紙の本
紫式部日記
2022/12/05 20:18
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
紫式部日記などというものは、古典文学を専攻している人しか読まないのではないかと思っていましたが、現代語訳がスラスラと読みやすく、中々面白い内容でした。宮仕えの気苦労など、今の会社勤めの気苦労と相通じるものがあり、また待望の孫息子の狂喜する藤原道長の様子なども生き生きと描かれていて、千年昔の宮廷生活を身近に感じることが出来ました。
紙の本
内裏女房の悲喜こもごも
2021/08/23 13:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
源氏物語を読む前に読んでおこうと思いました。
わかりやすい現代語訳と一緒に、原文も載っていて比較すると古文の方もうっすらわかるかも。
紫式部が使えていた宮中での出来事や、色々な人物についての記録など、そんな感じ。
いかにも記録文と行った感じの物から手紙風のもの、2種類のテイストがあって面白かった。
京都だなという感じ。
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ある日道長が、女郎花(おみなえし)の枝をとり、さあ一首どうだ、と迫ります。朝顔だった紫式部は恥ずかしがり、さっと奥の硯へと逃げこみます。そしてすらすらすら。。
女郎花さかりし色を見るからに露の分きける身こそ知らるれ
露の分きける、がポイントです。女郎花はこんなに美しいのに、私は露のめぐみをうけられず、美しくありません…と詠んでいます。謙虚さをあらわしているというよりも、このときの紫式部の自信のなさの反映でしょう。道長の返歌はなかなかです。
白露は分きても置かじ女郎花心からにや色の染むらむ
白露にわけへだてなどあるものか。女郎花は美しくあろうとして美しいのだ。心がけこそが大切なのではないか、と紫式部を励ましています。積極的な歌です。前向きな人生を歩みたい人への、エールだとうけとめてもよいでしょう。
ナビゲーターである淳子は、あたたかい筆致で読者を誘います。紫式部への愛情をたっぷりと注ぎながら、日記をたくみに解きほぐしていきます。ところどころ、変なカタカナが顔をだしますが、まあいいとしましょう。
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(2011.02.18読了)(2010.11.17購入)
2008年が「源氏物語」が書かれてから千年目にあたるということで、ブームに乗って「源氏物語」関連本をいくつか読みました。
紫式部の著書としては、『源氏物語』と「紫式部日記」と「紫式部集」があるということです。「紫式部日記」もいつかは読んでみたいと思っていたので、手ごろな本が見つかったところで読んでしまうことにしました。
内容は、他の著作物に紹介されていたものが多いので、新鮮味に欠ける面もありますが、生身の紫式部を知るうえでは、貴重な本だと思います。
「日記」となっていますが、われわれがイメージする日記とは違うようです。山本淳子さんは、「回想録」と呼んでいます。1008年7月ごろの記述からはじまっています。
本の構成は、原文を小さく区切って、現代語訳、原文、解説、という形で、繰り返されます。現代語訳を読んで原文を見るのですが、原文の言葉は、今使われている言葉と同じようなものでも、意味合いがずいぶん違うことがわかるので、とても原文だけでは、意味を読みとれないことがわかります。さらに解説で、書いてあることの意味合いを詳しく教えてくれるので、宮廷及び、藤原道長のことがよくわかります。
ところどころに(中略)とありますので、原文のすべてが収められているわけではないことがわかります。「ビギナーズ・クラシックス」シリーズですので、やむを得ないでしょう。
●「紫式部日記」(3頁)
素顔の紫式部が綴った宮仕え回想録です。内容の中心は、主人彰子の初めての出産、そして男子誕生という晴れの出来事。紫式部は得意の観察眼を働かせて、人々を生き生きと描き出します。そこに見えてくるのは、娘のお産に政治家としての栄達をかけた藤原道長の張り切りよう、繊細な性格の持ち主で、重圧にじっと耐えながらもやがて凛とした女性として開花して行く彰子の姿、それを見守りながら、自分も女房として成長してゆく紫式部自身の姿。いつしか彼女は「女房はどうあるべきか」と熱く語り出します。
●藤原良房(57頁)
良房は、866年、「摂政」に任命され、幼い天皇に代わって死ぬまで国政を執り続けた。
ここに、天皇家に生まれた人間でなくても、摂政となれば天皇の代理として天皇と同じ権力を握ることができるようになった。
これ以後、貴族たちはこぞって、摂政を目指すようになった。
その方法として、自分の娘を天皇に入内させ、皇子を産ませ、その皇子を即位させ、その摂政になろうとしたのです。
●ゲームの賞品は「紙」(62頁)
公卿がたは座を立って渡り廊下の上に移られる。道長様を筆頭に双六をなさるのだ。賞品は紙。(当時の紙の貴重さを知らせてくれます)
●孫のおしっこに濡れるのはうれしい(71頁)
「ああ、この親王様のおしっこに濡れるとは、嬉しいことよの。この濡れた着物をあぶる、これこそ念願かなった心地じゃ」
●清少納言(193頁)
清少納言と紫式部とは直接面識があったかどうかはわかりません。紫式部が彰子に勤め出したのは、定子が亡くなり清少納言が宮中を去ってから5,6年後のことだからで���。
☆関連図書(既読)
「藤原道長」北山茂夫著、岩波新書、1970.09.21
「紫式部」山本藤枝著、火の鳥伝記文庫、1987.03.21
「小説紫式部 香子の恋」三枝和子著、福武文庫、1994.12.05
「紫式部の娘 賢子」田中阿里子著、徳間文庫、1992.05.15
(2011年2月21日・記)
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女房の普段の生活、中宮彰子、道長、同僚の悪口・・・色んな話が盛りだくさんで、おもしろかったです。
また、話の間に挟まれる解説も、女房事情や、平安の生活など詳しく書かれていて、とてもよかったです。
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「千年の黙」があまりにおもしろかったので、紫式部についてもっと読みたくなって。 この本は、原文に忠実そうな現代語訳、原文、解説、とあって、すごくわかりやすく、読みやすかった。古文嫌いなので原文は飛ばしたけど。(古文法とか旧かなとかが異常に嫌い。ちゃんと勉強して理解すれば好きになれるのか?)おもに、皇后に子が生まれ、そのお祝いごととかの様子が描かれているのだけれど、紫式部はそもそも宮中づとめがイヤでイヤで、イベントごとも嫌いで、仲のよい同僚の局とうしろのほうでこそこそしていた、とか、行事にギリギリに行った、とか、そんな話がおもしろかった。すごく気持ち、わかる(笑)。しかし一方で、あんまり引っ込み思案でも、子どもっぽくてみっともない、お勤めを果たしているといえない、とか考えていたり、そういう心のうちが書かれているのが興味深かった。主婦として家にいれば、守られているし、好きにできるし、いちおう家の主でいられるけど、華やかな職場に勤めに出れば刺激があって楽しい反面、気苦労も多いという。今と同じみたい、と、宮中づとめの感覚がわかったような気になったり。
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紫式部の宮廷生活での日記。登場人物の周囲の物事とか上手く解説されていて読んでいて楽しい。紫式部の人物像や成長、宮廷の雰囲気を感じ取れました。
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平安時代の宮廷生活を活写する回想録。華麗な生活に溶け込めない紫式部の心境描写や、同僚女房やライバル清少納言への冷静な評価などから、当時の後宮が手に取るように読みとれる。道長一門の栄華と彰子のありさまが讃仰の念をもって描かれ、後宮改良策など、作者が明確に意見を述べる部分もある。話し言葉のような流麗な現代語訳、幅広い話題の寸評やコラムによる『源氏物語』成立の背景を知るためにも最適の入門書。
卒論の参考にさっと。
けっこうおもしろい。紫式部も人間だね。
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内気で人付き合いが苦手だけど、プライドは高い。そんなリアルな紫式部の姿や、爺バカ丸出しな道長の姿が見てとれて、大変面白い一冊。
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源氏物語の原作者紫式部が彰子中宮の元で宮仕えをしていた3年程の記録及び体験記とも言える「紫式部日記」の解説本です。
原典と口語訳とを併記されておりまずはとてもわかりやすいです。
タイトルにビギナーズ・クラッシックスと銘打ってあるだけのことはありますw
残念ながら原典の全てが掲載されているわけではなく、日記の内容や式部が家庭の主婦から職業女房へと成長・変化してゆくさまにあわせ、3部構成になっています。
「鬼と女は表に見えないのが良い」とされていた平安の時代、職業としての女官や女房は多くの男性に顔を晒さねばならず総じて「はしたない」「言い寄り易い」と軽視されている側面がありました。
式部もその世論の中で生まれ育ってきたため、再三再四の宮仕えの要請にもなかなか首を立てには振らず、中宮彰子の熱烈な要望に根負けして出仕したものの、立ち居並ぶ先輩女房たちに気圧され、また冷たくあしらわれ凹み翌日から5ヶ月も家に引きこもりますw
更に結婚して3年と言う短さで夫が亡くなりいよいよ華やかな宮中へ戻る気にもなれません。
が、ここで式部の意識は主婦から女主人へと上昇します。
残された我が子賢子や家司・女房たちを養うのは自分しか無い。
それに彰子の出産日記を書くことが第一の勤めとされ決まった出仕話。中宮彰子の出産も押し迫りそうそう引きこもってもおられず宮中へ戻ります。
式部の住む堤邸を担う大黒柱は自分しかいない、ここで働きお産日記を完成させ先輩女房にも気に入ってもらえるように立ち回らなければ!と一念発起します。
すると女房たちからは「式部さんって思ってたのと違って本当は優しいのね」「式部さんは学がおありだから私なんかきっと叱られるんじゃないかと思ってたのよ」と意外な言葉が。
冷たくあしらわれ逃げ帰った式部ですが、実は皆式部の学識の深さに恐れうかつなことは言うまいと警戒していただけなのです。
中宮彰子のお産は男御子誕生と言う上々の結果、産後も母子ともに健やかで宮中は和やかな日々が続きます。
宮中女房としての処し方も身に付き、徐々に宮中での生活にも慣れてきた式部は手紙形式の日記を書き始めます。
これは「こんなこと内々の手紙ででも無ければ書けない話なんだけど」と前置きをし女房評・公達評を繰り広げるといったものです。
式部の文章もくだけた表現が増え、本当に他人の手紙を垣間見してるかのように感じます。
紫式部日記には、彰子のお産記録、お祝いの儀式の様子の記録だけではなく、中宮女房としての式部の成長日記の要素もあります。
このビギナーズ・クラッシックのシリーズは本当に初心者に優しくわかりやすいので入門篇としては最適に思いました。
でも出来れば田辺聖子さんに口語訳+読み物としての紫式部日記を出して欲しいところですw
今、森谷明子さんがシリーズとして刊行している「千年の黙」「白の祝宴」「望月のあと」は紫式部を主人公としたミステリですが、これらよりも先にこの本を読んでおけば良かっ��なぁ、と後悔してます。
「源氏物語」だけではなく「枕草子」の書かれた背景「むかし・あけぼの」を読んだ後だからこそ「千年の黙」が面白かったのですが、更に「紫式部日記」も読んでおけばなおよし!ですw
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これでもかっ! という現代語訳の後に古文を配し、そして解説文が続く構成がとても良かった。源氏物語の作者として教科書でも有名な彼女の、中宮彰子に仕えた女房としての記録とエッセイと言える日記を楽しむことができた。天皇の後継者を生んだ彰子に仕える女房のあり方に対する熱い想い、そして枕草子の作者・清少納言へのライバル心が生き生きと伝わってくる。
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大変貴重な史料だった。もちろん原本は残っていないし後年の写本ではあるものの…。この時代にこんなお手軽に読めることに感謝したい。
1000年も前に生きていた人たちの生々しい生活が垣間見える。いつの年代でも人間は本質的には変わらないんだなと(悪口言ったり意地悪する場面ね)
世の中には清少納言好きで紫式部は性格が悪いだの友達になりたくないだの、嫌なことを言う人が多く、編集者さんも同様の人だったらどうしようと不安であったが一切そのようなことはなく、客観的なコメントをされていて安心した。
確かに明るくはなく物憂げな感じではあるが本人としては世間に対し思うことはありながらも生き抜いたんだろうなと…。
どちらかというと紫式部よりの人間なので気持ちがわかる気がする。
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清少納言曰く「派手好きな旦那」を持ち、華麗なる宮廷ロマンス文学を執筆した紫式部のことだから、見た目も性格も男女関係もさぞかし華やかな人物だろうと想像していた。紫式部日記を読むまでは。
イマイチ乗り気じゃない宮仕えが、やがて自分の得意分野(物語執筆活動や出産時の記録係、彰子への漢文講義等)を活かして宮中に居場所を見つけるとともに、知識をひけらかすことなく周囲とも波風立てず穏やかな人物を装うことで時の権力者・藤原道長にも一目置かれるような唯一無二の存在となった処世術は、現代人の我々にも参考になりそうだ。
「マウント女子」とは対極的な紫式部。かと言って容易く周囲に流されるような頼りない性格でもない。「チーム彰子」の女官としての誇りを保ち、同僚やライバル達に対して表立っては言わないが一家言を持っている。悩み事も軽々しく口にはせず、控えめながらも内に秘めた強さを持っている女性だと感じた。
道長と愛人関係にあったのか気になるところだが、自己顕示欲の強くない紫式部の性格からして、もしそうだったとしても後世には書き残さないんじゃないのかしら。わざわざ言及しなくても良いのに道長をあしらったエピソードを敢えて残しているところが意味深だけども。
本書を読み終えると、土御門殿の道長が六條院の光源氏と重なって見える気がした。
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編者の選択にもよると思うが、思っていたよりお仕事小説だったのが面白かった。
紫式部、それほど陰湿ではなかったけど、
やっぱりちょっと面倒くさい女だな。
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ビギナーズ・クラシックス4冊目ともなると不思議と一冊目よりも原文が比較的すらすらと読めるようになってきました。もちろん詳しい解釈は出来ないので本書の「現代語訳」→『原文』→『解説』はスムーズな理解に大いに役に立ちました。
日記の作者紫式部は『枕草子』の清少納言が宮仕えしていた定子時代のあとの彰子時代に宮仕えし、本書はその彰子中宮の出産前後のエピソードから始まります。
なかなか理解しがたかった相関図や、当時の雰囲気がとても分かりやすくて、紫式部の目を通して中宮彰子や藤原道長、宮仕えの女房たち、さらには紫式部自身のこともしることができ、面白い構成や時々意地悪だったり辛辣だったりする紫式部のもの言いもとても面白かったです。
そのことには紫式部自身は触れていないとしても、なんとなく、紫式部、道長の愛人説も有り得たかもな、プライドの高い紫式部はズバリ言わずにほんのり匂わせているのかも、と思いを巡らせるのもまた楽しいものです。
宮仕え時代には清少納言と面識はなかったようですが、清少納言の存在が紫式部の作品をさらに上質にさせたのだろうな、と思うとオリジナルエピソードだらけの今放送されている大河ドラマも素直にとても楽しく見られます。