、自分の存在を知らせることができなければ全く無意味なもので、助けてくれる人がいない人たちの受け皿をどうやって作ればいいんだろう?福祉の仕組みとは?他の先進国はどうしてるんだろう?と疑問が沸いてきました。
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『獄窓記』より衝撃的かも。文章も読みやすくなってる。特に聾唖者の問題は,経験も知識もなかったのでとても勉強になった。裁判員裁判の時代なので,弁護人のみならず,一般の人にも是非是非読んで欲しい。タイトルはちょっと間違ってしまった感じだけどもw
この本の提起する問題に関連して,自分の中で凄く記憶に残っている公判がある。と言っても,いつどこでどいういう立場で立ち会ったのかも含めディティールはほとんど記憶がないのだが。。。その公判がなければ,本書にリアリティを感じられなかったかもしれない。知的障害は,ある意味では,責任能力に結びつきやすい精神障害以上に,日本の刑事司法がうまく機能しない局面なのだ。
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経済だけならず社会にまでも「効率的」というフレームが当てはめられてしまうと、効率的になれない、与えられることでしか生きていけない人たちの生活が「効率的」の枠外で捉えられてしまい、福祉とのつながりが切れやすくなる。
効率的な経済はあっても効率的な社会はあってはならない。
障害者は、もたれあい助け合う中で同じような境遇の者同士でコミュニティを作るけれど、そのコミュニティは私たちがごく普通に食って寝てしていては知ることがないコミュニティ。
例え生活の中で障害者との関わりがなかったとしても、常に頭の片隅でマイノリティの暮らしを意識することが出来れば、私たちは、きっと、もっと幸せになれる。
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自分の不勉強を痛感させられた一冊。障害と犯罪の繋がりについておぼろげには認識していたのですが、この様な形で連鎖的にとは考えていませんでした。防ぐ事が可能であったように感じる凶悪事件も見られ、治安と福祉の関係について考えさせられます。
刑務所が更生施設として機能していない現状や警察・検察の障害者利用ともとれる捜査など、障害者の事件以外にも多くの投げかけがなされています。
被害者からの視点が欠けている、と感じる方もおられると思います。その点は否定出来ません。ただ、与えられる罰が被害者やその家族、ひいては国民全体にも怨嗟の解消以外に役に立っていない事例が多い事を訴えた事そのものを評価したいと思います。
精神及び知的に障害を持つ者は罰しない、という姿勢もこの本は否定的です。私も同感です。健常者には健常者に、障害者には障害者に合った罰と教育を。それがいかに難しく、かつ必要であるかを考えたいと思います。
本文中であえて障がい者では無く障害者と表記しました。悪意が因るものではないと同時に、不快な思いをされた方には御理解を頂きたいと思います
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強烈なのは、第三章・・・ 売春する知的障害女性の箇所だろう。知的障害の80%以上が軽度の知的障害者であり、一見見た目では判断できないのだとか。その子が同じ知的障害者と結婚し出産すると、軽度をはじめ中度または重度の知的障害者児童を産むことになる。そして負の連鎖がはじまる。彼らに周囲の助けがなければ職にもつけず犯罪に巻き込まれ、最後には刑務所が安住の地となるのである。刑務所にいる受刑者の3割の人が、知的障害者なのだという現実が哀しすぎる。
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読みながら、この本にでて来ることが悲しくて悔しくて仕方がなくなり、特に第五章で、新幹線で涙が止まらなくてどうしようもなかった。私はこの著者みたいな仕事がしたいんじゃないか…!と思う一方、裁判官・刑事司法の立場「だからこそ」、思いを持って出来ることはあるのではないか、考えられてる不要な制約の妥当性は甚だ疑問……という思いに駆られた。
人一人で出来ることは限られうるけど、法律で可能なのは処罰への予告と処罰。この問題意識を何とか今の職の仕事でも生かして行きたい。
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衝撃的です。日本にもこんな環境があるんです。明らかに現実です。それにつけ込んで悪さをする、そんな人たちもいるんです。自分で自分を守れない人はどうしたらいいのでしょうか。周りから支援をもらえない人はどうしたらいいのでしょう。支援しなければならないことを知られないこともある。
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以前、日本手話通訳士協会の研究大会における山梨の発表で「山本譲司さんが著書の中で手話通訳者批判を書かれている」と指摘されているのを聞いて、早速買い込んだのがこの「累犯(るいはん)障害者」。
「第4章 閉鎖社会の犯罪-浜松・ろうあ者不倫殺人事件」の中で「頓珍漢なやりとり」として裁判における手話通訳者の手話が通じていないことを指摘している。
今回、たまたまその山本氏の手話通訳を担当することになって、途中まで読みかけだった同書をあわてて最初から読み直した。
内容は
* 序章 安住の地は刑務所だった - 下関駅放火事件
* 第1章 レッサーパンダ帽の男 - 浅草・女子短大生刺殺事件
* 第2章 障害者を食い物にする人々 - 宇都宮・誤認逮捕事件
* 第3章 生きがいはセックス - 売春する知的障害女性たち
* 第4章 閉鎖社会の犯罪 - 浜松・ろうあ者不倫殺人事件
* 第5章 ろうあ者暴力団 - 「仲間」を狙いうちする障害者たち
* 終章 行き着く先はどこに - 福祉・刑務所・裁判所の問題点
こうした場所で手話通訳する機会はめったにないだろうが、必ず勉強しておきたいテーマだと思う。
「手話通訳者が読んでおきたい1冊」がまた増えた。
books156
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秘書給与詐取事件で議員辞職した著者だが、
獄中での体験が本当にライフワークになってしまうとは・・・
こういった実直さこそ、政界で生かして欲しかったけれども、
過酷な体験ゆえに、いまのような生き方ができているのかもしれない。
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あまりにも重たい内容のため読了するのに数か月かかった。
現実を直視する意味でも読んでよかった。
これらを踏まえたうえで、そうならない社会づくりを、家族、地域単位でしていけるといい。
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寝る前に読む本ではなかった。
すごくえぐい夢をみてしまった。
現実を知るということは重たい。
けど辛いからといって見て見ぬふりをするのも違う。と思う。
解離性同一性障害(多重人格)のところなんかは特に、
まだ現実として受け止めきれてない。
授業で9歳の壁の話をしていたところだったので、
聴覚障害者の問題のところがかなり衝撃的だった。
今まで9歳の壁をきちんと理解していなかったと思う。
というか、今でもたぶんきちんと理解できていない。
現実って何だ。