紙の本
「往復書簡」そろそろこの書き方止めませんか?
2011/05/20 10:18
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投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る
「書簡形式の連作ミステリ。
同じ事柄を別の人が語ると
全く違う真実が見えてくる、
そんな今までの書き方を踏襲しつつ
今度はそれを手紙のやり取りで実現、
成功しているかどうかは微妙、
そろそろこの書き方卒業したら・・・」
卒業して10年、
心に引っかかっていたある事故について
久し振りに放送部の同級生と
地元の結婚式で出会ったのを機に、
その事故の真実をはっきりさせようと
手紙を送り、
それぞれの視点で事故を語っていく。
携帯でメールの時代、
手紙は自分の考えをちょっと冷静に
見つめることができる、
書き終えてもう一度読み返して
自分の本当に言いたいことが伝わるだろうかと
再度考えたりもするから。
そのあたりにこの「書簡」という手法を
今回使ったヒントがるのかもしれないが
どうにもまだるっこしい、
電話ひとつできないのかなぁと
かつては親友と言っていた人達にさえ。
その他の短編もミステリータッチで
過去の事柄をもう一度確かめたい、
それも言葉じゃなく
手紙で、というもの、
「告白」が素晴らしく鮮烈だっただけに
その後だんだんその感動が薄れていくのは否めない
残念だ、
けれど今度こそと期待させてくれる「何か」は
まだ持っているので次に期待しよう。
★100点満点で55点★
soramove
紙の本
そういえばもう何年手紙を書いてないだろう
2010/11/27 23:43
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投稿者:さあちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
3つの短編がおさめられている。同級生・先生と生徒・恋人達。それぞれが交わす手紙だけで物語は構成されている。そこではそれぞれ10年・20年・15年前の事件が語られている。真相は何処にあるのか・・・そして書き手たちの秘められた想いが語られていく・・・
今や一人に一台は持っているといっても過言ではない携帯電話によって私たちは今という時間を共有することが可能になっている。しかし手紙ではそうはいかない。手紙を書いてから相手から返事がくるまでの時間。この時間を意識して書くのが手紙というものではないだろうか。その時間があることによって相手の事自分の事をより深く考えるようになる。つまり相手を意識して書くということは自分の内面を掘り下げていくことなのではないだろうか。その意味においても昔の事件を手紙で語るという設定はうまいと思う。
今という時のなかでは見えないことも時間をおくと見えてくることもある。角度を変えると四角いものが丸く見える時もある。今見えていることが真実とは限らない。そういったことが往復書簡の形式でよく表現されていると思う。ラストもひねりがきいていてよかった。
紙の本
手紙だけで紡ぐミステリ。
2010/11/09 11:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全編「書簡(=手紙)」で構成されるミステリ。本書に収録されているのは三篇の短篇で、それぞれ、ある事件や最後に会った日から10年、20年、15年も経過したあとに手紙のやりとりをしている。
手紙のやりとりをしているうちに、10年前、20年前、15年前のある出来事の真相が少しずつ浮彫になってくる仕組みだ。手紙だけで構成される作品を読んだことがないので、素直に「面白い(=興味深い)」と感じた。
過去の「真相」を掘り起こすという行為には、2分の1の確率で「知らなければよかった」という結果が待っている。横山秀夫の『真相』では収録作品の全てが「知らなければよかった」というストーリーだった。
湊作品はデビュー作の『告白』を読んだだけだけれど、後味の悪さが付き物という先入観が付きまとう。よって本書でもある程度の後味の悪さは覚悟していたが、その予想はいい意味で裏切られた。本書収録の短編のすべてにおいて、ラストにほのかな「やさしさ」や「あったかさ」が登場し、後味をマイルドにしているのだ。
ただ――これは相性の問題なのだろうけれど――、全体を通して読む際に、ところどころで「あれ?」と躓く箇所がある。有川浩『ストーリー・セラー』で男性主人公が言う「脳内補正」(「でも、あんまり気になったことないよ。多分、文章のリズムに乗せられて多少の引っかかりは脳内で補正されてるんじゃないかな。君の文章、追いかけてて気持ちいいんだよな。だから途中で止まらなくなるんだけど」 p.132)が全く作動しななかった。
おそらく著者の文章は合わないのだと思う。でも作品全体としては好き(往復書簡で作品を構成するという試みが)。
『往復書簡』 収録作品
・十年後の卒業文集
・二十年後の宿題
・十五年後の補習
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湊さんの本、全て読んでますがこれは本当に期待はずれ。ミステリー色は薄い。
すべて手紙でのやりとりの連作短編三本。
手紙っていいよね、って感じなヒューマン系を晒し出してるけどちっともでした。
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手紙での気持のやり取りは、お互いへの思いや、懐かしさしさ感じる反面、驕りや嫉妬、自己弁護と、責任転嫁、悪意さえ感じる。同じ時を過ごした仲間でも、勘違いや、思い込みで、それぞれの仮説が事実になって、勝手に作られた世界が思い出になっている。先入観や思い込みが、違う世界を作っていて、誰も同じ景色は見ていないと、あらためて感じる。
友達の幸せを願っている、のは嘘じゃないけど本心かといわれると、きっと違う。恨みや妬みをもっている。それは、自分を守るためや、自分を許すため、何かを信じて生きていくために。そんな気持が伝わってくる。そういうところが、きっと人間は愚かさってやつだね。
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短編3作品。
『十年後の卒業文集』
『二十年後の宿題』
『十五年後の補習』
手紙のやり取りですべて話が構成されていて
いつもながら、最後はいったいどうなるんだろうと
この話の真実はいったい…と毎回ドキドキさせられる。
湊さんの小説好きだ。
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相変わらずのサプライズな結末で、また作者が好きになった。
10年後の卒業文集、まさかの入れ替わりの結末
20年後の宿題、いろんな人間関係が複雑に絡んでいるが意外な結末
15年後の補習、二転三転の重い結末
「告白」「贖罪」に次いで良かった。
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手紙だからつける嘘。手紙だから許せる罪。手紙だからできる告白。過去の残酷な事件の真相が、手紙のやりとりによって明かされていく。衝撃の結末と温かい感動。書簡形式の連作ミステリ。
《2010年9月28日 読了》
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A→B:B→Aといった形式で2人の人物の間で交わされた手紙によって過去に起きたとある「事件」の真相が究明されていっている。
一冊の間に3つのストーリーがあり、それぞれの話はつながっていない。
湊かなえさんでは初の短編(中篇?)集。
手紙だからこその表現の仕方が巧く使われていて、それ故にドキっとする場面もあって面白い。
「告白」や「贖罪」に比べると被害にあう登場人物が少なく、物語の最後に光も見えたりするので色んな人に薦められるなぁと思った。
(個人的にはもっとドロドロして救いようが無い位でもいいのだけど)
湊さんの小説は、文章が語り口調だったり日記帳だったり、とにかく登場人物の目線から書かれているのが特徴だと思う。
その形式が初期から一切変わらず、つまらないという人もいるけど、私は湊かなえ=この形式で安定していいのだと思う。
違う形式の話を読みたかったら、別の作品を読むのは読者の自由だと思うし。
一度最後まで読んで「事件」について知って再読してみるのも面白いと思う。
そういう意味でやっぱり購入して本棚においておきたい一冊。
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あれは本当に事故だったのだと、私に納得させてください。高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る—(「十年後の卒業文集」)。書簡形式の連作ミステリ。
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普段ハードカバーは避け勝ち(高額だし場所も取るので;)なのですが、本屋で開いてみたらもうたまらなく購入してしまいました。恩田陸の「Q&A」とか、ちょっと変わった文体物に弱いんです。
さて、読んでみたらこれがまた読みやすく面白く。怪しいと思った部分がちゃんと怪しく、重くなった雰囲気も読了時には優しく心地よくさせてくれる構成がとっても好きでした。最近重たいばっかりの小説が持ち上げられる事が多いので、こういう読み終わって気分が良いものも大切にしていきたいです。
流行ものに手を出すのを躊躇ってしまうひねくれ者なのですが同著「告白」を今更ながら読んでみようかと思います。
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短編3作を収めた短編集なのですがその全てが
「手紙」のやりとりのみで構成された作品。
やはりこういった手法での上手さは湊さん
らしく安定してます。サイズ的にも短編は
合ってる方法ですね。
メールよりも手紙の方が考えながら文章を
「書く」訳だし、書いた後も校正したりして...。
より相手に伝えようとする意思が強い手法ですよね。
が故にその手紙のみで展開されるこの作品が持つ
切実さが読む側を惹き付けます。
ジリジリと焦げ付くような悪意や嫌悪感を
思わす「十年後の卒業文集」は今までの湊作品
の王道...と思いきや最後の最後は意表を突く
展開を用意していて意外性では一番。
他の2編も今までの作品にはなかった感情や
印象を与えるだけの作品ではないのが次作への
期待になりますね。ただ、こういったスタイルは
もう食傷気味ですが...。
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告白、夜行観覧車に次ぎ3作目の読書。夜行観覧車より好き。特に3つ目の話は好き。
手紙って日本にいるもの同士だとほとんど書かないよね。留学してたときかされてたときかくらい。そのときのことを思い出しても、今読むと恥ずかしいくらい悩みを打ち明けてたり、逆に色々なことを分析してたり。
1つ目の物語で仲間内で出てきた噂話に対する、当事者の感想が深い。「仮説って大変なものだと思う。頭のいい人がこうだったんじゃないかと仮説を立てて、それもあり得るとなったら、仮説は事実になってしまう」
というかこの世に仮説しかないのではないだろうか。それを頭のいい人が追求していくと、真実に聞こえてしまう。
真実と偽話の境界線。真実と仮説の境界線。判断するのは個人個人。つまりは仮説も偽話も真実も、要は信じたい話。
そんな中でも、信じたくないような話でもこの人となら交わせる、受け止めあえる、そういう存在が救いになるんだと思う。そういう意味で最後の話は好き。
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手紙だけで構成された3つの短編小説。心の負を表現するのは相変わらずうまい。二番目の宿題は珍しく希望ある結末で良かった。でも、短編なのかちょっと物足りないかな…告白くらいのエンタメが好きです。
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早速買って読みました。
湊さん独特の構成で、今回は手紙。
3部構成になっているのですが、最後まで読み終えたとき、ちょっと残念な気がしたのは私だけでしょうか。
内容がというより、最後にすべてがつながるのかな・・と思いながら読んでいたので。2話目は、ちょっと強引な内容か??