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「朝ごはんはちゃんと食べなさい」、「家族揃ってご飯を食べましょう」、「しっかりと栄養バランスを考えて食事を摂りましょう」……。そんな指示に従うかどうかは別にして、普通そこで言われていることを疑うことはない。指示に従わないとしても「朝ごはん食べたほうがいいのはわかっているんですけど、なかなか朝は時間が無くて……。もっと早く起きたらいいんですけどねぇ」なんて半笑いで言い訳をしちゃう。でも、もしそもそもそれらの注意が誤っていたとしたら? つまり、朝ごはんを食べる必要なんてないし、家族揃ってご飯を食べる必要もない。栄養素なんて考えないでいいとしたら? いわゆる「食育」と括られ指導される、食事に関する「正しいこと」。それは本当に正しいことなのか、ということを疑って、「「食育」批判」をしちゃおうというのが本書のテーマ。ぶっちゃけ、かなり面白いです☆
栄養学、教育学、文化史学、政治学、経済史学、文化人類学……。ありとあらゆる分野の学問を紐解き、一つ一つ「食」にまつわる定説を否定していく。そんな否定されていく定説を是としている「食育」も、やはり否定されるべきものというわけだ。
あれこれ色々な分野を援用しているとは言っても、一方で本書の方向性は一定している。森本さん自らおっしゃっていることだけど、それは「科学的な病気の一般論を踏まえ、進化過程に照らして考察する。しかし個別具体の食のあり方には幾つもの選択肢があり得る」というもの。食の多様性を認める森本さんに対して、「これこそが!」とのたまう「食育」にはやはり問題を感じざるを得ない気も。色々と紐解いていくと、「食育」を取り巻く環境には政治的な意図も見え隠れするっていう論はかなりワクワク。
常識を疑うと、ともすれば「トンデモ本」が出来上がるわけだけれど、本書はそれにも関わらず「トンデモ」感を感じない。もう一度。ぶっちゃけ、かなり面白いです☆
【目次】
まえがき
第1章 「朝ごはん」運動の虚妄―飢餓の世紀、ケトン体の復権のために
第2章 階層原理に見る近代食養運動の科学性―生活次元の食理論構築のために
第3章 〈火の神信仰への叛逆〉顛末記―神なき時代「食卓の戦後体制」崩壊の先に
あとがき
引用文献