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「消された一家」,「でっちあげ」に続いて実際にあった事件の本としては三冊目である。
「消された一家」は人間はここまで非道になれるのか,「でっち上げ」は名誉を回復することの難しさなど,それぞれに衝撃的な事件であった。
そしてこの「凶悪」は,世の中にはたくさんの未発覚の凶悪事件が埋もれており,犯人は平然と私たちの隣で社会生活を送っているということを実感させ,そこはかとなく薄ら寒くなる読後感をもたらしてくれる。
獄内の死刑囚が告白した未発覚の事件――。その告白に基き,雑誌編集記者が三件の殺人事件を告白に基いて追跡調査し,警察への上申書にまでつなげ,その主犯格の不動産屋を追い込むまでが書かれている。
文章も全体のボリュームも雑誌記事調とでもいうのだろうか,少し重すぎるような印象はあるが,全体の内容・展開は相応の読み応えを与えてくれる。
北海道の食肉業者の偽装事件が度重なる内部告白があったにもかかわらず,マスコミも公的機関もこれを黙殺して何年も不正が継続された事件があった。この時に「社会正義」を求めずに事なかれに走るマスコミや公的機関に強い不信感を感じたが,この記者は少なくとも記者魂を持っていてくれた。
昨今のマスコミは自身が巨大な権力機構化し,自身の私利私欲や既得権益の保存マシーン化しているように感じられる。しかし,社会のアングラ部分を這いずり回りながらもどこかで社会正義を標榜している――そういう市井の記者たちの正義感により支えられているマスコミの姿を維持してほしいものだ。
さて,事件は引きずり出され,蒸し返された。しかしそれでも取り上げられたのは3件のうちの1件だけだ。
2件は被害者の特定や遺体がさいごどうなったのかもわからないままである。身寄りなく死んでいく人の命を巧みに金に変える錬金術――そうしたことが私たちが普通に生きているこの社会で,今,同時並行的に平然とおきているということは,頭ではわかっていても,実感すると薄ら寒くなるのである。
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とてつもなく、衝撃的な内容。
事件報道もされたので、記憶に残っている方もいるのでは?
監獄の内部から、新たな事件の告白をするとは、
普通の考えからしたら、ありえない。
でも、そこにはある確執があって……
それがなんなのかを知ろうとするだけで、
ぐいぐいページが進んでいくのは久しぶりの感覚だった。
また取材者の一人称語りで進んでいくが、
当初疑問を抱いていたのに、どんどん確信に至る、
その興奮ぶりに、こちらも興奮させられた。
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新潮45編集部【凶悪】読了。死刑囚が告発した殺人事件を、ジャーナリズムが外堀を埋めて、立件までつなげたノンフィクション。こういう事件が発覚せずに、日常社会に埋没してると思うと驚かされた。恐らく、この本に書かれた事は氷山の一角で、海千山千の輩は世の中に五万といるんだろな…
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内容もそうだが、ジャーナリズムってこうなんだ、こうあるべきなんだろうなと思わせる構成・書き方であったように思える。
先生が意外にも普通の人物っぽいところに何か背筋の寒さを感じた。こうした市井の人の中にも凶悪が紛れ込んでいるのだろうか。
いいものを読んだ。
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ある死刑囚が告白した犯罪性なしとして処理された殺人事件3件・・・
最後まで読み切っても、よかったよかった一件落着といかず、カネが絡んだ人間の愚かしさ、怖ろしさについて考える。
僕は昔、保険会社で「ややこしい」事案の査定担当だったので、いろんなことを思い出しながら読了。
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「上申書殺人事件」へとつながる一連の流れを追ったノンフィクション。その事件名にはピンと来なくても、「後藤良次被告」の関わる事件だよって言えば、ピンと来るかも? ワタクシは、正直「ゴトウリョウジ・・・何だっけ、聞いたことある!」ってレベルだったのですが、本書を読んで、ようやく理解いたしました。当時は全然ニュースにも興味がなかったのだけれど、なるほど、こういう事件だったのかあ!
なんかもう、途中からミステリー小説を読んでいる感覚に陥って、推理しそうになっちゃった。本書で語られている事件は、そういうくらいに「事実は小説よりも~」を体現している話だ。おっかないねー。
「文庫版あとがき」では、執筆者である宮本太一さん(現在は『新潮45』の編集長とのこと)が「雑誌記者」あるいは「雑誌というメディア」について熱く語っている。それを抜きにしても、要所要所に宮本さんの雑誌記者としてのプライドやイデオロギーめいたものが見え隠れする。こういうところにも面白さを感じちゃう☆ 記者の世界に興味がある人は、こういうところから考えるのもいいかもね。
また、「解説」はあの佐藤優さん。こっちも読み応えがありまんた。
こういう事件簿を扱ったノンフィクションって初めて読んだけど、おもしろーいね☆
【目次】
まえがき
第一章 独房からの手紙
第二章 サイは投げられた
第三章 “先生” VS 殺人犯
第四章 驚愕の証言
第五章 “じいさん”の素性
第六章 “カーテン屋”を知る女
第七章 そして、矢は放たれた
第八章 脚光を浴びた死刑囚
第九章 第四の殺害計画
第十章 消せない死臭
第十一章 闇に射しこむ光
あとがき
最終章 最後の審判 【文庫版書き下ろし】
文庫版あとがき
解説 佐藤優
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刑務所の死刑囚から聞いた実在するけど捕まっていない極悪殺人犯を追い詰めていくルポ。
面白いけど、追い詰めていくところが淡々としていて単なる雑誌の記事。
読み物としては面白みに欠けるが、マスコミ人としては頭が下がる一作。
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そんなに期待してなかったせいか満足感が強い。こういうルポって憶測が過ぎていたり散々あおった挙句たいした事実を書けないまま終わってしまっているのが多いけど、実際警察が動いて逮捕立件に至るなんて、不謹慎な感想かもしれないけど出来すぎた推理小説みたいだ。
凶悪と凶悪の結びつきが起こしたとんでもない事件の数々。
フィクションだとキレイに頭脳と実践に分かれてたりするんだろうけどそれぞれの性格が強烈に煮詰まってる感じして、いくつもの事件があって、うまく言えないけど強すぎるものばっかり出てきてもストンと腑に落ちるのはノンフィクションの醍醐味だし取材の成果だと思った。
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実際にあったと思われる事件だけにリアリティに富んでいて、
重さも増してくる。死刑囚の告発、しかも復習が同期なだけに、
決してすっきりするような話ではないが、著者の行動は賞賛したい。
軽い気持ちで読むものを探してたのに
つい読み始めてしまって後悔。。。朝の電車ではきつい。
でも内容は凄かった。
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ノンフィクションの取材記。一人の死刑囚が獄中で「他にも人を殺しているから調べて欲しい」と、新潮45ノ記者を読んで話し始める。“先生”と呼ばれる不動産ブローカーと共謀して、何人も殺していく。保険金殺人等とにかく金!!
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塀の中の死刑囚が自分の犯した殺人を次々と示唆していくと言う
推理小説でもあり得ない設定。新潮の著者の記述も素晴らしい。
この事件を取り上げたテレビ番組で本の紹介もあり直ぐに携帯で
検索し図書館で借りた。
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「命」を「金」に変える「死の錬金術師」がのうのうと娑婆で生きている・・・殺人事件で死刑判決を受けた元組長の告発。未解決どころか、死体さえ無い未発覚殺人事件の真相が語られる・・・ノンフィクション。
最後に出てくる「先生」本人の写真に驚愕!
こんな顔のおじさん普通にいるよ!決して凶悪には見えない風貌の「先生」と呼ばれている人物。先生の周りでは次々と不審な死が起きている。しかし先生は全く証拠を残さず、疑われることも無かった・・・告発があるまでは。
告発した組長の方は、まぁ・・・納得の貫禄ある風貌。パンチにヒゲ・彫り物という立派なヤクザルック。この人は普通に人を殺す。先生は死で金を作る。
どちらも「凶悪」で済ますにはヌルい。「極悪」「邪悪」と言ってもいいほど。
金の為には人の命を奪うことも厭わない先生はなぜそうなってしまったのか。家庭を大事にする優しい父親の一面を持ちながら、裏では金の為に人を殺す。
死刑を言い渡された組長最後の執念が先生を追いかける・・・
「被害者やその遺族」の告発では無いところがこの話の妙な所でもある。
共犯者が仲間を道連れにしようとしているのだ。
殺害状況の詳しい供述の所は非道の一言。
こんな人達が近所にいると思うと恐ろしい。実際にいたのだから・・・
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人を殺し、その死を巧みに金に換える『先生』と呼ばれる男がいる。
雑誌記者が聞いた驚愕の証言。だが、告発者は元ヤクザで、しかも拘置所のい収監中の殺人鬼だった。信じていいのか?記者は逡巡しながらも、現場を徹底的に歩き、関係者を訪ね、そして確信する。告発は本物だ!
やがて、元ヤクザと記者の追及は警察を動かし、真の『凶悪』を追い詰めていく。白熱の犯罪ドキュメント。
***
テレビで紹介されていて読みたいと思った本。
闇に隠れた事件が多いのにびっくりした。
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死刑確定を待つ身となった被告人から筆者に届いた報せを端緒として白日の下に晒される、数々の事件。
事件として当局が把握していない部分に焦点を合わせるべく動くという取材活動のプロセスの迫力には胸躍った。
ひとが心を決めて行動する時の動機や契機は数多あり、復讐もそのひとつ。
ひとりの男が退路を断ってまで遂行しようとした復讐の顛末。
或いは、ひとりの記者が執念を燃やして追いかけた事件の記録。
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裏世界を使ってこんな商売してる不動産ブローカーがいたとは驚愕した。自分の恨みはらしだとはいえ、よく自白してくれたと思う。