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紙の本
実直な伝説のスカウト
2024/05/26 14:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神、近鉄で長くスカウトを務めた河西俊雄の伝記。名スカウトというと海千山千という印象を持つ人もいるだろうが、河西はその眼力と実直な性格で伝説のスカウトとなったのだろう。選手獲得の裏話としては物足りなく感じる人がいるかもしれないが、河西の人柄を表すものでもあるだろう。
紙の本
ひとを見抜くのは瞬時だが、その後の接し方が温かく厚いスカウト
2011/05/16 19:33
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
うかつにも知らなかった、こんな伝説のスカウトがいたことを。阪神なら江夏豊、藤田平、掛布雅之。近鉄なら大石大二郎、阿波野秀幸、野茂秀雄、中村紀洋。名選手のうしろには、こんなに魅力的なスカウトがいたのだった。
平成9年に77歳でスカウトを勇退している。だから、スカウトとして腕を振るったのはおおよそ昭和の時代である。その時代に知っていらなら、河西が次にどんな選手をスカウトしてくるかと、毎年注目してみたに違いない。
そこまで思わせてしまう著者の澤宮優の筆力もまたすごい。伝説のスカウト河西を生き生きと描き出しているのだ。あたかも河西に寄り添って、生涯を過ごしたかのようだ。世の中に伝記物はたくさんあるが、これは傑作のひとつにあげられるのではないだろうか。
ドラフト制度導入前に、有力球団と競合しながら選手を獲得していった。その苦労や努力の過程は、過去の話なのに、はたして上手く獲得できるのかと、ハラハラしながら読み進めてしまう。
河西はまぎれもなく昭和の人だ。「仏の河西」「すっぽんの河西」などの呼び名は昭和にふさわしい。在京のセリーグ球団しか入団しない、と意志を固めている選手を攻略するのは至難の業だ。そして、それをやってのけたのが河西というわけだ。
その極意は「誠意」だと言う。真心を尽くせば、人の心を動かせる。言うはやさしいが実行するのはむずかしい。それを河西はスカウト時代を通じて実践した。
選手の家族、特に母親から全幅の信頼を寄せられる河西。選手が納得したというより、母親が河西をすっかり気に入ってしまい、入団を決める例が多かったという。
それもひとつの戦略なのだが、親こそ子どもの将来を考えて慎重にことを運ぶはずだから、親に気に入ってもらえるというのも決して簡単ではなかった。
しかも、プロでやっていけるかどうか不安を口にする選手や家族に、安易に活躍を保証したりしない。むしろ、河西自身がプロ野球選手であった経験から、容易ではないことを説いたりする。このあたりがかえって信頼につながる。
人情家の河西だが、合理的な考え方をし、ジャズを聴くというアメリカ的趣味を持っていたというのも面白い。人生メリハリなのだろう。
有力選手の獲得に成功すればスカウト冥利につきるはずだが、河西はスカウト稼業のつらさを語る場面が意外に多い。これもなかなか考えさせるところがある。仕事の喜びや苦労というのは、一筋縄では説明できないことなのかも知れない。
ドラフト制度の導入や情報網の発達によって、かつてのようなスカウトが腕を振るう場面は減っている。地方の無名選手を足を運んで発掘するということもなくなった。あとはドラフト時の運と契約金がものを言う。
そういう時代になったのもさびしい感じがする。最近では、逆指名が増えたので、少しはスカウトが選手を引きつける工夫の余地も戻りつつあるようだが。
さて、書名の「人を見抜く」は、プロに入って活躍する力があるかどうかを見抜くということだ。河西は「アクセントのある選手を獲れ」という言葉で表現している。
投手は毎年それなりの選手が出てくるが、野手はいい選手はそれほど出てこないという。平均してそこそこの選手より、「足が速い」「闘争心が全面に出ている」「肩が強い」など、ずば抜けた技量のある選手を「アクセントのある選手」と評した。
しかも、あっさりと見極める。試合も3回くらいまで見たらおしまいだ。すぐれた選手からは、ひかるものをさっと見つけてしまう。何度もくり返し見たりはしない。このあたりは職人芸的なものを感じさせる。河西は独特のインスピレーションを持っていた。
河西は昭和の人だが、こうした感性は平成の時代にも、ほかのスカウトに受け継がれてほしい。ドラフト1位、2位はだれが見てもすぐれた選手が指名されるので、3-5位にどれだけよい選手を指名できるかがスカウトの腕の見せ所とある。近鉄に4位指名された中村紀洋もそのひとりだ。
「あ、これや、これや」と河西の目にとまった選手は幸運である。スポーツ界には名伯楽が必要だが、名スカウトも同じくらい必要なのだと、本書を読んで初めて知った。
紙の本
人を通して、人の本質を見てきたスカウトの目。
2010/08/28 08:50
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あとがき」を読み始めて、奇妙な感覚にとらわれた。「あとがき」とは、作品に対する著者による思いを伝えるものだが、その「思い」は誰かに語りかけている。まるで、式辞だが、それも弔辞の語り口になっている。ふと、この「あとがき」は人間河西俊雄に対する著者の謝辞なのではと思った。
河西俊雄はプロ野球のスカウトであった。河西がスカウトしてきた選手で、レギュラーとして活躍した選手の名前と実績を書き並べて行ったらば、冗談でも何でもなく、一冊の年鑑が出来上がる。その一例としてあげると、江夏豊、藤田平、中村勝広、掛布雅之、大石大二郎、阿波野秀幸、野茂英雄、中村紀洋という日本球界屈指の名前が即座に出てくる。
そして、プロ野球列伝かと思いきや、スカウト河西の視点があぶり出されてくる。プロ球界の自由獲得競争時代からドラフト制度、逆指名制度に至るまでを経験した河西のスカウト人生はそのまま日本プロ野球界の歴史といっても過言ではないが、その激動の中を生き抜いた伝説のスカウトは選手のどこに着目していたのか、興味をそそられる。
その河西の言動を集めたのが本書になるが、野球用語で表現してはあるものの、実態は老練の人事部長を思わせる。人の気持ちに訴える、人の悩みを察する、親を見る、身だしなみ、手間を惜しまない、素質(長所)を見抜く、仕事とは判断力と決断力、仕事には言葉だけでは伝えられないものがある、誠意、見守りながら励ます、強さを維持するには手間と時間がかかる、人の将来を考える、大事に育てる、数値では判断できない「何か」がある、どこで誰が見ているかわからない、など、業容拡大という大義名分のために新卒に「即戦力」を求める企業には耳が痛い言葉ばかりである。
近年、企業は効率を重視してきたが、それは成功プロセスとしての一つの手段であった。一時的なカンフル剤としては良かったのかもしれないが、本来の体質改善と組織の活性化において結果は見えていない。偏差値を基準として人を判断する日本では、河西が残した言葉は成功プロセスのひとつの手段でありながら、非効率、非科学的という言葉で抹殺されている。リスクマネジメントの観点からいえば、河西メソッドという選択肢も残しておくべきであったのだが。
河西俊雄のスカウト人生を辿りながら見えてくるもの、それは、組織は「人」で成り立っているということだろう。しかしながら、「名物スカウトを時代が必要としていない」という嘆きの言葉もあり、人が人を見るという時代は終焉したことになる。「あとがき」で著者が弔辞を述べたのは河西への感謝、そして、もし、河西が生きていたなら弟子入りしたいという願望なのだと感じた。
機械と数値、格好良くいえばデータ重視だが、それだけで人間を判断するなど、人を観察する面白さを放棄したに等しい。
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