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みんなのレビュー25件

みんなの評価3.8

評価内訳

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

これほどまでに面白い小説を、私は知らない。

2009/11/25 04:44

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る

何しろ、とてつもなく素晴らしい物語なのである。面白い事、比類なしなのである。
これ程までに面白い小説は、1人でも多くの読者に読まれて然るべきだと考えるのである。

「で、ある」からして、俄然、「のである」にも、力が入ろうと言うものである。
ダアレも知らない突き当たり、<内藤写真機店>、それでも、いつ何時、

誰かが壊れた写真機を持ち込むかも知れず、夜の夜中でも店を閉めたりしない。
中古というよりチュウブル・レンズと読ませたくなる逸品が持ち込まれるやも判らないからである。

写真機店の主の名は、キミとアキ。両性具有の親が、両性具有の子を産んだ。
が、今キミは、日々酒ばかりのみ、娘にして息子のアキが二人暮らしの生活を賄うべく

チュウブル写真機店を営んでいるのだ。と、ここまでを設定した所で、小説の語り手は、
自分が、カタリテである事に悩み出し、迂闊にも、

作品の中に作者が顔を覗かせ立ち止まってしまうのだ…。
話の「序の口」を探し始めたは良いものの、早くもカタリを放棄してしまう、カタリテ。

そればかりか、語り手=作家である所の日々の葛藤を、娘の音や、

将棋の仲間ツブラダ君相手に、『何であれ僕はスラスラ書こうと思ったことは一度もなかった。
そもそも自分の中にスラスラしていないものがあって、どうにもソイツがもどかしくて、

ソイツを叩き出してしまいたかったんです』だらり喋りながら日々過ごしている。
ところが、それでも尚、この作品が凄いのは、作家の発想が柔軟で

「書いてるつもりが書かれていた」のが当の自分なのかも、と考えられる点だ。
更に娘も、「わたしはいつでも、自分はどこかの誰かが書いていると子供の時から思ってた。

そう考えた方が楽しいし」あっけらかんとしているし、円田くんにしても
「最後に福を迎えたい。そうですよね。だからたしかに書き始めの入り口は

笑う門じゃないと駄目なんです」かなりの楽天的な思考の持ち主なのだ。
しかし、こんなに悠長な考え方、やり方で、設定されたままの登場人物は

溜まった物じゃないんでしょうね…。カタリテに警告に来る主要人物キミ。
「次のセリフも貰えぬままココでこうして路地に閉じ込められて何ひとつ進展しない。

カタリテ、これはどういうことだ。お前さんがナントカしてくれないと、
われわれはココでこうして途方にくれるばかり。早くこの先を書いてくれないと―」「ないと」

「こっちからそっちへ出てゆく」次第、次第に薄れゆくカタリテの意識から脱出するキミ…。
空気、天気、空間、時間、人物、と呼ばれる全ての制約の「圏外」へと、易々と解放され、

より変幻自在に語られる物語。唯一の共通点は円田くんや音ちゃんも、
自由に飛翔を続けるキミも、そしてカタリテにも、それぞれの「役割」と「詩」がある点と、

各自「南」を目指していること。果たして「南」には何があるというのか!?
先がまるで読めない展開と、各章に名付けられた余りにも美しい詩的なタイトル

(「夕方の飛行の果てに電線から逆さにぶら下がって」や、
「観覧車に乗って遠くの景色を見渡すように」)に惹き込まれます。

登場する各人物の言葉も詩的で『走り書きはいかん。ついでに殴り書きもいかんぞ。
人を殴るようなヤツは人間の屑だ。小走りで行くのだ。小走りで書き続けるのだ』とか、

『「聴」の一字には、ひとつの耳と十四の心が隠されている。十四の心である。
俺は幸いにもそいつを手にした。持っている。所持している。所有している。十四である。

この数を不吉なる十三を乗り越えた次のナンバーとして記憶し、
俺は自分の心の臓を切り刻んで、十四のハートに分離させた。』などの言葉を目にした時に、

作者・吉田篤弘さんは文字通り、全身と全霊で体感した言葉を、
肚の底から満足出来るようになるまで吟味している人なんだろうと思いました。

カタリテからヨミテに極自然に発せられた質問について考えるのも、読み応えがありました。
特に、『遠くで泣いている仲間のためにいまここで』に書かれてある神話的な世界は、

1人でも多くの人に読んで貰いたいって感じました。500ページ超の、厚みある小説ですけれど、
これぞ小説!という醍醐味を感じられますし、自信を持ってオススメいたします!!

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紙の本

奥が深い、っていうか、ディテールを楽しむというか、で、そのうち大局を見失ったりして。でも再読可能、というか再読しないと迷ったままで終わるかも。総武線利用者必読です・・・

2010/03/16 19:16

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

目次と各章の扉が面白いので、ぜひ手にしてみてください。それと紙ですね。カバーのマットな感じの白なんですが、これがどうも単純な白ではないんです。むろん、クリームがかってはいない。なんていうか白い卵の殻を思わせる、っていうかそういう感じです。でも、やはりなんといっても本文の紙でしょう。グレーがかっているのはともかく、触った時の感触のチープ感がなんともレトロなんです。このざらざらっとした感じ。粘つかずに、肌に纏わりつくことがなくて、ザラっとしているのだけれどパサつかない。どちらかというと洋書に近いかもしれません。

で、装幀は吉田浩美 吉田篤弘[クラフト・エヴィング商會] 、カバー写真はGetty Imagest とあるんですが、このオブジェは? って聞きたくなります。好きなんですよ、ちょっと茶色がはいった色合いも好きなものだけに、やっぱりこれもクラフト・エヴィング商會の仕事じゃないの? って思います。

現実と虚構、過去と未来、語り手と小説中の人物などが混ざり合い、メタ化していくために、全体をくくろうとすると取りとめのない感のある話ですが、個人的にはカメラの交換レンズ、雲呑ソバ屋のワンタン、ほどけやすい靴ひもをほどけにくくする方法、ケータイの圏外の話が面白くて、特に305頁の
             *
 新宿駅中央口の改札付近は部分的に兼外である。新宿駅千葉方面行き総武線のプラットホームはキオスクの裏手に著しい圏外のゾーンがある。私が乗車した六両目ドア付近においては、信濃町駅と千駄ヶ谷駅と四ツ谷駅においてのみ、圏外が確認された。その理由は判然としないが、昔、何かで読んだこの三つの駅の不穏な関連が思い出された。すなわち、車掌のアナウンスがこの三駅を連呼する際「死ぬの待ち」「死んだがや」「お通夜」と聞こえたという怪談めいたジョークだ。
             *
には笑いました。ちなみに総武線は、夫や長女がが毎日、次女は浪人する前まで使い、この春から再び使う線なので、身近な存在です。とはいえ、それ以外の大きな話の流れとなると、これがどうして中々紹介しにくいのです。なんていうかミニマルミュージックというか、無限に繰り返される同一テーマの中に微妙な違いがある、そんな感じで詳しく書きにくいのです。

全体としては漠然と自分の立ち位置に対する不安、というか存在の曖昧さへの話になっているんでしょうが、私としては部分を楽しむのが一番ではないかと思います。ただ、今までの吉田の小説には淡い恋愛風味があったのに、今回はそれはないなあ、好きなんだけどなあ、なんて思いました。

内容紹介がしにくいので、登場人物を簡単に紹介しましょう。といっても私のメモなのであっさりしていますが、少しでも本書に興味を持ってもらえれば幸いです。

私:「カタリテ」と名乗る小説家。GF(グレープフルーツ)を習慣で毎日買う。ふむ、普通グレープフルーツをGFって略すんでしょうか?

小倉君:私に桐箱入りGFを150万で売りつける馴染みの果物屋の大将。年齢は私より上らしい、というか随分年上だろうと思いました。

音:オン。私と妻との間にできた娘。男の子が生まれるとばかり思われていたせいで、こういう名前になりました。現在20歳。父の書斎に自由に出入りし、小説に文句をつけては、ちゃっかり專用冷蔵庫の中身を出して食したり、日記を読んだりする。ただし、お金のことについて文句を言ったりしないのは偉い。

妻:懐妊と同時に男っぽくなったそうです。下町生まれの江戸っ子で、もとよりアッサリきっぱりした性格。

ツブラダ君:円田くん。主人公の友人で、ヘボ将棋の永遠の対戦者。すでに40の坂を登り始めている自称学者で、音は彼のことを子供のころから慕っているのですが、ドロドロした感情ではありません、多分・・・。

ドクター・シナン:私のかかりつけの医師で、正しくはドクター・指南。南新宿に医院を構えるといいますが、ハードボイルド小説に登場するような雰囲気があります。ま、あくまで新宿からの連想です。

ケイジ:フケイジの息子。機械いじりが好きで、いつも油で手を真っ黒にしていることから黒い手のケイジなんだって・・・。

モリア:年に二度、南からやってくる行商と時期をずらしてやってきて、酒と嗅ぎ煙草を扱うグラマラスで美貌の女商人で、彼女がやってくるのを心待ちにする男たちが多いそうです。け、男なんてどいつもこいつも・・・。

エリナ:モリナの娘で、後にケイジと不可解な失踪を遂げます。不可解ということで、理由は当然不明です・・・

カソル:南で作られている九弦ギタラ制作を請け負う職人。〈南の鞄〉の持ち主です。

ダイモ:ソボフルを鞄から取り上げた産婆さん。

ソボフル:なんと、〈南の鞄〉からうまれてきた子供。

他にも重要な存在がいたようですが、メモがどこかに消えてしまったので、これ以上書けません。是非、本で確認してください。何度でも読み返し可能な本です。最後に出版社の案内ですが
           *
「つむじ風食堂の夜」作者の新たな代表作!

主人公は、「カタリテ」と名乗る小説家。書き出しで行き詰まり、書き続けることができなくなってしまう。そんななか、小説内の登場人物が、痺れを切らして「蝙蝠」に変身しながら新たな話を始めてしまったり、〈南の鞄〉という謎の巨大鞄から生まれた過去形で予言をする「ソボフル」なる人物の壮絶な半生が突如長々と語られ始める。一方、ようやく自ら「語り」を再開させることになった「カタリテ」は、自らの作品世界に入り込んだ後、ひたすら「南」を目指す。そして、〈エッジ〉という名の作中人物や作家たちが集う奇妙な療養所に辿り着くが…。
           *
となっています。げ、「つむじ風食堂の夜」読んでないし、〈エッジ〉、メモにない・・・

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